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今まで飲んでいたミルクティーは何だったの? と思うほどおいしい作り方を、紅茶愛の深い母娘に教えてもらった

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今まで飲んでいたミルクティーは何だったの? と思うほどおいしい作り方を、紅茶愛の深い母娘に教えてもらった

こんにちは。鹿児島県在住で九州のおいしいものや「沼」にハマっている人を取材している横田ちえです。

私はライターという職業柄、デスクワークの時間も長いです。そんな仕事のお供になってくれるのが、おいしい紅茶。日本ではストレート、レモン、ミルクのような飲み方が楽しまれていますが、本場イギリスではほとんどミルクティーで飲まれているってご存じでしたか?

ミルクに紅茶を注ぐか(MIF=ミルクインファースト)、紅茶にミルクを注ぐか(MIA=ミルクインアフター)、その2大派閥で長年論争を続けてきたほど、イギリスではおいしいミルクティーの入れ方は関心度の高い話題なのです(2003年に英国王立化学協会が『How to make a Perfect Cup of Tea(完璧な紅茶の入れ方)』にて、ミルク先入れがよいと結論付けたことでいったんの決着(?)がつき、現在は多少落ち着いているそう)

今回は、おいしいミルクティーの入れ方(ホット・アイス)を「TEALAN(ティアラン)(2022年2月に「薩摩英国館」より名称を変更)」の田中さん母娘に教えていただきました。本場イギリスでの滞在経験もあり、現在はティールームを運営するほか、自家製紅茶を栽培するなど紅茶への愛がとっても深いお二人です

日本紅茶協会認定・ティーインストラクター&紅茶製造責任者の田中京子さん(左)と、薩摩英国館・館長の田中真紀さん(右)

日本紅茶協会認定・ティーインストラクター&紅茶製造責任者の田中京子さん(左)と、TEALANの田中真紀さん(右)

鹿児島県のお茶どころ、知覧(ちらん)にある薩摩英国館ティーワールド

鹿児島県のお茶どころ、知覧(ちらん)にあるTEALAN(薩摩英国館)

今まで私がなんとなく入れていたミルクティーは、香りが弱かったり紅茶が薄かったりして、紅茶がミルクの味わいに負けていることも多かったのですが、教えていただいた入れ方のミルクティーは、香りがまったくの別物。

ミルクのまろやかな味わいと紅茶の豊かな香りが絶妙に調和していて、両者が合わさることでこんなすばらしい飲み物になるのか……と感動しました。

「ティーバッグにお湯を注ぐ」よりは多少手がかかりますが、実際に味わってみると、その手間をかけるだけの価値があると感じます。ぜひこのおいしさを味わってみてください!

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香りが違う! おいしいミルクティーの入れ方

―― さっそくですが、おいしいミルクティーの入れ方を教えていただきに来ました。よろしくお願いします!

真紀さん:分かりました! 私が解説していきますね。

まず最初に押さえてほしいのは基本の紅茶の入れ方(1人分)。「茶葉3g、お湯150cc、蒸らし3分」というものです。これを知った上で、茶葉の量や蒸らし時間を自分好みに、そしてミルクティー向けに調整していくのが良いと思います。

―― まずはストレートでおいしい紅茶を入れることが大事ということですね。

真紀さん:そうです。今回はミルクティーの入れ方を解説しますが、

  • 初めて飲む茶葉、高級な茶葉:まずはストレートで香りと味を確かめる。それからミルクを後入れ
  • 普段からよく飲んでいる茶葉:カップにあらかじめミルクを入れて、紅茶を注ぐ

という楽しみ方がオススメ。

初めての茶葉はまずストレートで味や香りを楽しんでほしいというのもありますが、ストレートで味わってみた方が、ミルクをどのくらい入れたらいいかの加減も分かりやすいと思います。

―― ちなみに、ミルクを入れるタイミングはイギリスで論争にもなっていたと聞きました。実際、そんなに変わるんでしょうか……?

真紀さん:実はこの取材のお話をいただいてから、改めて飲み比べてみました(笑)。やっぱり違っていて、私はミルクインファースト(ミルク先入れ)が好きですね。本当に微妙な違いなんですが、一体感が出てこなれた感じがします。

左がミルク先入れ、右がミルク後入れ。飲み比べさせてもらいましたが、「何かが違う」と感じるものの言語化するのが非常に難しいレベルの繊細な違いでした

左がミルク先入れ、右がミルク後入れ。飲み比べさせてもらいましたが、「何かが違う」と感じるものの言語化するのが非常に難しいレベルの繊細な違いでした

―― なるほど、紅茶って奥が深い……。イギリスで議論が白熱するのも分かります。

ホットミルクティーの入れ方

ホットミルクティー

真紀さん:ではここから、ホットミルクティーの入れ方を紹介します。先ほど紅茶の基本の入れ方を紹介しましたが、ミルクティーの場合はストレートよりも濃く入れたいので、茶葉の量は3~5g、蒸らし時間3~5分と少し幅があります。

―― これも自分好みに調整していくということでしょうか?

真紀さん:そうですね。幅があるとかえって難しく思われるかもしれないのですが、「こないだは少し薄かったから、今日は蒸らし時間を1分延ばしてみようかな」といった具合に工夫していくのが紅茶の楽しみの一つだと思います。

―― 茶葉の特徴によっても変わってきそうですもんね。

真紀さん:そうなんですよ。まずはごくスタンダードな入れ方を覚えていただいて、それを応用していってもらえればと思います。

【ホットミルクティー 分量・1人分】

  • 茶葉・・・3~5g
  • お湯・・・150cc
  • ミルク・・・25~30cc

下準備:ミルクを冷蔵庫から出しておき、常温に戻す。

1. ポットとカップに湯(分量外)を注ぎ、しっかり温める。

ホットミルクティーの入れ方。ポットとカップに湯(分量外)を注ぎ、しっかり温める。

「ティーポット」を詳しく見る
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2. ポットの湯を捨て、茶葉(3~5g)をポットに入れる。

ホットミルクティーの入れ方。ポットの湯を捨て、茶葉(3~5g)をポットに入れる。

※小さじだとすり切り1杯で約2g、こんもり一杯で約3gが目安。ただし、茶葉の形状によって差があるため、キッチンスケールを使うのが確実です

「キッチンスケール」を詳しく見る
「ティーメジャースプーン」もあると便利

3. 沸騰したお湯(150cc)をポットに注いで、3~5分蒸らす。蒸らし時間が長いほど濃くなります。

ホットミルクティーの入れ方。沸騰したお湯(150cc)をポットに注いで、3~5分蒸らす。蒸らし時間が長いほど濃くなります。

4. 注ぐ前にポット内を1回だけそっとかき混ぜる。

ホットミルクティーの入れ方。注ぐ前にポット内を1回だけそっとかき混ぜる。

5. カップに注いであった湯を捨てる。ポット内の茶葉が落ちついた頃合いで、カップに紅茶を注ぐ。
ミルク先入れの場合は、ミルク(25~30cc)を注いだカップに紅茶を注ぐ。

ホットミルクティーの入れ方。カップに注いであった湯を捨てる。ポット内の茶葉が落ちついた頃合いで、カップに紅茶を注ぐ。

「茶こし」を詳しく見る

6. ミルク後入れの場合、ストレートで紅茶を楽しんだ後に、好みに応じてミルクをカップへ注ぐ。

おいしいホットミルクティーの完成

真紀さん:これでホットミルクティーの完成です!

―― まずミルクのまろやかな口当たりが最初に来て、次に紅茶の香り高さやほのかな渋みが来ますね。ミルクと紅茶がお互いの良さを高め合っているというか、絶妙に調和していてすごくおいしいです……!

真紀さん:うれしいです! ちなみに、今回紹介しているのはイギリスで楽しまれているミルクティー(tea with milk)で、「ロイヤルミルクティー」ではありません。実は牛乳で紅茶を煮出すロイヤルミルクティーというネーミングは日本独自のものなんですよ。

―― 調べてみたら「ロイヤルミルクティー」って和製英語なんですね……!

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アイスミルクティーの入れ方

アイスミルクティー

―― 続いてはアイスミルクティーの入れ方を教えていただきたいのですが。

真紀さん:アイスの場合、氷で薄まってしまう分、紅茶を濃く入れる必要があります。茶葉を倍量にするか、お湯の量を半分にするか、いずれでもよいので2倍の濃さにすると覚えておいてください。

ホット / アイスにかかわらず、ミルクティーには比較的渋みのしっかりした、コクがある茶葉を使います。専門的な言葉でいうなら、タンニンという成分が多い紅茶です。

このタンニンの多い紅茶は、急冷すると濁ってしまうのですが、アイスミルクティーならここは気にしなくて大丈夫。紅茶の香りを大事にするために、あえて急冷する作り方をおすすめします

これから紹介する入れ方はポットを3つ使います。茶葉を入れて湯を注ぐ(つまり紅茶を抽出する)ポット、空のポット、氷を入れたポットです。ポットがなければボウルや小鍋などで代用しても大丈夫ですよ。洗い物が増えてしまいますが、全て意味のある工程なので、ぜひ守ってみてくださいね。

【アイスミルクティー 分量・1人分】

  • 茶葉・・・6~10g
  • お湯・・・150cc
  • ミルク・・・25~30cc

1. ホットミルクティーの手順1~4で紅茶を入れる。

アイスミルクティーの入れ方。ホットミルクティーの手順1~4で紅茶を入れる。

2. 空のポットに紅茶を注ぐ。砂糖を入れたい場合は、あらかじめここでポットに入れておくと良い。

アイスミルクティーの入れ方。空のポットに紅茶を注ぐ。砂糖を入れたい場合は、あらかじめここでポットに入れておくと良い。

3. 氷をたっぷり入れたポットに2の紅茶を移す。

アイスミルクティーの入れ方。氷をたっぷり入れたポットに2の紅茶を移す。

4. 氷を入れたグラスに3を注ぐ。

アイスミルクティーの入れ方。氷を入れたグラスに3を注ぐ。

5. ミルク(25~30cc)を注いで完成。

アイスミルクティーの入れ方。ミルク(25~30cc)を注いで完成。

―― 先ほど、香りを大事にするために急冷するという話がありました。

真紀さん:そうなんです。ミルクティーに合う紅茶はタンニンという成分を多く含みます。こういったタイプは、急冷すると白く濁ってしまうんです。これを「クリームダウン*1」といいます。

今回はアイスミルクティーですが、アイスティーの場合は見た目にも良くないですし、タンニンが少ない紅茶を使うなど、できるだけクリームダウンを起こさないようにします。

クリームダウンとは紅茶が白く濁る現象で、タンニンとカフェインが結合して結晶化してしまうというもの

―― 急冷すると濁るんですよね? アイスミルクティーの場合でも、ほったらかしてゆっくり冷ませばいい、という話にはならないんでしょうか?

真紀さん:ゆっくり冷やせばクリームダウンは起きにくいんですが、時間をかける分、香りが抜けていってしまうんです。紅茶の香りを大事にするためには、多少クリームダウンが起きたとしても氷で冷やした方がいいんですよ。

―― なるほど、全ての工程にきちんと意味があるんですね。

真紀さん:それから、アイスミルクティーの場合はミルクが先でも後でも変わりません(紅茶の熱で牛乳のタンパク質が変性することが味に影響を与えるため)。なので、アイスの場合は後から好みに応じてミルクを足していくのが良いですね。

ミルクティーは安価で気軽に使える茶葉でもOK

―― おいしいミルクティーを入れる手順については理解できました! でも一言で茶葉といっても、紅茶っていろいろありますよね、ダージリンとかアッサムとか……。ミルクティーにはどんな茶葉を選べばいいのでしょうか?

真紀さん:ミルクティーは比較的安価な茶葉や、ティーバッグで気軽に楽しめます。ミルクに負けないコクのあるものがおすすめ。ミルクティー向きのおすすめ茶葉を3つほど紹介しますね。

☕おすすめ茶葉1:ケニア(CTC)

ミルクティーにおすすめの茶葉:ケニア(CTC)

真紀さん:私が一番おすすめするのは、ケニアのCTCです。CTCって何? という話は後で詳しく解説するとして、ケニアを含めたアフリカの茶葉は深い味わいでミルクティーに合います

写真はTEALANオリジナルの「アイリッシュモーニング」という商品で、ケニアCTCがメイン。ミルクティーに合うように特別にブレンドしています。

「ケニア CTC」を検索してみる

☕おすすめ茶葉2:アッサム(OP or CTC)

ミルクティーにおすすめの茶葉:アッサム(OP or CTC)

真紀さん:アッサムはインド最大の紅茶産地です。なので値段は正直ピンキリ。ですが、ミルクティーにするのであれば安価で入手しやすいものでOKです。

透明感ある濃い赤褐色が美しく、まろやかでコクのあるミルクティーになります。

写真はアッサムのOPという茶葉ですが、CTCでも良いと思います。

「アッサム OP」を検索してみる
「アッサム CTC」を検索してみる

☕おすすめ茶葉3:ウバ

ミルクティーにおすすめの茶葉:ウバ

真紀さん:最後に少し変わり種を。スリランカのウバ地域の紅茶ですが、独特のさわやかな香りがあって、スーッとした清涼感が特徴です。

ストレートでもおいしいですし、ミルクティーにも合います! さっぱりしているので夏におすすめです。この3つの中では一番通好みで、お値段も若干上がりますね。

「ウバ」を検索してみる

真紀さん:それから、ミルクティー向きのブレンドティーというのもあります。「イングリッシュブレックファースト」などのように「◯◯ブレックファースト」という名前の商品はミルクティーに合うように作られていることが多いんです。

―― 「イングリッシュブレックファースト」ってブレンドティーの名前だったんですか……!?

真紀さん:そうなんですよ、伝統的なブレンドティーの一種ですね。イギリスでは朝食にミルクティーを飲むことが多くて、ストレートで飲む人はほとんど見かけません。

「イングリッシュブレックファースト」を検索してみる

―― 先ほど説明に出てきた「CTC」「OP」などは何でしょうか……?

真紀さん:まず基本的な知識として、紅茶の茶葉には①産地やブレンド、➁製法(形状)という要素があります。産地は今紹介した「アッサム」「ウバ」など、ブレンドは「イングリッシュブレックファースト」などのことです。

そして、「CTC」や「OP」は➁の方の製法を指しています。「OP」「BOP」「CTC」などの文字は製法や茶葉の形状、大きさを表しているんです。

【主な紅茶の等級】

  • OP(オレンジペコー):リーフタイプ、サイズ7~11mm
  • BOP(ブロークンオレンジペコー):OPが小さくカットされたポピュラーな形。サイズ2~3mm
  • BOPF(BOPファニングス):BOPより小型でサイズ1~2mm。短い蒸らし時間で抽出でき、ブレンドやティーバッグにもよく使われる
  • D(ダスト):粉茶状で、最も細かい葉のサイズ
  • CTC:Crush Tear Curlの略。機械で茶葉を砕き(crush)、引き裂いて(tear)、丸めて(curl)作られる。紅茶が抽出されやすくミルクティー向き。値段もそれほど高価ではないので、普段使いしやすい

薩摩英国館のオリジナル紅茶パッケージの裏面。「OPサイズ」はリーフ状の茶葉であることを意味している

田中さんが生産するオリジナル紅茶パッケージの裏面。「OPサイズ」はリーフ状の茶葉であることを意味している

―― なるほど! 今まで何も考えずに茶葉を手にとっていましたが、特徴や用途を押さえておけば、自分好みの紅茶に出合う近道になりそうですね。

他にもある、おいしいミルクティーを入れるTips

牛乳は「普通のもの」を選んで!

―― ミルクティーには、牛乳はどんなものを選べばよいでしょうか?

真紀さん:大事なのは低脂肪乳を選ばないこと。いつも「普通のものを買ってください」とお答えしています。

もっとこだわりたかったら乳脂肪分が高めのもの、「3.6」とか「特濃」とか書かれているものだと、よりまろやかでミルキーな味わいになります。

ミルクティーはスコーンと相性バツグン! 写真は薩摩英国館ティーワールドで提供されているスコーンとミルクティーのセット

ミルクティーはスコーンと相性バツグン! 写真はティールームで提供されているスコーンとミルクティーのセット

イギリスだとノンホモ牛乳*2がいいとか、ジャージー牛がいいとか、またいろいろあるんですが、日本では普通に入手できる普通の牛乳で充分だと思います。

「牛乳 特濃」を詳しく見る
「ノンホモ牛乳」を詳しく見る
「牛乳 ジャージー牛」を詳しく見る

軟水と硬水でミルクティーの味は大きく変わる

真紀さん:実はイギリスでミルクティーが親しまれているのは、水も大きな理由だと思うんです。イギリスは日本と違ってほとんどが硬水なんですよ。

―― 軟水と硬水でやはり違いがあるんでしょうか?

真紀さん:それが大いにありまして、だいたい以下のような違いがあります。

  • 硬水:水に含まれるカルシウムやマグネシウム等が、紅茶のタンニンに反応して水色が黒ずむ。紅茶本来の香りや味は強く出にくいが、独特のコクがある
  • 軟水:水色は明るめ。紅茶の持つ香りや味の深みがしっかり引き出される。かえって繊細に出すぎることも

明るい紅色は軟水で入れてこそ

明るい紅色は軟水で入れてこそ

―― そうすると、日本で、つまり軟水で入れる紅茶はイギリスのものとは完全に別物……?

真紀さん:実はそうなんです。硬水で入れた紅茶は独特のコクがあって、そこに牛乳を入れたときのえもいわれぬハーモニーが本当に素晴らしいんですよ。なので機会があったら硬水でもミルクティーを楽しんでみてほしいです。

「硬水」を詳しく見る

ただ軟水で入れた紅茶も茶葉の繊細な香りや風味を味わえるという良さがあります。なので、まずはストレートで、そのあとにミルクを入れて楽しむことをオススメしたいですね。

―― おいしいミルクティーの入れ方を教えていただきに来たのですが、それ以外にも知らないことが本当に盛りだくさんでとっても面白いです。

真紀さん:それはよかった! 紅茶って格式高いとか難しそうと思われがちなんですが、イギリスでもほとんどがティーバッグだし、日本でいう麦茶みたいな感覚で飲まれていますよ。

入れ方も一度覚えてしまえば簡単ですし、もっとカジュアルに試してみてほしいです。

「紅茶 ティーバッグ 大容量」で検索してみる

なぜ鹿児島で紅茶をつくるのか。田中さん母娘の紅茶「沼」

―― ここまでおいしいミルクティーの入れ方を教えていただいて、目からウロコが落ちっぱなしでした。最近では「和紅茶」という言葉も世間に浸透したように思いますが、お二人も鹿児島で紅茶を生産されていますね。

京子さん:そうですね、2000年から始めたのでもう20年以上です。ちなみに、生産している我々は「和紅茶」ではなく「地紅茶(じこうちゃ)」と呼ぶことが多いです。そのくらい日本各地でさまざまな紅茶が作られているんですよ。

「地紅茶」で検索してみる

―― そうなんですね、鹿児島以外にはどんな地域でつくられているのでしょう?

京子さん:全国各地ですが、やはりお茶栽培が多いところですね。鹿児島のほかには静岡とかね。うちが栽培を始めた頃はほとんどなかったのですが、ここ20年ほどで日本の紅茶栽培は増えてきました。

全国の地紅茶生産者が集まる「地紅茶サミット」は、なんと2002年から開催されていて、2022年で20回目。全国各地の地紅茶を試飲して飲み比べられる貴重な機会です。2022年は南九州市知覧町で開催されるとか

全国の地紅茶生産者が集まる「地紅茶サミット」は、なんと2002年から開催されていて、2022年で20回目。全国各地の地紅茶を試飲して飲み比べられる貴重な機会です。2022年は南九州市知覧町で開催されるとか(詳細

「べにふうき」との感動的な出合いで紅茶生産の道へ

―― 京子さんが紅茶栽培を始められた頃は国産紅茶はほとんどなかったとか。そんな中で、なぜ紅茶を栽培しようと思ったんですか?

京子さん:もともと、ここを設立したのは、娘がイギリスに留学したことが関係しています。イギリスの暮らしに興味を持つようになり、1992年にこの薩摩英国館(現TEALAN)をオープンしたんですね。資料の展示、イギリスから輸入した紅茶などのお土産が買えるショップ、そしておいしい紅茶を楽しめるティールームとしてです。

薩摩英国館の資料館。薩摩藩とイギリスの関係史をイギリス側の視点から紹介しています。紅茶文化を知る展示も豊富で、かなり見応えがあります

資料館。薩摩藩とイギリスの関係史をイギリス側の視点から紹介しています。紅茶文化を知る展示も豊富で、かなり見応えがあります

その後、日本紅茶協会認定のティーインストラクターの資格も取り、紅茶に関してはそれなりに詳しくなりました。そこへ、枕崎市の野菜茶業試験場の方が「おいしい紅茶の入れ方を知っている人に試してほしい」と、試験的につくられた「べにふうき」という紅茶を持ってきてくれたんです。

入れてみたら、これがまあおいしい! 香り、味わい、水色と三拍子そろった紅茶で感激しました。今まで飲んだどの紅茶よりもおいしかったんです

「べにふうき」を詳しく見る

―― 本場の紅茶をたくさん飲んできた京子さんが感動するってすごいですね。

京子さん:これはぜひ薩摩英国館のお客さんにもお出ししたい! と思ってお願いしたところ、試験用だから無理だと。それでも執拗にお願いし続けていたら、とうとう「もう、あなたが育てるしかないでしょう」と言われまして(笑)。それで自分たちで栽培することにしました。

薩摩英国館の茶畑の様子(画像提供:薩摩英国館)

田中さんが管理している茶畑の様子(画像提供:TEALAN)

―― 「お客さんにも出したい」の一心から栽培まで始めてしまうとは……!

京子さん:「栽培は簡単ですよ」と言われていたんですが、全くそんなことはありませんでしたね。ひたすら雑草と、チャドクガという害虫との戦いでした……。

ようやく収穫を迎えて、約2kgからできた紅茶は340g、ティーカップで約100杯分。本当に貴重なものでしたね。

薩摩英国館のオリジナル紅茶はすべて手摘み! 葉の状態を確かめながら丁寧に摘んでいるそう(画像提供:薩摩英国館)

オリジナル紅茶は全て手摘み! 葉の状態を確かめながら丁寧に摘んでいるそう(画像提供:TEALAN)

イギリスの品評会で高く評価されるまでに

―― これだけ苦労して栽培した自社ブランドの紅茶「夢ふうき」が2007年にイギリスの食品品評会「グレート・テイスト(Great Taste)」で日本人初の受賞をされたそうですね。

京子さん:ええ、そうですね。イギリス在住の娘が勝手にエントリーしたんですよ(笑)。そうしたら受賞したって連絡があって、せっかくなので授賞式へ行きました。

―― そんなカジュアルにエントリーされていたとは!

夢ふうきは薩摩英国館で販売しています。通販でも取り扱いが

夢ふうきはTEALANで販売しています

京子さん:評価の細かいところは分からないけれど、「世界3大銘茶はダージリン・ウバ・キーマンだが、4番目の産地が誕生した」と言ってもらいましたね。

―― 最高の賛辞じゃないですか……!

京子さん:ありがたいことに、受賞後、べにふうきを栽培する農家さんが増えたりもしましたね。

―― そのくらい、日本の紅茶界を大きく変えた出来事だったんですね。

紅茶をベースにハーブをブレンドした「TEALAN(ティアラン)」シリーズも人気

紅茶をベースにハーブをブレンドした「TEALAN」シリーズも人気

―― 京子さんのお話を伺っていると本当に行動力と情熱がすごいなと思います。最後に、これからの展望はありますか?

京子さん:私は50代になってから紅茶の世界へ飛び込みました。この年齢ではなかなか体験できないこと、会えない人、紅茶が全てつないでくれて世界を広げてくれました。

あとはこの輪をみんなにつないでいって、広げていきたいなと思います。知覧に紅茶の学校というか研究所というか、学んで体験できる場をつくって、紅茶のおいしさ、面白さ、楽しさを伝えていきたいですね。

―― 素敵ですね! これからも楽しみにしています。

今までも家で頻繁に紅茶&ミルクティーを飲んでいましたが、取材してみて「こんなに奥深く面白い世界だったのか」と改めて感激しました。紅茶って本当に面白い! 家でのティータイムがもっと楽しくなりそうです。

皆さんもぜひ、いろいろ試してみてくださいね!

TEALAN(ティアラン)(旧 薩摩英国館)
住所:鹿児島県南九州市知覧町郡13746-4
TEL:0993-83-3963
アクセス:車の場合、指宿スカイライン知覧ICから約15分。
バスの場合、鹿児島市内から鹿児島交通バス(知覧行き)で約1時間15分→「武家屋敷入口前」下車

そろそろティータイムにしませんか☕

著者:横田ちえ

フリーライター。農業、漁業、地域の伝統食など「食」にまつわるインタビューを中心に手掛けています。取材は九州を中心に全国どこでも。温泉と離島めぐりが好きです。

Twitter:@kirishimaonsen
サイト:鹿児島在住ライター 横田ちえのサイト

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今回紹介した商品

「TEALAN(薩摩英国館)」の商品一覧を詳しく見る
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*1:タンニンとカフェインが結合して結晶化する現象。

*2:牛乳の乳脂肪中の脂肪球を細かく砕き、安定した状態に均質化することを「ホモジナイズ」というが、これを行っていない牛乳のこと。日本で流通している牛乳のほとんどはホモジナイズされたもの。