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自家製麺は簡単にできる! 料理好きの友人を「製麺沼」に落とすプレイで実証してみよう

じわじわと話題(?)になっている「自宅製麺」。沼にズブズブハマっている家庭用製麺機愛好家の玉置標本さんが、仲間を増やすべく友人を「製麺沼」に落としてみました。

はじめまして、家庭用製麺機愛好家の玉置と申します。どのくらい愛好家なのかというと、『家庭用製麺機 USER GUIDE』という同人誌を作ってしまうくらいです。あ、家庭用洗面器じゃないですよ。

過日は恥ずかしながら、「ヴィンテージ製麺機」のマニアとしてタモリ倶楽部に出演させていただいたので、観ていただいた方もいるかと思います。

製麺機、楽しいんですよ。歯車やロボットが好きなら絶対にうっとりする、クラシカルかつ力強い無骨な機械の造形美。その手ごたえが気持ち良い手回し式のハンドルを回して、うまい麺を生み出す快楽たるや。私も友人が持っている製麺機に触れて、そして麺を食べて、すぐに購入を決めました。

今回は男の料理の定番ともいえるカレーや燻製を趣味にしている友人を、こちらの製麺沼に引きずりこむことで、皆様に知られざる製麺の世界をご案内させていただこうと思います。

家庭用製麺機ってなに?

まず家庭用製麺機とはどんな道具なのかを、ざっと説明させていただきます。

私も製麺機と関わるまで全く知らなかったのですが、昭和の初めごろから終わりくらいまで、小麦の産地では自宅で打ったうどんを週に何度も食べている家がたくさんありました。群馬の「おっきりこみ」や山梨の「ほうとう」など、小麦を使った麺状の郷土料理もたくさん食べられていました。お米が高級品だった時代の話です。

これが群馬県民が愛する「おっきりこみ」です。

そこで日々のうどん打ちという家事労働を軽くするために登場したのが、我らが家庭用製麺機です。その名の通り、家庭用の製麺をする機械なのです。

はい、現物はこれです。

ほら、かっこいい。これは埼玉県戸田市の小野機械製造所の名作、小野式製麺機1型両刃型というモデルで、鋳物(いもの)でできたボディは頑丈そのもの。真鍮(しんちゅう)の切刃とローラーの怪しい輝きに魅了されざるを得ません。

もともとはうどん、あるいはそばを製麺するための道具ですが、近年は水分の少ないラーメン用の中華麺が作れることから、一部の自作ラーメンマニアから熱い支持を集めています。ほんとに一部ですけど。

どんなに硬い生地でも伸ばすことができ、どんなに厚い麺帯(帯状にした生地のこと)でも麺にすることができるのです。力強いったらありゃしない。宮沢賢治じゃないですが、こういう人に私はなりたい。

某二郎的なラーメンも自宅で制作できるかもしれません。スープや具は製麺機では作れませんが、それはまあ気合でどうにかなります。大丈夫。

麺であれば、うどん、パスタ、そば、ラーメンなど、材料の配合次第でだいたいできます。さらに切る前の麺帯を使うことで、餃子やピザなんてものも作れます!

これまでに製麺(?)してきた料理の数々

そんな魅力いっぱいの家庭用製麺機ですが、車に様々なメーカーや車種があるように、過去にはたくさんの種類が発売されていました。

斜めに噛み合うヘリカルギアでおなじみの、田中機械製作所の田中式製麺機。

すらっとした一本足と赤い歯車が印象的な、宝田工業の宝田式製麺機。

カキ氷削り機のような丸ハンドルが力強い、永井機械製作所の永井式製麺機。

やっぱり、かっこいい。とても丈夫な道具なので、状態の良いものを手に入れれば30年以上は長持ちします。そのため一台あれば十分なのですが、なぜか家には何台もあります。いや何十台か。人呼んで製麺機マンション

ちなみに入りきらなくなって増築したので、マンションは2棟あったりします

料理好きの友人を製麺沼に落としてみよう

今回、そんな楽しくも恐ろしい製麺沼に落とそうと声をかけたのは、『晩酌が俄然楽しくなる超・時短燻製121』という本を編集するほど燻製好きである、キンさん。

このキンさんは燻製だけではなく、謎のスパイスを山ほどそろえているカレーマニアでもあります。

キンさん:カレーはゴールのない、終わりない旅なんですよ。ようやく自分のスタイルが分かってきて、ここからどこへ向かうんだろうという段階ですね!

ゴールが見えないのは製麺も同じですよ。

キンさん:麺は……買った方がおいしいんじゃないですかね。製麺ってカレーだったらライスやナンにこだわるみたいな話でしょ? そこまで気合を入れて打つ意味ってあるんですか? そばならともかく、ラーメンで麺を意識したことすらないなー。ほら乾麺とか、出前のラーメンが好きだし。

おいこら。いやいやいや、燻製やカレーにハマっているキンさんなら、製麺の楽しさと奥深さにもすぐに気が付いてくれることでしょう。小麦粉の種類もスパイスに負けないくらいありますよ。ただし業務用の粉は一袋25キロですが。

今回は製麺の入門編ということで、その楽しさを誰にでも体験していただけるように、肝心の道具は上記で紹介したような鋳物の家庭用製麺機ではなく、新品が簡単に手に入るパスタマシンを使用します。

「今日のところはお前に任せた」と、パスタマシンの肩をポンポンする小野式製麺機。使わないけど自慢用に持ってきました。小野式製麺機1型片刃型のプラハンモデル(ハンドルがプラスチックのもの)です。

中華麺の生地を作ろう

まずはラーメン用中華麺の生地作りからやっていきましょう。この工程では製麺機は役立たずなので、全部手作業になります。

材料ですが、小麦粉の種類にこだわるのは今後の楽しみにとっておくとして、どこでも買える一般的な強力粉を使いましょうか。今回は製麺沼といっても、干潟くらい浅い場所を歩きますよ。

分量は3玉分で、粉が強力粉を300グラム。そこに加える水分(打ち水)は、水120グラムに塩3グラムと粉末かんすい3グラムを溶かしたもの。

「かんすい」ってなんだよっていう話なのですが、簡単に説明すると炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどのアルカリ性の添加物で、楽天市場でも購入できます。これを入れることで中華麺らしいコシと色が生まれるのです。かんすい選びも沼要素が高いので要注意!

小麦粉に打ち水を少しずつ加えながら、力を入れずにオカラ状になるよう混ぜていきます。私は指示を出すだけで、全部の作業をキンさんにやってもらいます。

押さない、握らない、固めない。それがコツ。この作業を「水回し」といいいます。このとき、ボールはでかければでかいほど使いやすいです。

どうですか。無心になれませんか?タマネギを飴色になるまで炒めるのに似ていませんか?

キンさん:うーん、原稿の締め切りを考えちゃって、無心になれないですね。パサパサだけど、これ本当に麺になるんですか? タマネギはスマホ片手に炒められるけど、これは両手がふさがるのがちょっとなー。

はいはい、すみませんね。そのうち全体に粉っぽさが消えて、水分を含んで生地が冷たくなってきますよ。

キンさん:あ、本当だ!冷たくなった!生パン粉みたいだ!

ほら、ちょっと楽しくなってきたでしょう。

15分ほどがんばっていただいたものがこちら。ちなみにフードプロセッサーを使うと、水回しは一瞬でできます

フリーザーバッグで麺帯を作ろう

これを麺帯にするのですが、ここで超簡単なやり方を伝授します。あ、明太子じゃないですよ。

ラーメン用の麺は、うどんなどに比べて水分が少ないので手だけでまとめるのは難しいんです。適当なサイズのフリーザーバッグに入れて、グイグイと押し固めましょう。空気を抜かないといけないので、チャックは閉めちゃダメですよ。

キンさん:すげえ簡単……これはちょっと楽しいかも。

この状態で1時間以上寝かせるといいのですが、今回はサッサと進めます。袋から無理に取り出そうとするとせっかく固めた麺帯が崩れるので、ハサミで袋を切っちゃいましょう。

これを麺棒でグイグイと伸ばし、パスタマシンで無理なく伸ばせる厚さまで広げます。多少形が崩れても、気にしなくて大丈夫。

キンさん:麺棒を使ったのが人生初だけど、これは楽しい!

そしてパスタマシンに入るよう半分にカット。

ちなみに丈夫な家庭用製麺機でやる場合は、麺棒で伸ばさずに厚い生地をそのままぶっこんでOKです。

ようやくパスタマシンを使います

さあ、ここからがようやくパスタマシンの出番です。ローラーの幅をダイヤルを調整して一番広く設定してください。

そしてローラーの間に麺帯を入れて、ハンドルをクルクルと回しましょう。

キンさん:うわ、伸びた! これはいいね。なるほどー。

ほらほら、楽しいでしょう。次は生地を重ね合わせて、またローラーに通します。これを「複合圧延(ふくごうあつえん)」と呼びます。

これを二つに折りたたんで伸ばす。折りたたんで伸ばす。何回か複合圧延をやることで、生地がしっかりと鍛えられるほか、均等な厚さになっていきます

麺帯を薄くしよう

続いてダイヤルを回して1メモリずつローラーの幅を狭くして、折りたたまずに生地を通して伸ばしていきます。麺棒だけでやろうとすると、何年も修行が必要な工程ですね。というか素人には無理!

お好みの厚さまで伸ばしたら、3玉分の生地なので3等分に切っておきましょう。せっかくなので麺帯の厚さや麺の幅をいろいろと変えてみましょう。

好みの幅に麺を切ろう

さあさあさあ、ここからが製麺で一番楽しい「麺を切る」行程です。

今回は、4種類の幅(太さ)が選べるパスタマシンを用意したので、そこからお好みの幅を選び、生地を切っていきましょう。鋳物の製麺機は基本的に切刃の種類を変えられないので、この点はパスタマシンの方が断然便利ですね。

キンさん:うおー! たのしーー!

キンさん:こんなにきれいに切れるものなの?

切刃と麺帯の厚さを変えることで、太麺、普通の麺、細麺の3種が出来上がり。

キンさん:ちょっとインスタにあげていい?

生パスタも作ってみましょうか

ほらほら、製麺って簡単で楽しいでしょう。せっかくなので、生パスタも同じように作りましょうか。

材料は作りやすさ優先で、粉は強力粉200グラム、薄力粉100グラム。打ち水は卵1個、オリーブオイル15グラム、そこに水を入れてトータルで129グラムにしてみました。デュラムセモリナ粉とかを使うのはまた今度。

この生地は水分量が多いので、フリーザーバッグで固めるのではなく、手で一塊にしてこねましょう。しっかりと水回しをしたら、こねる、休ませる、こねる、休ませる、で、こんな感じの滑らかな肌艶に育ちます。

これを麺棒で伸ばします。1人前ずつ切ってから伸ばすだけなら、作業台はまな板で大丈夫です。

あとは中華麺と同じように、パスタマシンで薄く伸ばして、お好みの太さでカットしてください。

キンさん:これ、お店で売ってるやつじゃないですか!こんなに簡単なの?

そう、中華麺でもパスタでも、製麺は道具とノウハウさえあれば簡単なのです。ちなみにパスタは滅多に作らないので(乾麺うまいよね)、今回が人生で5回目くらい。成功するかちょっとハラハラしました。

すぐに麺を茹でない場合は、ハンガーなどに干しておくか(パスタ専用のものがありますが、家庭用の普通のハンガーで大丈夫)、コーンスターチをまぶしておいてください。そのままだと水分が多いので、麺同士がくっついてしまいます。

自家製麺ラーメンを試食しよう

さあさあ、さあさあさあ、麺ができたら試食です。まずはラーメンですが、スープや具も相当深い沼。凝り出すときりがないので、今回はキンさんにお任せします。鶏ガラスープの素とか醤油とか、適当な調味料を混ぜればどうにかなります。最近は市販のラーメンスープも十分うまいですよ。

麺の茹で時間は太さや水分量で都度違うので、何分というのは私にもわかりません。味見しながら判断してくださいね。

そんなこんなで、キンさんによる100%自家製ラーメン、いや自家製麺ラーメンが完成です!

あら、おいしそうじゃないですか!

マイファースト製麺ラーメン、お味はどうですか?

キンさん:これめっちゃうまいね!……スープが!

いや、スープはいいから。

キンさん:ははは。いや冗談ですけど、麺がモッチモチじゃないですか!ちょっとびっくりしました。

でしょう。どれどれ、うん、スープうまいな

生パスタもおいしくできました

生パスタは安いレトルトのクリームソースに、キンさんが燻製したベーコンと、私が持参した天然乾燥アミガサタケ(友人からもらったやつ)を戻したものを加えました。市販品もひと手間かけるとうまいよね。

キンさん:これもめちゃめちゃうまいね!……ソースが!

言うと思った。

キンさん:いや冗談。本当にお店の味ができるんだね。麺作りは簡単じゃないけど、自炊する人なら問題なくできるレベル。苦労する価値はあるね、麺作り。本格的にちょっとやってみようかなー。でも置く場所がないしなー。

置く場所なんてどうにでもなります。製麺機を50台近く持っている私がいうのだから間違いありません。さすがにどうにかしなきゃとは思っていますが。

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今から製麺を始めれば、大晦日に自宅で年越しそばを作って食べるなんてことも可能です。ちなみに私はコミケ(同人誌即売会)で『趣味の製麺』という同人誌を頒布せねばならないので、大晦日にそばを作っている余裕がありません! ぎゃふん!

ということで、製麺に興味を持ってくれた方は、『趣味の製麺』1〜6号をお手にとってみてはいかがでしょうか。詳しくはこちらのブログから。

syumisei.blog.fc2.com

著者:玉置標本

趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。

個人ブログ:私的標本 製麺ブログ:趣味の製麺 Twitter:@hyouhon

※12月15日12:40ごろ、記事の一部を修正しました。ご指摘ありがとうございました。

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社会的責任[CSR]