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酢を変えたら料理も変わる! 多種多様な「酢」から好みの1本にめぐり会うための選び方&オススメ酢

基本調味料のうちの1つである「酢」。好きだけれど使い方がいまいちわからない……という人が多い調味料です。とりあえず定番商品を手にとっているという人が多いと思いますが、身近なお店で見かけるよりもたくさんの種類の酢があります。しょうゆや味噌を変えれば料理の味が変わるように、酢も自分が気に入ったものを使えばもっと料理がおいしくなります。今回はオススメの酢や酢を使った商品を10商品紹介。何にでも使える穀物酢は「千鳥酢」「臨醐山黒酢」「玉姫酢」「三ツ判山吹」、ジュースやアイスと相性抜群な果実酢は「純りんご酢」「ハチンカキス」「橙酢」をセレクトしています。酢についてもっと知りたい! という方は、記事最後で酢の分類や効能を解説していますのでじっくり読んでみてくださいね。

酢の使い分けや選び方を徹底解説&オススメの酢と活用方法を伝授

こんにちは。「ソレドコ」では何回か日本酒関連の記事を書かせていただいている、杉村啓です。

お酒と同じぐらい醤油が好きで、醤油にまつわるブログや『醤油手帖』という本を書いているのですが、実は醤油だけではなく調味料全般が大好きでして。見知らぬ調味料を見かけるとすぐに買ってはペロペロするという生活をしております。

今回は、そんな調味料の中から「酢」をピックアップしました。

酢の種類や効能について説明しつつ、料理に取り入れやすいオススメの酢を紹介していきたいと思います。

「酢」は最も人気がない基本調味料!?

和食にまつわる基本調味料といえば、「さしすせそ」でも知られる以下の5つです。

さ……砂糖
し……塩
す……酢
せ……醤油(せうゆ)
そ……味噌

この中で、どの調味料が一番人気があるでしょうか。酢やポン酢で有名な株式会社ミツカンが2014年に行った調査を見てみましょう。

ミツカン情報ファイル No.113「和食と、和食に欠かせない調味料」調査(PDF)

これによると、「さしすせそ」の中で一番人気なのは「醤油」で、なんと60.9%の人が最も使う調味料と答えています。さすが「さしすせそ」は「さいしこみ醤油」「しろ醤油」「すし醤油」「せうゆ」「そいそーす」と冗談で言われるだけのことはあります。

一方で、一番使わない調味料に69.2%の人が挙げたのは「酢」でした。圧倒的な不人気と言えるかもしれません。

しかし、酢が好きか苦手なのかを聞いた調査では、「好き」と答えた人が69.2%と、過半数を超える数字を出しています。

つまり、酢は不人気なのではなく、どう使っていいか分からないので、結果として調理に使えていない人が多いのですね(上記調査では「使いこなすのが難しい調味料」も46.8%で酢が1位)。

実際、使い方が分からなくても「健康に良さそうなので摂取したい」ということからか、飲む酢の市場規模は年々膨らんでいます。2016年の「レモン酢」ブームや、近年の「酢玉ねぎ」ブームなども記憶に新しいところです。

ということは、「どんな酢があるのか」「酢をどう使えばいいのか」が分かれば、もっと酢が好きになるのではないでしょうか。

酢は身近なお店で見かけるよりもたくさんの種類が存在しています。いつも同じものを買っている人も多いかもしれません。

5つの基本調味料は「基本」とあるように、味の方向性を決めるものです。いつもと違う醤油を使ったら同じレシピでも風味が変わりますし、味噌だって種類が異なればもはや別の料理のようになります。

もちろん、酢を変えれば料理の味も変わります。特に「レモン酢」や「酢玉ねぎ」、さらにはジュースなどで割って飲む際には酢の違いはかなり大きな影響を与えます。

もしかしたら、世の中には今使っているものより自分の好みにばっちり合う酢があるかもしれないのです。料理に使うにしろ、健康のために摂取するにしろ、おいしい方がいいですよね。自粛期間などで家で料理をする機会が増えた方はとくに、自分にぴったりの酢を探してみてはいかがでしょうか。






まず最初に、私がオススメする酢を紹介します。ここで酢にはこんなにたくさんの種類があるのか! と知っていただき、さらに興味がわいた人には酢の基本知識を記事最後で解説していますので読んでみてください。

住んでいる場所の都合上、京都で手に入るものが多めになっています。どれも楽天市場で取り寄せられるものをセレクトしましたので、気になったらぜひ試してみてください!

【1】日常用に最適! 何にでも使える穀物酢
・千鳥酢(村山造酢/京都)
・臨醐山黒酢(内堀醸造/岐阜)
・玉姫酢(斉藤造酢店/京都)
・三ツ判山吹(ミツカン/愛知)

【2】ジュースやアイスと相性抜群! さわやかな香りがうれしい果実酢
・純りんご酢(内堀醸造/岐阜)
・ハチンカキス(新潟柿酢事業協同組合/新潟)
・橙酢(生創石丸/香川)

【3】手軽に酢を摂取! 毎日の習慣にしたい飲む酢
・信州産こだわり飲む酢3本セット(みやま商事/長野)

【4】とにかく便利! 困ったときの調味酢
・カンタン酢(ミツカン/愛知)

【5】変わり種!? 酢を使ったデザート
・朝のレーズン、夜のラムレーズン(林孝太郎造酢/京都)


【1】日常用に最適! 何にでも使える穀物酢

最初に紹介するのは、日常で使用するのに適した醸造酢である穀物酢です。一般的に「酢」といえば、米酢などの穀物酢であることが多かったりします。

千鳥酢(村山造酢/京都)
酢の使い分けや選び方を徹底解説&オススメの酢と活用方法を伝授

享保年間(1716〜1730年)創業、村山造酢株式会社の「千鳥酢」です。瓶が紙のラベルに包まれているこの酢は、京都のスーパーだけでなく、他の地域でも見かけることがあるのではないでしょうか(以前、関東のスーパーで見かけたことがあります)。

米と熟成した酒粕から仕込んでいるためか、まろやかで香りもきつくないところが何にでも使いやすくなっています。とりあえず困ったらこれ、というぐらい日常用にぴったり。

ちなみに、これは分類としては「米酢」で、読み方は「こめす」「こめず」もしくは「よねず」です。「純米酢」の場合は思わず「じゅんまいす」と読みたくなるのですが、「じゅんこめす」「じゅんこめず」と読むか、商品によってはそのまま「よねず」が正しい読み方だったりします。

オススメの活用法……癖が少ないので、酢の物やピクルス、ドレッシングなどにも最適です



臨醐山黒酢(内堀醸造/岐阜)

黒酢は、一度造った酢を熟成させて出来上がります。貯蔵しているうちに偶然出来上がるというものではなく、最初から狙って造られるものです。

黒酢は通常の米酢よりもたくさん米を使っています。通常の米酢は1Lにつき40g以上のお米を使うのに対し、黒酢は180g以上と定められています。黒酢は栄養価が高いという話を聞いたことがある人もいると思いますが、それは使っている米が多く、エキス分が豊富だからなのですね。

酢を熟成させることで、酢に含まれているアミノ酸や糖分が化学反応を起こして黒くなっていきます。これにより、酸味が和らぎ、まろやかに仕上がります。飲んだ後もツンと喉にくる刺激が少ないため、料理だけでなく飲む用の酢としては黒酢がオススメです。

酢の使い分けや選び方を徹底解説&オススメの酢と活用方法を伝授

内堀醸造株式会社の「臨醐山黒酢(りんこさんくろす)」口当たりがまろやかで、ほのかに甘味もあるため、酢を飲む入門用としてはこれが一番かなと思っています。料理に使ってもコクが加わります。

オススメの活用法……ジュースなどに加えて飲んでみましょう。玉ねぎに酢を加えて作る「酢玉ねぎ」にするのもオススメです


玉姫酢(斉藤造酢店/京都)
酢の使い分けや選び方を徹底解説&オススメの酢と活用方法を伝授

「玉姫酢」は、京都・北野天満宮の近くにある斉藤造酢店の酢です。一時期は「瓶を持っていかないと買えない」などの噂もあり「幻の酢」と言われていたようなのですが、私が京都に引っ越した後に店を訪れたところ、普通に購入できました。そして、楽天から取り寄せることもできます。

酒粕を使って造っている、非常にまろやかな酢です。つんとこないし、飲んでも喉につかえるところがありません。なお、使い終わった後の瓶を店へ持って行くと、また充填して売ってくれます。残念ながら楽天で取り寄せた場合は、購入したところに瓶を送り返しても充填はできません(もちろん瓶を京都の斉藤造酢店へ持って行けば充填で売ってくれます)。遠方の方は気に入ったらまた楽天で買いましょう。

オススメの活用法……飲んでも喉につかえないので、料理だけでなくジュースに加えるのもオススメです。餃子を食べるときの「酢こしょう」に使ってもいいですね


三ツ判山吹(ミツカン/愛知)
酢の使い分けや選び方を徹底解説&オススメの酢と活用方法を伝授

「三ツ判山吹」は「味ぽん」などで有名なミツカンの原点ともいえる酢。熟成させた酒粕で造っている「純酒粕酢」です。

ミツカングループを創業した初代・中埜又左衛門(なかのまたざえもん)によって江戸時代中期に考案されました。当時、江戸では早ずし(にぎり寿司の先祖)の酢飯に米酢が使われていたのですが、高価な米酢よりも安価な粕酢の方が寿司には相性が良いと売り込み、大成功を収めたのです。

そこからミツカンが始まりました。ラベルに「創業の逸品」と書かれているのは、こういう経緯があったからです。

「三ツ判山吹」はほんのりとした甘みとしっかりとした旨みがあり、口当たりはとてもまろやかでツンとした刺激も少なめです。

オススメの活用法……酢の物などに使ってもいいのですが、やはり酢飯に使いたいところです。粕酢の酢飯は、いわゆる「赤酢」の酢飯になります


【2】ジュースやアイスと相性抜群! さわやかな香りがうれしい果実酢

果実酢は、穀物酢と違ってさわやかな香りと甘みがあることが多く、料理に使うだけでなくジュースなどに加えて飲む用の酢としても最適です。ひと味違う酢を求めるときには、果実酢を選んでみてはどうでしょうか。

純りんご酢(内堀醸造/岐阜)

果物から造られる酢の中でも、りんごから造られる「りんご酢」はさわやかな香りと甘みがあり、ツンとこないまろやかな味わいで、特に使いやすい酢です。

酢の使い分けや選び方を徹底解説&オススメの酢と活用方法を伝授

内堀醸造株式会社の「純りんご酢」は、青森産りんごの果汁で酒を造り、それを酢にしています。「純」というのは、他の果汁や糖分、アルコールなどを添加せずに、りんご果汁と水のみで造られたものを意味しています。

オススメの活用法……ジュースに加えて飲むのもいいのですが、果物を漬け込んだサワードリンクにしたり、レモン酢のような調味料にするのもオススメです


ハチンカキス(新潟柿酢事業協同組合/新潟)

「柿酢」は昔から造られてきた果実酢です。柿の皮には糖分をアルコールに変える酵母とアルコールを酢酸にする酢酸菌が付着しているため、ヘタをとって、軽くつぶして容器に詰めて保管するだけで、酢が出来上がります。

酢の使い分けや選び方を徹底解説&オススメの酢と活用方法を伝授

石山味噌醤油株式会社が製造し、新潟柿酢事業協同組合が販売する「ハチンカキス」は、新潟産の八珍柿(はっちんがき)の果汁を使った柿酢です。まろやかでツンとくる刺激が少ないので、飲む用にもオススメです。

オススメの活用法……ジュースに加えて飲んだり、そのまま薄めて飲んだりするのにもぴったり。なますなどを造るのにも向いています


橙酢(生創石丸/香川)
酢の使い分けや選び方を徹底解説&オススメの酢と活用方法を伝授

柑橘系の果物からも、酢を造ることができます。「橙酢(だいだいず)」は、四国産の本橙(皮が厚くあまり果汁が出ない「だいだい」)と完熟した酢橙(すだいだい)の果汁をブレンドし、低温熟成させて造る酢です。

瓶を開けたときからふわっと柑橘の香りが広がるぐらい強い香りで、口当たりがまろやかな酢です。もしかしたら、酢を造った後に橙果汁をさらに加えているのかもしれません。それぐらい、橙のさわやかな香りを堪能できます。

ちなみに、楽天市場では初回限定で1本1,300円(送料・税込み)で購入できますので、試してみたい方はぜひ(2020年7月時点)。

オススメの活用法……料理に使ってもいいのですが、醤油やみりんを加えて自家製ポン酢にするのも楽しいです。甘みはそれほど強くないため、飲むときにはシロップなどを加えています


【3】手軽に酢を摂取! 毎日の習慣にしたい飲む酢

昨今の健康ブームを受けて「飲む用の酢」の売り上げは年々伸びています。これまで紹介してきた酢の中にも、ジュースに混ぜたりシロップを加えて希釈したりしておいしく飲めるものもありますが、ここでは「飲む専用の酢」を紹介します。

信州産こだわり飲む酢3本セット(みやま商事/長野)
酢の使い分けや選び方を徹底解説&オススメの酢と活用方法を伝授

「信州産こだわり飲む酢3本セット」は、果実酢の3本セットです。柿酢、りんご酢、ブルーベリー酢、いちご酢、梅酢、山ぶどう酢の中から3本を選び購入できます。写真は「ブルーベリー酢」「いちご酢」「山ぶどう酢」です。

はちみつやグラニュー糖などで甘みがついていて、どれも非常に飲みやすいです。5倍希釈と書かれているのですが、少しだけ濃いめにした方が好みかも。

ちなみに○倍希釈は元の量の○倍になるまで薄めるという意味です。5倍希釈の場合、10mlの酢に40mlを加えて50mlにします。

オススメの活用法……楽天市場のページで「ブルーベリー酢」をソフトクリームにかけている様子が紹介されているように、アイスにかけて食べるのもオススメです



【4】とにかく便利! 困ったときの調味酢

酢をどう使っていいか分からない人に一番オススメなのが、最初からメーカーが味を調えている「調味酢」です。これだけを使えば料理の味がばっちり決まるため、調味酢を使うだけでおいしく仕上がるのです。

カンタン酢(ミツカン/愛知)
酢の使い分けや選び方を徹底解説&オススメの酢と活用方法を伝授

個人的にとにかく便利で使い勝手が良い万能の酢として愛用しているのが、この「カンタン酢」です。砂糖や食塩、だしなどが入っていて、酸味・甘味・旨味のバランスがとれているので、料理に使うのもこれ1本で済みます。

他にあれこれ加える必要がほとんどない、文字通り「カンタン」に使える酢です。

オススメの活用法……野菜などが余ったりしたら、「カンタン酢」に漬け込むだけであっという間にピクルスになります。もちろん、酢の物や甘酢漬けなどもばっちり味が決まりますし、肉料理などにも使えます


【5】変わり種!? 酢を使ったデザート

最後に、酢が入っているデザートを紹介します。フルーツ酢だけでなく、酢を隠し味に使うことで味を引き締め、なおかつ甘味や酸味が加わって食べやすくなるデザートがあるのです。

朝のレーズン・夜のラムレーズン(林孝太郎造酢/京都)
酢の使い分けや選び方を徹底解説&オススメの酢と活用方法を伝授

京都・林孝太郎造酢の「朝のレーズン」「夜のラムレーズン」は、砂糖不使用のレーズンです。米酢と梅酢を使っていて、甘酸っぱい味わいに仕上がっています。

なお「夜のラムレーズン」はラム酒を使っているため、アルコールが3%ほど含まれています。

オススメの活用法……そのまま食べるだけでなく、ヨーグルトに加えたり、トーストにのせたりして食べるのがオススメ。アルコール入りの「夜のラムレーズン」は、クリームチーズなどとあわせてお酒のおつまみにしても良いですね


酢の使い道を増やせる「加工酢」を作ってみよう

さらに酢の使い道を増やしたいときには「加工酢」を作ってみましょう。酢と他の調味料を組み合わせて、新たに調味料を作るのです。代表的なものを紹介します。

・二杯酢……酢と醤油を組み合わせたもの
・三杯酢……酢と醤油とみりんを同量ずつ合わせたもの
・甘酢……酢と砂糖、塩または醤油を合わせたもの
・土佐酢……三杯酢にかつお節を加えたもの
・寿司酢……酢と砂糖と塩を合わせたもの


二杯酢

酢と醤油を組み合わせた「二杯酢」は、いわゆる酢醤油です。甘味を加えずコクを出したいときに使われます。基本的には酢と醤油を同量ずつ加えるのが主流ですが、少し酢の味がきついと感じる場合にはだしを加え、酢の風味を強くしたいときには酢を多めにしましょう。甘味の必要ない油っこい料理などに使います。

三杯酢

酢と醤油とみりんを同量ずつ合わせるので「三杯酢」と呼ばれています。家にあるのが本みりんではなく、みりん風調味料の場合は、酢を大さじ2杯、醤油を大さじ1杯、砂糖を大さじ2杯にするといいでしょう。酢の物全般の基本的な調味料として利用されています。

甘酢

三杯酢よりも甘めに作るのが「甘酢」です。酢と砂糖、塩または醤油を合わせて造ります。基本的には色合いが変わらないよう、塩を使うレシピが主流です。酢を大さじ3杯、砂糖を大さじ2杯、塩少々などですね。だしを加えてもおいしくなります。甘酢漬けや、中華料理の甘酢あんに用いられます。

土佐酢

三杯酢にかつお節を加えて旨味を増したもの「土佐酢」です。かつおだしが加わるので、かつおで有名な土佐の名前が入っています。レシピとしては「酢を大さじ3杯、醤油を大さじ1杯、砂糖を大さじ2杯」で三杯酢を造り、そこにかつお節を3g加えてひと煮立ちさせ、かつお節を漉(こ)せば完成です。三杯酢よりまろやかになるので、酸味が強くない方が好みの方は土佐酢を使いましょう。

寿司酢

寿司の酢飯を造るときに用いられる酢「寿司酢」です。基本的には酢と砂糖と塩を組み合わせて造ります。関東では甘味を抑え気味にし、関西では甘味をやや強調するものが好まれているなど、地方によって好みが異なるのでこれが基本の「寿司酢」といえるものはなかったりします。

そもそも「酢」って何? 基礎知識を知ろう

ここからは、そもそも酢とは何なのか、どんな種類がありどのようにして造られるのかを理解しましょう。

酢は、一言で表すと「酢酸(さくさん)を含んでいる調味料」のことです。酢酸はお酒から造ることができます。お酒に「酢酸菌」が入ると、発酵によってアルコールが酢酸になるのですね。

そして、お酒は「糖分」から造られます。日本酒は米のでんぷんを糖分に分解して造るお酒ですし、ビールは麦のでんぷんを、ワインはブドウの糖分を利用して造られます。というわけで、何らかの糖分(穀物や果物)があれば酒ができ、酢を造ることができるのです。

そのため、世界各地の代表的なお酒がある地域では、酢も製造されています。ワインから造られる「ワインビネガー」や、麦芽から造られる「モルトビネガー」などが代表ですね。日本では、お米から造られる日本酒があることから「米酢」があります。このように、原材料によってさまざまな種類の酢があるのです。

食用の酢は、大きく「合成酢」と「醸造酢」に分類される

食用の酢、つまり「食酢」は、農林水産省が定めた「食酢品質表示基準」で大きく「合成酢」「醸造酢」に分類されています。

醸造酢
  • さらに「穀物酢」と「果実酢」に分かれる
  • 食酢として造られるのは醸造酢が主流

合成酢
  • 主に石油化学工業によって造られる「氷酢酸(ひょうさくさん)」などを希釈して、砂糖や酸味料、調味料などを加えて味を調えたもの
  • 発酵していないが、食酢として定義されている
  • ほとんどの地域では使われていないが、沖縄県では合成酢「まるこめ酢」などが現在でも使われている。
酢の分類を解説
酒粕酢は穀物(米)の加工品の酢で穀物酢に分類される

この分類以外にも、醤油や砂糖や香辛料を加えた「加工酢」などがあります。“飲む酢”も加工酢に分類されるものがほとんどですね。

また、以下2つは名前に酢がついているものの、酢酸発酵をしていないので、厳密には酢ではありません。

  • 梅酢……梅干しを漬けたときにできるエキス
  • もろみ酢……沖縄の泡盛を造る際に蒸留の過程でできるもろみ粕を圧搾したもの



酢の効能とは? 食欲増進、根菜の変色防止にも

酢には、さまざまな効能があります。その中でも、調理に関わる効能として以下の6つを紹介します。

1.味をすっきりさせる
2.食欲を増進させる
3.保存食にも使える
4.根菜の変色を防ぐ
5.肉を柔らかくする
6.塩の代わりにできる
1.味をすっきりさせる

酢の最大の役割は「味をすっきりとさせる」ことです。これは、酸っぱい味だけでなく酢の持つ「油の粒子を細かくし、均一の大きさにする作用」のおかげもあります。いわゆる乳化ですね。

ドレッシングなどを見ても分かるように、油と酢を激しく振ると混じり合うのですが、これは酢によって油が細かくなるからです。この効能と酸味によって、脂っこい味の料理に酢を加えると、後味がすっきりします。

2.食欲を増進させる

あわせて、うまく活用したいのは「食欲増進効果」です。酢は、爽やかな酸味と独特の香りが唾液の分泌を促進するほか、味覚や嗅覚を刺激して、食欲をコントロールする脳の摂食中枢に働きかけると言われています。

例えば、食欲がないときに最初に酢を使った料理を食べることで、その後の料理をおいしく食べることができます。

また、加齢などにより食べ物を飲み込みにくくなっても、酢を最初に味わうことで唾液の分泌が進み、喉を通りやすくなります。

3.保存食に使える

さらに、酢には「殺菌作用」があります。酢に漬け込んだ酢漬けやピクルスは昔から保存食として利用されてきました。いわゆる「防腐効果」ですね。

ただし、これは万能ではありません。カビには無力だからです。食酢には酢酸だけでなく糖分やアミノ酸も豊富に含まれているのですが、これらはカビの大好物でもあります。自家製ピクルスを早く食べた方がいいのは、カビが繁殖する可能性があるからなのですね。

4.根菜の変色を防ぐ

根菜にはポリフェノール系の物質が含まれているのですが、それが酸化すると根菜が変色してしまいます。

そのため、根菜を酢水に5分ほどさらすと、酸化を防ぐ……つまり「変色を防止する」ことができるのです。ただし、緑黄色野菜は酸に触れると逆に変色するため、酢水にさらすのには適さないことには注意してください。

5.肉を柔らかくする

「肉が柔らかくなる」のは酢の効能の一つではあるのですが、正確に言うと、酢は「肉を固くする効果」と「肉を柔らかくする効果」の両方を持っています。

煮込む時間が短い場合、酢は肉のタンパク質を固める効果を発揮します。煮魚をするときに酢を加えると煮崩れの防止ができるのはこのためです。

一方で、長時間煮込むと、逆にタンパク質を柔らかくします。また、酢にはカルシウムを溶かす効果があるため、骨も柔らかくしてくれます。骨のついた鶏肉などを煮込むときには、酢を最初に入れて煮込むことで骨離れが良くなるのですね。こういった柔らかくする効果を利用したものに、イワシの南蛮煮や鶏の煮込み、魚の甘露煮などがあります。

6.塩の代わりにできる

酢の酸味は味わいが強いので、「他の味を補う効果」があります。

醤油に酢を加える「酢醤油」を例にして考えてみましょう。同量ずつ混ぜ合わせると、酢が増えている分、全体の塩分濃度は元の醤油と比べると半分しかありません。でも、塩気が足りないとは感じないでしょう。これを利用すると、少し酢を加えるだけで、塩分を少なめに調理してもしっかりとした満足感を得られます。

困ったら「酢漬け」で解決!

「酢」には上記以外にもさまざまな効能があり、毎日大さじ一杯(15mL)を摂取し続けることで、内臓脂肪の減少が見込めるという研究結果*1もあります。何より糖分や塩分とは違って、たくさん摂取しても生活習慣病の心配はありません。ただし、直接飲むと酢酸成分が歯のエナメル質を溶かしたり胃を痛めたりします。水や炭酸水、ジュースで薄めて飲んだり、料理に使ったり、飲んだ後はうがいをしましょう。

メリットが多いとはいっても、最初に触れたとおり「酢」は確かに基本調味料の中では使いこなすのが難しい調味料です。そこでオススメなのが「酢漬け」。残った野菜をなんでもかんでも酢に漬けてしまうのです。

「カンタン酢」のように味付けが決まっているものはそのまま野菜を漬ければいいですし、そうでないお酢には少しハチミツや砂糖、塩、淡口醤油などを加えればOK。あれこれ試しながら、自分の好みに合う酢やレシピを探していくのは意外と楽しいですよ(それを面倒だと感じる人は調味酢を使ってしまいましょう)。

一度漬けてしまえばあとは冷蔵庫に入れておくだけでいいですし、ある程度は保存も利きます。バランスのとれた食生活にもつながりますし、「酢」の健康効果も期待できる。漬けたあとの調味液も、加熱する料理に使えば無駄が出ません。

というわけで、使い道に困ったときはとにかく「酢漬け」にすれば、万事解決! そして酢漬けをよりおいしく、好みの味にするべく、さまざまな「酢」を試してみてください。

著者:杉村啓

杉村啓醤油やお酒といった発酵や調味料をこよなく愛するライター。愛称(?)は「むむ先生」。おいしいお酒やおもしろいお酒の情報を聞きつけると現れたりします。最近では京都の街をふらふらと「いけず石」を求めてさまよっていたりもします。良い「いけず石」を見かけたらぜひご一報を。近著に『白熱日本酒教室』(星海社/漫画版全3巻/新書)、『グルメ漫画50年史』(星海社)、『醬油手帖』(河出書房新社)など。


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