それどこ

ロードレース実業団選手の私が振り返る、自転車沼の奥深き世界

なにかと注目のロードバイク、一体何が必要になるの? 実業団で走るほどにロードバイク沼に堕ちたブロガー「ITさん」のお買い物遍歴から、ビギナーが手に入れておきたいアイテムを学びます!

「○○沼」という言葉をよく見聞きします。私の周りにも「ソシャゲ沼」や「アイドル沼」など……沼に堕ちた友人は何人か存在します。

ただ、やっかいなことに、当の本人たちはそれらの沼にズブズブ……と沈んでいることなど、まったく気づいていない様子。実は私がこの記事を書いている途中で深い沼へ沈んでいることに、今気づいたくらいですから……。私のはまった沼の名前は、

「ロードバイク沼」

申し遅れました。私は「ITさん」なんて愛称で呼ばれていて、普段IT企業でエンジニアをしつつ、その他の時間の大半をロードバイクに捧げています。その様子は『IT技術者ロードバイク日記』というブログに記しています。

さて、私がどのくらい沼に堕ちているのかというと、実業団に所属してレースに出るために、全国各地に出かけるくらい、です。こんな書き方をすると、なんだか手の届かない世界の話と思われるかもしれません。

しかし、ロードバイクを含む、自転車でスポーツすることの楽しみは、レースだけではありません。私自身、「ただ爽快に走りたい」というだけの理由で自転車の世界に足を踏み入れました。ここからは、自転車・ロードバイクに乗り始めてから、今に至るまで、私が購入してきた数多くの自転車やパーツのなかから、思い出に残るアイテムを振り返りつつ、徐々に沼にハマっていく過程をみなさんにお届けしたいと思います。私の沼が、みなさんのお買い物の参考になれば幸いです!

まずは、沼の存在など知りしもしなかった初心者時代から……。

「かわいいもんだ」な初心者時代


当時の写真が残っていないので、代わりの写真ですが、これがクロスバイク。フラットバーと細いタイヤで、軽快に街を走れます。

「自転車」というから連想するのは、多くの場合、いわゆるママチャリでしょう。ただ私は、もっとスピードが出るロードバイクという自転車に惹かれました。街を軽快に走り抜けるあの"ロードバイクなる自転車"に乗ってみたいと思ったのが、全ての始まりです。ただ、あのグニャリと曲がったカマキリの手のようなハンドルがどうもとっつきにくくて、初めに購入したのはクロスバイクというタイプの自転車でした。

クロスバイクのハンドルは、フラットバーと呼ばれる一文字タイプです。それでいて、タイヤはロードバイクで使われているような幅の細いタイプが使用されています。代表的なクロスバイクといえば、GIANT社のエスケープというシリーズのモデルで、街でよく見かけます。私も例に漏れず色々と検討した結果エスケープを買おうとしました。が、驚いたのはその値段です。

お値段、50,000円……ッ!

お手頃なママチャリ5台分にも匹敵する値段に正直引きました……。
「自転車なんかに50,000円も出せるかいな!」と最初は思ったものです。ただ、ママチャリでは得られない軽快感と、友人のクロスバイクを借りて乗った時のあのスピード感が忘れられず、思い切って購入したのです。

今振り返れば、あれが全ての始まりだったわけです。しかし、その時点ではもちろん知るよしもありません。

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長距離走って分かった、必要なモノ

クロスバイクは5万円“も”しましたが、実際に乗り始めるとその爽快感から、さまざまな場所に行くようになったのです。次第に1日に走る距離が50km、100km、150kmと伸びていきます。

なお、東京〜箱根を往復すると、直線距離で約150km。何やらとんでもない距離に聞こえますが、いざ走り出してしまえば、意外と走り抜けてしまえるものなのです。これが、スポーティな自転車のすごさであり、面白さです!

そして、ある程度の距離を走れるようになると、ママチャリでは必要なかった、さまざまなパーツやアイテムが必要であることに気づきます。クロスバイク購入とともに、まず手に入れたのはライトです。初めに手に入れたのは値段も手頃なCATEYEのフロントライトです。そもそも無灯火走行は違法ですが、遠くへ走りにいくと帰りは日が落ちて暗くなってしまうことも多く、ライトの必要性は非常に高いのです。


CATEYEのライト。テールライトもお忘れなく。

クロスバイクにはママチャリのように初めからライトが備え付けられていません。CATEYEのライトは2,000円程度〜で購入することができますが、お手頃ながらフラッシュのように点滅したり、光量を調整できたりと、なかなかの機能が備わっていました。そして、安全に走るためには後ろから近づく車両に自分の存在を知らせるテールライト(自転車の後ろにつけるライト)も欠かせません。

これで遠くへ走りに行って帰りが遅くなった夜道でも安心です。

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さらに、長距離を走ると誰しも経験するのはタイヤのパンク。出先で不意にパンクした場合、修理は必須です。

その際にパンク修理キットを使用して空気を入れるわけですが、家庭用のスタンドポンプ(空気入れ)は当然持ち運びできません。そこで、携帯ポンプの存在を知りこちらも購入しました。

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そしてもう一つ、長時間自転車に乗るためには、水分補給が不可欠です。初めは自販機を見つけてはペットボトルのドリンクを買い、ボトルケージ(飲み物のケースを自転車に固定しておくパーツ)に固定していました。しかし、飲みたいと思った時にいちいち自転車から降りて、キャップを開けて、飲んで、を繰り返すのは面倒です。私の物欲は、次はボトルに向いたのです。

自転車用のボトルは便利な構造をしていて、キャップ部分を引き上げた時だけ中身が飲め、キャップを押し込むと中身が漏れないというすぐれ物です。数あるボトルの中で、使いやすいのはなんといってもCamelbak(キャメルバック)の「ポディウム」シリーズです。迷ったらこのボトルを一度使ってみてください。

ポディウムの特徴は、キャップ部分を引き上げて飲む必要がないことです。飲む際は、ボトルをギュッと握るだけでOKです。それでいて、逆止弁のような構造を備えており、逆さまにしてもボトルを握らないかぎりは中の液体が漏れないようになっています。


ご覧のように、ギュッと握ったときだけ液体が出て、便利です。

自転車に乗りながら水分補給するためには、少しでも手間がかからない方がいいものです。その点、このポディウムは最小の手間で飲料補給ができて便利なのです。

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なくてもいい……のに買ってしまったマップとサイコン

ある程度の距離を走れるようになると、さまざまなところへ出かけてみたくなります。クロスバイクに乗っていた当時は今のようにスマホなんて便利な物はなく、個人が使えるGPS端末すらない時代だったので現在地も分かりません。私は当時東京に住んでいましたが、まずはサイクリングロードが掲載されているサイクリングマップを購入しました。そしてもう一つ、ある感動のアイテムと私は出会うのです。

サイコン、最高かよ

クロスバイクに乗るようになって感動したことは、爽快感、それと、走っているスピードを測定できるようになったことでした。スピードメーターと当初呼んでいたのですが、どうやら世間ではサイクルコンピューター(以下、サイコン)と呼ぶほうが一般的のようです。当時、このサイコンは憧れの存在だったのです。

初めて購入したサイコンはライトと同じくCATEYE製でした。現在では無線タイプのサイコンが主流ですが、初めは手軽に購入でき、簡単に取り付けられるタイプ(ママチャリにも付けられます!)を選びました。サイコンはスピード計測機能以外にも、1日の走行距離や、1ヶ月の走行距離、ケイデンス(クランクの回転数)などの数値を計測できます。


当時買った物とは異なりますが、これがサイコンです。スピード、走行距離はもちろん、心拍数を計測できるモデルもあります。

このサイコンを取り付けた時の感動は忘れられません。スクーターや車のように自転車でもスピードを知ることができるわけですから。乗っているだけでも楽しく、1日50km、70km、100kmと、どんどん走る距離が増えていったのもこのころです。サイコンというただの計測機ひとつで、自転車から得られる情報が飛躍的に増え、自転車に乗る体験は劇的に変わっていきました。

「1日の走行距離が100km超えた!」や「月に1,000km乗った!」と、自分の運動が定量化されるのは、自転車に乗るためのモチベーション維持に効果があったと思います。

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徐々に増えていく、装備群

長距離を走るようになると、多くのローディ(ロードバイクに乗っている人)と出会います。ある日、河川敷の休憩所で休んでいると、何人かのローディが目に入りました。

彼らはロードバイクから降りる際に、なにやら靴底に固定された金具のようなパーツを「バチン」と外しています。それはどうやら、足とペダルを固定するビンディングペダルというパーツと、専用シューズのようでした。

とうとう私は自転車と一体化した。ビンディングペダルとの出会い

好奇心をおさえられず、お店でビンディングペダルについて教えてもらうと、どうやらペダリング(自転車をこぐこと)がとても楽になるのと、足の力がペダルに伝わる効率が向上するということを知り、その場でペダルとシューズを購入することに決めました。


靴の裏側に付いている黄色い爪のようなパーツがクリート。これで靴をペダルと固定するのです。

ビンディングペダルにはさまざまな種類がありますが、初めは使用率の高いシマノのSPD-SLを選んでおけばまず問題ありません。ビンディングペダルにはさまざまな規格がありますが、SPD-SLは特にユーザーが多く、他の人のバイクを借りても乗れるというメリットがあります。私が最初に購入したのもこのSPD-SLです。

ところが、ビンディングペダルを実際に使ってみると、足がペダルに固定されるということが予想以上に怖いのです。ビンディングペダルを使い始めてまず誰しもが通る試練といえば、停車時にビンディングが外れずにコケてしまう「立ちゴケ」です。私も初めはビンディングがうまく外せず、結構コケてました。


足を外すには、こうした作業が必要になります。

道路で転ぶのは危険なので、公園で何度も外す練習をしたのを覚えています。ビンディングペダルの怖さを克服した先には、今まで経験したことのないスピードで自転車を進んでいくという、新しい発見があったのです。今ではビンディングペダルなしで乗ることなんて考えられませんが、この感動は自転車好きならば誰しもが通る道です。

さて、ビンディングペダルとビンディングシューズを手に入れると気になってくるのがウェアです。私は、初めのころTシャツに短パンという格好でしたが、これがビンディングシューズとはなんともアンバランス……。次なる物欲が湧いてきた私は、サイクルジャージとレーシングパンツ(通称レーパン)を物色すべく、またライド帰りにサイクルショップに立ち寄ることに……。

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レーパンの下はノーパン……!


完成版の筆者です。ご覧の通り、ウエアは体にぴったりフィット。

サイクルショップにいくと、ずらりとそれっぽいジャージが陳列されています。中にはジャージやレーパンだけで数万円なんて物もザラです。普段着はユニクロなので、1万円を超える衣類(しかもロードバイク乗るときにしか使えない!)の値段は正直信じられませんでした。

が、店員さんに話を聞くとサイクルジャージには多くのメリットがあるとのこと。まず体にピッタリとフィットして空気抵抗が低減されることや、バックポケットと呼ばれる背中のポケットに補給食や財布を入れられるなど、自転車に乗ることが考慮された機能が詰め込まれています。

初めて購入したのはパールイズミという、日本の大手メーカーのジャージでした。値段もお手頃で、国産という安心感が一番の決め手です。海外メーカーのジャージもオシャレで良いのですが、サイズが海外の人を想定しており、表記通りのサイズでは日本人には合わないことも。

その点、パールイズミなら安心してサイズを選べますし、日本のメーカーらしいきめ細やかな裁断、仕立てが魅力です。ジャージを手に入れると、レーパンも一緒にそろえたくなります。ただ、このレーパンはちょっと不思議な構造をしています。


レーパンとはこんな作りなのです。

このようにビブ(肩ひも)が付いた構造で、さらにお尻にはパッドが入っています。ベルトや腰ひもでお腹を圧迫せず、かつ、サドルに長時間乗っていてもお尻が痛くならないというこの構造は、自転車に楽に乗り続けるために考えられた構造です。ビブなしパンツも安くてよいのですが、やはりおすすめはビブ付きパンツです。

が、使用方法に少し抵抗がありました。なぜなら、ビブパンツの下にはパンツをはかないのです。ようはノーパンです。

今となっては何ら違和感はありませんが、当時はそのピッタリとした着圧感と「ノーパンでレーパンをはく」という行為に相当な抵抗がありました。しかし、一度使えばその素晴らしさがわかります。レーパンをはいていれば、長時間乗っていても疲れを感じません。

レーパンはノーパン。覚えておきましょう!

さて、ジャージとレーパンを買って終わりだと思いましたが、私の目は、見てはいけないグローブコーナーへ。人間とは不思議なもので、全て同じブランドで統一したいという欲望が湧いてきます。というわけでなかば無意識のうちにグローブもレジへと……。

なぜサイクリンググローブは指切りなの? 京極夏彦なの?

グローブはあまり重要ではないと思っていたのですが、長時間ハンドルを握っていると、まるで正座をしている時の足と同じように、ビリビリと手がしびれてきます。そのため、サイクリング用のグローブには手のひらにクッション性がある物が多いのです。

ここでもやはり、パールイズミのグローブが一番しっくりきます。ただ不思議なことにスポーツサイクリング用のグローブは、オープンフィンガーグローブという指が出るタイプが主流でした。


こちらの写真はパールイズミ製ではありませんが、なぜサイクリング用グローブはオープンフィンガーなのか……。

後で分かったのですが、ロードバイクでは、独特なシフト操作やブレーキ操作方法が求められるのです。つまり微妙な指先での操作は、布越しではなく指先でダイレクトに操作する方が合理的です。こうして、サイクリング用のグローブはオープンフィンガーが主流になったのでしょう。ただ、どう見ても「京極夏彦」です

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ビンディングシューズ、ペダル、ジャージ、レーパン、グローブなどなど……雪だるま式に増えていくアイテムを振り返ると、「あと、何をどれだけ買えばいいんだ?」と少し恐ろしくなりましたが、あれこれ買い物に悩んでいるときが一番楽しい時間でもあるのです。さて、ある程度そろえて大丈夫かな、と安心していたのですが、とても大事な物を忘れています。

そう、頭部を守るヘルメット!

ヘルメットは絶対に必要!

ヘルメットはロードバイク、どころか自転車全般に乗る際の必須アイテムで、半ば義務と考えていいでしょう。というよりも安全に走るために、自分の身を守るために絶対に必要な物です。転倒時、ヘルメットは“それ自体が割れる”ことやヘコむことで頭部に与える衝撃を和らげてくれます。アスファルトに頭を叩きつけられて大怪我、などという不幸を避けるためにも、自分の頭にしっかりとフィットしたヘルメットを選ぶのが大事です。


過去所有してきた、OGK KABUTOのヘルメット。なお、製品ブランド名は「KABUTO」ですのでお間違えなく。

私は日本のOGK KABUTOの物を使用してます。日本人の頭の形状の場合、やはり日本製の同社の物が最もフィットすると思います。私が当時購入したモデルはすでに廃盤になってしまいましたが、現在は、AERO-R1というモデルを愛用しています。軽く空気抵抗も少ないのでとても重宝しています。もし迷ったらOGK KABUTOのヘルメット、とオススメしておきます。


こちらが現在使っているAERO-R1。エアロ形状のヘルメットの中でも特に軽量で、値段も比較的安いのがポイントです。

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かくして、買うつもりがなかった物まで買い込み、入手したアイテムを身に着けいざ走り出すと、今までと違った気持ちで走れます。ウエア類は身体に密着して、空気抵抗も少なく走りやすく、何より“それっぽい”感ビンビンです。そして足を追従するビンディングペダルがもたらす、未知の加速感。ヘルメットの安心感。「ああ、なんか、いい。結構お金は使ったけれど、とってもいい」と十分満足のいくものでした。

さて、これだけでも装備としては十分なのですが、実はまだ沼の入り口にしかすぎません。クロスバイクを乗り込んでいくうちに、ロードバイクのドロップハンドルを使ってみたいという欲求が生まれてくるのです。「あの自転車に乗れば、私はもっと遠くに、もっと速くいけるのでは」と。そして、終わりのない沼へとズブズブと沈んでいったのです……。

【おすすめワザ】タイヤを変えると走りが変わる

手軽にパーツ交換の醍醐味を楽しむなら、おすすめはタイヤ交換です。なぜなら、費用対効果が非常に高いから。タイヤの違いは走りに大きく影響します。自転車に最初に着いているタイヤは、廉価版タイヤの場合が多いので、ちょっといいタイヤに変えると、その効果はバッチリ体感できます。

おすすめは、Continental(コンチネンタル)社のGRAND PRIX 4000S IIというタイヤです。パンクも少なく、走行可能距離はだいたい5,000〜6,000kmと摩耗にも強い。そしてよく転がる! 1本の値段はお店によってかなりばらつきがありますが、約7,000円と少々高価……。しかし、パーツ交換の効果を体感するなら、購入するだけの価値があるタイヤといえます。

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金銭感覚崩壊! 禁断のロードバイク沼の奥底へ

クロスバイクに乗った時の感動は忘れられません。しかしいつしか刺激に慣れ、クロスバイクに飽きてきている自分がいました。

ポイントになったのは、かつて嫌いだった「ドロップハンドル」。ドロップハンドルならば乗車姿勢を低く保て、なにより見た目に漂う「それっぽい感」がカッコイイわけです。そんな妄想をしていると、「じゃあ、クロスバイクにドロップハンドル付ければいいじゃん」案が生まれ、またショップへと向かうことに……。


ドロップハンドルとはこんな形状です。昔はこれが嫌だったのに……。

ショップでは、さまざまなハンドルが売られています。ただし値段も結構するのです。そしてドロップハンドル専用のシフター(変速機)とブレーキが一体化されたパーツも必要になり、それなりの出費が必要です。

「それなら……この際ロードバイクの完成車を買ってもいいかな……」

こう考え始め、いよいよ沼の危険域が見えてきたのです。完成車とは、フレーム、ホイール、ギアといった部品が全て含まれている、「これを買えば、もう走れる」という文字通りの完成された(というけど、ペダルは大体付いてない)1台。もちろん憧れのドロップハンドルも付属していますが、当然値段は高くなります。

ロードバイクの完成車の高いこと高いこと……。いまでこそ、お手頃なロードバイクも手に入りますが、当時はかなり安いモデルでも10万円以上です。そして、お目当てのカーボンフレーム(非常に軽量)の完成車にいたっては、お値段はもっと……。

普段乗るママチャリでも9,800円の物と12,800円の物、どちらを買うか迷うのに、ロードバイクにこんな大金出せんわ……と思ったのが正直なところです。「車重こそ重いものの比較的手頃なアルミフレームモデルでもいいかな?」と思ったのですが、アルミの完成車でもお値段は15〜20万円といったところ。

「この価格では、ロードバイクはすぐには買えん」と渋々あきらめ、まあ、目の保養でカーボンの完成車見ておくか、と思い売り場に足を踏み入れたが最後でした。キラキラと輝く美しい塗装を施されたフレーム、精巧な変速機……いかにも速く走れそうです。そしてなにより、持ち上げてみると、とんでもなく軽いのです。アルミのクロスバイクを持つと「んっ、しょ」という感じですが、カーボンならば片手で持ち上げられるほどです。「これで急な坂も登れるなぁ」と期待はマックスです。


比較的最近に入手したカーボンフレーム。カーボンはとにかく、軽いです。

しかし、問題はそのお値段。カーボンフレームの完成車の相場はエントリーグレードですら20〜20万円台後半。ミドルグレードが30〜40万円ほどです。「さすがにこれは無理。いや待て、どうせ買うならいい物を……。いや、さすがにこれは無理。いやま……」

気がつけば、カーボンフレームの完成車の支払いをしている自分がいました。型遅れの旧モデルながらグレードの高いギアが付けられた、30万円のカーボンフレームの完成車を買ってしまったのです。


かくして入手した人生初のロードバイク。RIDLEY(リドレー)社のダモクレスというモデルです。

今ならば「ロードバイクの相場? まあ30万くらいなら普通かな」と感じますが(もちろん、一般的には理解不能)、このカーボンの完成車を買った瞬間こそ、「金銭感覚の限界」を突破した瞬間でした。が、越えてはいけないハードルを越えたにもかかわらず、その先に待っていたのはさらに深い「ロードバイク沼」でした。

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そして、ロードバイクは趣味を越えた


私のロードバイク沼は、だれでも乗れるようなクロスバイク1台から始まりました。初めはママチャリとの違いに感動し、乗っているだけで楽しかったのです。ガソリン代もかからず、健康にも良い、そして今まで行ったことのない所へ連れていってくれる、三拍子そろった趣味でした。

が、カーボンの完成車を買って以降、速く走ることが楽しくなってきたのです。やがて、私は大会に出るようになっていきました。初めてエントリーしたのは、ただ坂を登るだけのレース、いわゆるヒルクライムの大会です。その大会で衝撃的だったのは、自分の親と同じくらいの年齢のおじさんたちが、自分よりもはるかにタイムが良いという事実でした。

こんな経緯もあり、「もっと速くなりたい」と考えだした私は、2008年ころから大阪のサイクルショップが定期的に開催している朝練に参加してみることに。それからいくつかのレースを経て、お誘いを受けて実業団で走るようになり、今に至ります。が、振り返ってみれば、ここからが本当のスタートだったのです。

実業団で走って見えたこと


現在のチームメイトと。

一見個人競技に見える自転車ロードレースですが、チームで協力してレースを走ることも多いのです。個人成績も重要ですが、年間チーム総合成績を争うなど、チームとしての強さも求められ、戦略も勝敗を分ける競技です。

1つの目標に向かいチームが一丸となって切磋琢磨しあえる環境は、仕事以外ではなかなか経験できないことです。組織として、苦楽を共にしながら競りあえる競技、こんな要素が私にとっては何にも代えがたい魅力なのです。

実業団チームは数多くありますが、その目的は言わずもがな、年間総合優勝です。私が所属していたチームの目標もそうでした。幸運なことに2011〜2013年、全日本実業団自転車競技連盟のJ-ELITE TOURというカテゴリーでチーム年間総合優勝を果たせたのです。

今は新たに立ち上がったチームで、身近な仲間たちと日々レースを走っています。まだ設立1年目で目立たないチームですが、もう一度優勝を目指して練習に励んでいます。関西圏で興味がある方は、ぜひ一緒に走りましょう。

クロスバイクから始まり、気づけば実業団と、思えば遠くへ来たもんだとしみじみ思います。しかし、今でもこの沼には終わりがないと感じています。50歳を超えるチームの監督にいまだにスプリントで勝てないですし、自分よりもずっと年上の選手にも相変わらず勝てないからです。

ただ、自分よりもはるかに強い人たちの中に身を置いて走るということは、本当に自分を成長させてくれます。つらいトレーニングを行うことで自分がどこまで強くなれるのか、自分自身という存在もまた、自転車を進ませるための1つの機材なのですから。

ここまで紹介してきた自転車機材たちはお金を出せば買えます。が、自転車を進ませる「自分自身というエンジン」はお金では買えません。私自身を機材に見立て、エンジン性能を上げられるかという、終わりのない挑戦自体が、もしかしたらロードバイク沼の一番の魅力なのかもしれません。

著者:ITさん

ITさん

ブログ「IT技術者ロードバイク日記」の中の人。実業団E1、シクロクロスC1、トラックも走る。 そしてIT系エンジニアだったりするが、最近何が本業なのかよく分からない。
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