それどこ

あなたを夢中にして寝かせない「夜更かしマンガ」(寄稿:ヨッピー、『スゴ本』中の人ほか)

マンガ好きのブロガーたちが、時間も忘れて読みふけってしまうおすすめのマンガを紹介します。『キングダム』『三国志』『ふたつのスピカ』など。『良いコミック』管理人、ヨッピーさん、『スゴ本』中の人、河相我聞(かあいがもん)さん、劇団雌猫のひらりささんがセレクトします。

ヨッピー・河相我聞・『スゴ本』中の人・『良いコミック』中の人が選ぶ、夜更かしマンガ

2018年も年の瀬。ということで! まとまった時間ができる年末年始にあわせて、時間も忘れて読みふけってしまう「夜更かしマンガ」を紹介します。

\紹介してくれるのはこの方々!/

  • 河相我聞さん
  • ひらりささん
  • Dainさん(ブログ『スゴ本』中の人)
  • KT.さん(ブログ『良いコミック』管理人)
  • ヨッピーさん


マンガや読書好きの人をはじめ、「一体どんなマンガに触れてきたの!?」と気になるあの人も。バラエティー豊かな人たちに、この冬あなたを寝かせないマンガをセレクトしてもらいました。それぞれの夜更かしした実体験とともにお届けします。

それでは、夢中になること間違いなしのマンガの世界へ皆さんをご招待~!

登場人物一人ひとりの繊細な描き方に気持ちが高ぶる。歴史大作『キングダム』

河相我聞
紹介者・河相我聞/俳優。2人の息子を持つ父親でもあり、独自の子育てをつづるブログが話題を呼び2017年に書籍化。それどこには息子たちとの「GoProを持って出かけた鎌倉旅行」を寄稿。 ブログ / Twitter / それどこ寄稿
原泰久『キングダム』(集英社)
原泰久『キングダム』(集英社)
「あぁぁぁぅ、もう1巻だけ、もう1巻だけ読んだら寝るんだ」

と言いながら夜更かしが止まらないおすすめのマンガをわたくしが一つあげるとすれば、それは『週刊ヤングジャンプ』(集英社)で連載中の『キングダム』だろう。

人気のマンガであり、『アメトーーク!』(テレビ朝日)でも取り上げるぐらいマニアもいる作品なので、マンガ好きなら読んだことがある人は多いと思う。しかし中には意外と「巻数が多いから」とか、「中国の春夏戦国時代の話って難しそう」とか、「なんだか絵のタッチが怖い」などなどの理由で読んだことがない人もいるのではないかと思う。

もし、もし万が一読んだことがないのであれば、まず何も言わないで5巻、いや3巻まででも読んでほしい

「いやいやそうは言っても、3巻まで読むのが大変なのよ」という方は、アニメでキングダムのシーズン1を見てからコミックを読み始めるのもいいかと思う。ちなみにわたくしはアニメから見て「こんなに面白い話だったのか!」と、衝撃を受け、コミックを買って読み始めた。

現時点で単行本で50巻を超える長編なのだが、おそらく10巻を過ぎた辺りから「あぁぁぁぅ、もう1巻だけ、もう1巻だけ読んだら寝るんだ」と言いながら次巻に手を出てしまい、夜更かしが数日間は続いてしまうだろう。ホント、これだけの長編なのに途中で物語の勢いが失速する感じがない。

あとね、共感できる名セリフが多いこともいい。例えば「勇猛と無謀は違う、そこを履き違えると何も残さず早く死ぬ」という言葉は、これまでいろいろなジャンルの仕事をやってきた自分を振り返るとしみるし(遠い目)、新しい仕事を始める時に思い出すことがあったり、なかったり……。

それから、「キャラクターの一人一人の描き方の深さ」がすごい。何がすごいって戦国時代の話だから本当にたくさんの登場人物がいるのに、誰一人として雑に扱われておらず、とにかく一人一人が心に残る。歴史上の事実を基にしたマンガで個々のキャラクターをここまで深く繊細に描ける作者の想像力はハンパない。神。

だからこそ泣ける時は猛烈に泣ける。わたくしは涙でマンガが見えなくなるぐらい泣いた。読みたいのに読めない。

元気がない時に読んだら、わたくしの心は奮い立った。

わたくしは奮い立って、なんだか分からないが登場人物のフィギュアまで買ってしまった。

そのくらい、このキングダムにわたくしの心は揺り動かされたってことですな。とにかくおすすめしたい夜更かしにうってつけのマンガでございます。

私のレディコミ界が180度変わった。“血と継承”の物語『かんかん橋をわたって』

劇団雌猫・ひらりさ
紹介者・ひらりさ/趣味に愛とお金を注ぐ様子を発信する4人組サークル「劇団雌猫」の一員。今はボーイズラブとコスメにお熱中。それどこでは「現場メイク」にチャレンジした話を寄稿。 ブログ / Twitter / それどこ寄稿
草野誼『かんかん橋をわたって』(ぶんか社)
草野誼『かんかん橋をわたって』(ぶんか社)
子供のころから、『りぼん』から『LaLa』まで、あらゆる少女マンガ誌を渡り読んできました。結果、ボーイズラブに行き着き、一方で全くご縁がなかったのが「レディコミ」の世界。

過激なファンタジー恋愛や、下世話なご近所バトルなどを赤裸々に描いた作品群、という勝手な認識しかなく、「まあ別にわざわざ読む必要もないか」と思っていました。それどころか、「ボーイズラブの方が絵が奇麗な作家さんが多いし、キャラクターもよく練られているし、ストーリーも面白いに決まってるし……」と、読む前から決め付けていた気すらします……。

そんな私が、レディコミ界に対してスライディング土下座せざるを得ないほど、今年夢中になったのが『かんかん橋をわたって』。SNSでさまざまな人が「面白い!」と叫んでいるのは見かけていたのですが、当初タイトルからは何の話なのか分からず、その後、嫁姑バトルの話だと分かってからも私には全然興味がないなとスルーしていました。

しかし、ある飲み会で聞いたのです。

「かんかん橋は、『HUNTER×HUNTER』なんですよ。“血と継承”の物語なんです」

“血”と”継承”、どう考えても私が好きなやつじゃん!

帰宅して半信半疑で読み始めたら、いつしか夜が更け、しかしページを繰る手は全く止まらず、ほぼ徹夜で全10巻を読み切ることになったのでした。

結婚して「川東(かわっと)」という町にやってきた新妻・萌が、同居する姑・不二子から仕掛けられる意地悪に悩みつつも、明るく朗らかにそれを打ち負かしていく物語。「へえ、レディコミも結構面白いんだな」とヘラヘラ読んでいると、ストーリーは一つの「家」を飛び出して、川東に存在するという「嫁姑番付(何なんだよそれは)」の存在へと至り、姑との関係に悩むさまざまな嫁と萌が心を通わせていったかと思いきや、姑たちをも恐れさせる「ラスボス(何なんだよそれは)」の存在が明かされ、そこでようやく、作者の意図が見えてくる……。

「いや見えはするけど普通こんな展開にする!?」と唖然とさせられ、タイトルの意味へとたどり着き、川東に住む全ての人々が愛おしく思えてくる……。

斜に構えながら読んでいると、予想もつかなかった方向に展開し、ねじれ、また広がっていき、「確かに『HUNTER×HUNTER』じゃん!」「いや、◯◯かも!?」と任意の作品に照らし合わせて語り合いたくなる作品です

伏線と構成の妙にとりこになる。アレクサンドロス大王時代が舞台の歴史大作『ヒストリエ』

スゴ本
紹介者・Dain/年間120冊読書する『スゴ本』中の人。それどこでは「10年前の自分に読ませたい本」などのテーマで、おすすめの本を寄稿。 ブログ / Twitter / それどこ寄稿
ヒストリエ(著:岩明均)
岩明均『ヒストリエ』(講談社)
寝る間も惜しんで読みふけってしまうダントツは『ヒストリエ』ですな! 紀元前のアレクサンドロス大王の時代を舞台にした歴史大作で、面白くないわけがない。しかも、アレクサンドロスを直に描くのではなく、その書記官となるエウメネスの波乱万丈の人生に焦点が当たっているのがユニークだ。

ただしこれ、作者が練りに練っているので、刊行ペースがすごく遅い。だから新刊が出るたびに1巻から読み直しているのだが、読むたびに伏線を発見する。それぐらい精妙にネタが張り巡らされており、何度読んでも味読できる構成となっている。「あの時のアレ(演出やセリフ)はコレのことだったのか!」と、夜更けに何度叫んだことか! 先の展開を知っていても、やはり読んでしまうのは、この伏線と構成の妙を楽しめるから。

さらに寝かせてくれないのが、魅力的な登場人物だ。どれもこれも一筋縄でいかせてくれない。例えば、序盤にフィリッポスという怪しげな商人のオヤジが出てくる。知っている人ならその配役に目をむくだろうし、知らない人は正体を目撃して驚愕(きょうがく)するに違いない。そのため名前の付いている人物をうっかり検索してしまうと、そこから延々とWikipediaを徘徊することになる。

Wikipediaだけではない。ネットには、世界史の面白いところ「だけ」を選りすぐった良質なまとめサイトがある。例えば、世界史専門ブログ『歴ログ』や、『世界史講義録』がそう。『ヒストリエ』に関連するところだけでも膨大な量なので、読み始めてしまったなら、徹夜を覚悟した方がいい。

ネットだけではない。エウメネスが夢中になって読みふけったオデュッセウスの叙事詩はホメロスの『オデュッセイア』(岩波文庫)で追体験できる。また、歴史を考察した森谷公俊の『興亡の世界史 アレクサンドロスの征服と神話』(講談社学術文庫)を読めば、神話化されたアレクサンドロスを現実的に再評価することができる。徹夜明けに本屋に駆け込むことになるだろう。

もちろん歴史は全てネタバレだ。誰が、いつ、どうする(どうなる)かは書いてある。だが、「なぜ」それをしたのか、「どのように」したのかにドラマがある。そのドラマの配役を決め、時代考証を念頭に、そこに生きた人々を生々しく創造する。歴史ものが面白い理由はここにある。そして、この作者と歴史の虚々実々こそが、『ヒストリエ』の醍醐味(だいごみ)なのだ。

青春・ヒューマンドラマ・ファンタジー。あらゆる要素が凝縮されたSFファンタジー『ふたつのスピカ』

良いコミック・KT.
紹介者・KT./マンガと装丁の紹介ブログ『良いコミック』の管理人。それどこでは手軽に読める「2巻以内で完結するマンガ」に絞ったおすすめ作品を紹介。 ブログ / それどこ寄稿
柳沼行『ふたつのスピカ』(KADOKAWA/メディアファクトリー)
柳沼行『ふたつのスピカ』(KADOKAWA/メディアファクトリー)
執筆中の今、話題のドラマ『下町ロケット』(TBSテレビ)を見ながら紹介したくなった宇宙もの。宇宙ものといえば、すっきりまとめた名作『プラネテス』、打ち切られた名作『度胸星』、連載再開待ちの『MOONLIGHT MILE』、連載中の『宇宙兄弟』……と、面白い作品は多くあります。

しかし今回の「夜更かしマンガ」というテーマなら、「完結した長編作品」を紹介したい。そこで自信を持っておすすめするのが『ふたつのスピカ』です。

小さな体に真っ直ぐな強さを秘めた少女アスミを主人公に、宇宙学校で出会った少年少女5人が、共に支え合い成長していく青春群像劇です。物語はそれぞれの理由で宇宙飛行士を目指す5人の学園生活を中心に進み、時折発生する過酷で無茶振りな試験を突破しながら絆を深めていく様子が描かれています。

学園生活やいわゆる日常パートでは、夢を持った主人公たちをはじめ、さまざまな立場の大人たちについて、それぞれの想いを下地にしたセンチメンタルなエピソードを丁寧に描いています。そういう部分は少女漫画的、あるいは乙女チック。

対して、宇宙飛行士の候補たちをふるいに掛ける試験パートは、それらをひらめきや友情、根性で突破していく少年漫画的、あるいは熱い要素を含んでいます。

さらには主人公だけに見える宇宙飛行士の幽霊“ライオンさん”に象徴されるファンタジーのエッセンスも加わり、そういった種々の要素がうまく混ざり合い、男女どちらにもおすすめできる読みやすさを生み出しています

主人公の母を失うことになったロケット墜落事故など、いくつか重い設定が盛り込まれながらも、基本的に本当に悪い人は(ほとんど)登場せず、出てくる子供も大人も、その抱えている夢を応援したくなるような人たちばかり。そのため「それぞれの夢やいく道を見届けたい」という気持ちで次の巻、次の巻へと手が伸びることに。そして多くの出会いや別れに涙腺を刺激されながら、あっという間に16冊を読めてしまう、そんな作品です

こんな感じで紹介するために完結から9年、今回久々に読み返しましたが、何時の間に電子書籍版も出ていてクリック一つで読めるし、NHKで放送されていたアニメ版もクリック一つで視聴できる。いい時代になりました。

「桃園の誓い」で一緒に乾杯しよう。あらゆる人に読みつがれ、社会の骨肉と化す『三国志』

ヨッピー
紹介者・ヨッピー/ライター。家から一歩も出ないアウトドア遊びや、おいしすぎる「さわやか」のハンバーグを食べに片道100kmの道のりを自転車で走るなど、類を見ない果敢な企画でおなじみ! ブログ / Twitter / それどこ寄稿
横山光輝『三国志』(潮出版社)
横山光輝『三国志』(潮出版社)
僕の友人が飲み会の乾杯のタイミングで「我ら、生まれた時は違えども、死すべき時は同じなり~!」とやりだした。「あ、これいいな」と思った僕は、それ以来積極的にパクって、乾杯のタイミングでこれを言うことにしている。「何の話?」と思った人もいるだろう。『三国志』の話である。

この言葉は三国志の登場人物である劉備、関羽、張飛の3人が義兄弟になった時のものだ。「ワイらは生まれた場所も時間も違うけど、死ぬ時は同じ時に同じ場所で死のうやで」という3人の誓いの言葉である。「桃園の誓い」と聞けば「ああ、あれか」とピンとくる人もいるだろう。

30代以降のおっさん同士、くらいの集まりでこれをやると「おっ、三国志ですねw」などと盛り上がるのだけど、若い人たち、特に女性がいる場所でこれをやると「なんやねん殺すぞ」みたいな顔をされる。だから、読んでください。三国志を。マジで読んでください。僕は乾杯のタイミングで伸び伸びと「桃園の誓い」をやりたいのである

僕みたいなクズがこの「三国志」について「読め」と言ったところで、若い人なんかは「何を言ってるんだこの老い豚(おいぶた)は?」くらいにしか思わないのだろうけど、貴方が女性であれ若い世代であれ、三国志を読んだことがないのであれば、ぜひ一度、試しにTwitterで「マンガの三国志って、あれ面白いの?」とつぶやいてほしい。

そうすると「ジャーン! ジャーン!」とドラが鳴り響き、埋伏していた「三国志厨」が一斉に立ち上がって「マジで読むべきっすよ」「あれは名作です」「キングダム好きなら絶対ハマりますよ」「げえっ関羽」などと猛射してくるはずである。

三国志が好きな人はどこにでもいる。しかし「アテクシ、三国志が大好きでござい!」と激しくアピールする人はあんまり見ない。「ジョジョ立ち」をプロフ写真にしている人は居ても、「長坂橋の張飛の仁王立ち」をプロフ写真にしている人を見たことがない。

三国志は古い名作であり、あらゆる人に読みつがれ、もはや社会の骨肉と化しているからだ。要するに「今さら言うまでもないよね」という域にまで達しているのが三国志なのである。普段アピールしていないあの人だって三国志厨だし、三国志厨は目には見えないだけで本当にどこにでもいる。

三国志厨は時に公務員、時にサラリーマン、時に経営者に化けて社会に溶け込んでいるのだけど、ひとたび「ジャーン! ジャーン!」とドラが鳴り響くと一斉にスーツを脱ぎ捨て、甲冑に着替えて揚子江狭しと暴れまわるのである。

もう一度言おう。三国志厨は、目に見えないだけでどこにでもいる。社会の骨肉と化している。もし貴方がこの作品を読んだことがないのであれば読んでほしい。そして三国志厨の仲間入りをしてほしいのだ。僕は飲み会の席で「桃園の誓い」を伸び伸びとやりたいのである。

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皆さんはどの夜更かしマンガを選びますか? 年末年始はぜひ思う存分マンガを楽しんでください!

マンガ好きが厳選「2017年それどこマンガ大賞」もあわせてどうぞ!

srdk.rakuten.jp

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