それどこ

南極のオーロラを360度カメラ「THETA S」で撮ってみた

元・南極観測隊員の源泰拓さんが、360度の映像を撮影できる「RICOH THETA S」の魅力を紹介します。


「南極」と聞いて連想することの一つ「オーロラ」

その感動は「動き」と「広がり」にあります。


こんにちは、第57次日本南極地域観測隊員のみなもとと申します。

2015年から2017年にかけて、日本南極地域観測隊・越冬隊員として昭和基地に行き、日本を出発してから帰国するまでの様子をブログ「世間がもし30人の基地だったら」で紹介していました。
nankyoku-30nin.hatenablog.com


さて、冒頭で触れたオーロラ。

"せっかく南極まで来たのだから、何としてもオーロラを形に残したい"

そんな思いから、オーロラの揺らぎを捉えようと4K動画で撮影を試みたことがありました。しかし結果は今ひとつ。じゃあ、次は大きく広がったオーロラを写真に収めてみるかと、一眼レフカメラで撮影してみたものの、やっぱりどこか物足りず……。

何度トライしても思ったように捉えられないオーロラ。

もうダメかと諦めかけていたとき、「自分の目で見た様子をそのまま表したような、ぐるりと見回す感じ」を見事に再現してくれたカメラがありました。

今日はそんな新しい体験をさせてくれたカメラに関するお話です。

空いっぱいに広がるオーロラ

私が昭和基地に着いたのは2015年12月。このころは、太陽が沈まない「白夜」で、オーロラを見ることはできません。昭和基地に夜が来て、オーロラを楽しめるのは3月はじめから9月末くらいまでの半年間です。

オーロラは、太陽から吹き出た荷電粒子が地球に降り、それが高さ約400km(東京-大阪の直線距離くらい)付近にある大気にぶつかって出す光です。昭和基地は世界でも有数の「オーロラがよく見えるスポット」に位置していて、天気がいい夜にはほぼ確実にオーロラを見ることができます。

周辺に街の灯り(あかり)などがあるはずもなく、またオーロラ観測のために基地内の窓はすべてカーテンで覆われるので、夜は真っ暗です。特に気温がマイナス20度以下にまで下がる冬は、空気中の水蒸気もわずかなので、ありえないくらいに澄んだ空にオーロラを見ることができます。


一眼レフカメラで撮影した昭和基地の星空(2016年4月25日)

上の写真にあるようなオーロラは、あまり動くこともなく、雲との区別がつきづらいです。

太陽表面の爆発(フレアといいます)によって、大量の荷電粒子が地球に降り注ぐときは、ライトを持たなくても外を歩けるくらい明るく輝くオーロラが見られることがあります。

そんなときのオーロラは、活発に動きます。ゆっくりと漂うように動くことも、まさにカーテンがひるがえるように動くことも、さーっと波が伝わるように動くこともあります。

見渡すかぎり、空いっぱいに広がるオーロラがうねり、カーテンのひだが天の端から端まで、音もなく走っていくのを見ると、何か現実離れしているような気さえします。

オーロラを形に残したい

このオーロラの動きを形に残すことは、なかなか難しいものです。4K動画が撮れるカメラを使ってみましたが、感度を上げると画面がざらついて今ひとつでした。

せめて大きく広がったオーロラを写そうと、一眼レフカメラと魚眼レンズも持って行きましたが、こちらも今ひとつ。


魚眼レンズを装着した一眼レフカメラで撮影した幾重にも層になったオーロラ(2016年9月25日)

この写真のようにオーロラの構造を1枚に収めることができますが、それでも例えて言えば「窓からのぞいたような感じ」で、夜空を見上げる実感とはなんだかちょっと違う

そんなときにカバンから取り出したのが「RICOH THETA S」です。


南極に持って行ったカメラたち。手前の赤いカメラが魚眼レンズを付けた一眼レフカメラ、右奥の「みなもと」というラベルが貼られたものが「RICOH THETA S」です。一眼レフと比べると、かなり小さいボディです

このカメラはシャッターボタンを1回押せば360度の映像が撮影できるというもので、「撮影感度も調整できるから、暗いところでもそれなりに撮れるだろう」と、日本を離れる前に知り合いから勧められたのでした。

product.rakuten.co.jp


一眼レフカメラに比べると小さく、軽いので、正直なところ半信半疑だったのですが、モノは試し。30秒おきに自動撮影するように設定したら三脚に固定し、そのまま屋外にしばらく放置します*1

このTHETA Sは180度の画角を持つレンズを2枚内蔵しており、それそれが同時に180度の写真を撮影し、それらを合成することで360度全方位の画像を作ります。その画像がこちら。


THETA Sで撮影したオーロラ画像

そして、専用のアプリを使って、この画像をぐりぐり動かしたり、回転させたりできる360度の映像が作れるというわけです(詳しい使用方法は、公式サイトに取扱説明書が公開されているので参考にしてみてください)。また、公式サイトにアップすれば、ぐりぐり動かせる映像を共有できます。

さて、私が実際に捉えたオーロラの映像がこちら。

May 6, 2016, at Syowa station, Antarctica - Spherical Image - RICOH THETA
映像がうまく表示されない方はこちらからご覧ください

これはいい!

ぐりぐりと視野が動く感じが、空をきょろきょろと見回す感覚をよみがえらせます。まさに活発なオーロラで覆われた夜空を見上げるときの、「オーロラの中に居るような感覚」をディスプレイ越しに追体験できます。

Aurora at dusk on September 28, 2016, at Syowa station, Antarctica. - Spherical Image - RICOH THETA
たそがれ時のオーロラ360度画像(2016年9月30日)。映像がうまく表示されない方はこちらからご覧ください

こちらの映像は暮れきる前に撮影したものなので、残照とオーロラを同時に楽しめます。私が撮った他の映像はこちらからご覧いただけます。

期待をはるかに超えた体験

南極にいたときは毎日ブログを更新しており、そのブログにもぐるぐると見回しているイメージを貼り付けて、日本の皆さんにこの臨場感をお届けしていました。実際に使ってみると

  • 青いLEDの電源ランプが写真に写り込んでしまうので、アルミテープを貼るなどの対策が必要

などの気になる点もありましたが、そんなことは些細で、期待をはるかに超えた映像に心奪われました。

オーロラの他にも。南極を体験できる360度映像

もちろん、普通の風景もぐるぐる回すと楽しいものです(普通と言っても南極ですが)。

Aurora over snow drifting on September 4, 2016, at Syowa station, Antarctica - Spherical Image - RICOH THETA
南極大陸の360度地平線(2016年10月21日)。映像がうまく表示されない方はこちらからご覧ください

こちらは昭和基地から20kmくらい離れた「S16」という観測拠点で撮りました。どこまでも続く白い雪面と青い空が、世界を二分するところです。

Aurora over snow drifting on September 4, 2016, at Syowa station, Antarctica - Spherical Image - RICOH THETA
アデリーペンギンの繁殖地(2016年12月3日)。映像がうまく表示されない方はこちらからご覧ください

昭和基地の周辺の島にはアデリーペンギンが巣を作るところがあり、その個体数の調査も越冬隊の仕事の一つです。この時期は卵を温めてはいますが、ひなはまだ見られませんでした。

日常生活でも楽しめる「THETA S」

帰国してからも、散歩の際に撮影してみました。その場に立っているような臨場感を体験できるので、いつもの写真もTHETA Sに変えるだけで立体的になって違う面白みが出てきます。

Aurora over snow drifting on September 4, 2016, at Syowa station, Antarctica - Spherical Image - RICOH THETA
2017年12月の東京タワーのイルミネーション(Licensed by TOKYO TOWER)。映像がうまく表示されない方はこちらからご覧ください

これまで写真といえば、「四角形の枠の中に写したいものを配置して絵をつくる」ような感覚を持っていました。でも、南極で視界いっぱいに広がるオーロラや見渡す限りの雪原と青空を見たときに、そうした枠をとっぱらって全てを撮影したい、と思ったのでした。

THETA Sはまさに枠なしで、撮影者の周りにあるものすべてを撮影して、上下左右に見回すことを追体験できるカメラです。例えて言えば、「ポケットからプラネタリウム」。ドラえもんのひみつ道具にありそうなカメラです(そういえば、私が日本を留守にしているあいだにドラえもんが南極に行っていましたね)。

カメラ体験の可能性が広がる「THETA S」

今回は南極での撮影例を中心に紹介しましたが、他にも日常で楽しめる方法がありそうです。例えば、

  • パーティーで参加者が輪になり、自撮り棒を使ってみんなの顔が写った記念映像を撮る
  • 遊ぶ子供の姿を周りの様子と一緒に記録し、躍動感ある映像を作る
  • ドローンにぶら下げて飛ばし(その場所の規定に従う)、空中から見下ろしたような映像を撮影する

など。実際にこういった面白い映像を撮影している人を見かけます。まだまだ知らない楽しみ方がありそうですね。

product.rakuten.co.jp

私に新しいカメラ体験をもたらした、THETA S。「自分の目で見た様子をそのまま表したような、ぐるりと見回す感じ」を再現したいときに、ぜひおすすめです。

著者:源 泰拓(みなもと やすひろ)

源 泰拓(みなもと やすひろ)

第57次日本南極地域観測隊員。2015年12月に日本を出発して、昭和基地で南極の冬を過ごす。2017年2月1日に次の隊と交代、3月に帰国。同年4月から東京学芸大学自然科学系専門研究員として、博士号取得を目指して研究中。
ブログ:世間がもし30人の基地だったら
リサーチマップ:源 泰拓 - 研究者 - researchmap

今回紹介した商品

product.rakuten.co.jp

*1:私はマイナス20度ほどの酷寒(こくかん)の中で使用しましたが、THETA Sの使用温度範囲は0度~40度、保存温度範囲はマイナス20度~60度とされています。南極でも撮影はできましたが、やはり推奨の範囲で使用されることをお勧めします。

社会的責任[CSR]