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北海道への愛とネタが特盛り。マンガ『波よ聞いてくれ』で、「バーチャル札幌市民」気分を味わう(ひらりさ)

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ご当地マンガ

知らない街の風景をのぞける「ご当地マンガ」連載。

マンガの沼の住人たちに、「縁もゆかりも、それまで訪れたこともなかったけど、その作品を読んでその地域へ訪れたくなった作品」をセレクトしてもらいました。旅の予習にマンガはいかがでしょうか。

第4回は北海道札幌市を舞台にした『波よ聞いてくれ』を、ひらりささんが紹介。読んでいると、「作中のラジオ番組を聞いている札幌市民の気分になれる」といいます。
【マンガ沼の住人が推す「ご当地マンガ」】連載

「今月の選出者/今月の作品(街)」として毎月1作品を紹介していきます。

ステイホームが基本となってはや2年。労働の疲れを洗い流すべく、毎月どこかの週末に海外旅行を押し込んでいた時代が夢のようです。

各地を飛び回りたい! 時間を気にせず飲んだくれたい! せめて友達と騒ぎたいよ〜! と、心が騒ぎ出したときに引っ張り出したマンガがあります。北海道は札幌を舞台にしたご当地マンガ、沙村広明先生の『波よ聞いてくれ』です。

『波よ聞いてくれ』
『波よ聞いてくれ』
(C)沙村広明/講談社
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『波よ聞いてくれ』は、2014年に『月刊アフタヌーン』で連載スタート。スープカレー屋の店員である鼓田(こだ)ミナレが、失恋で酔いつぶれた日に地元ラジオ局MRS(藻岩山ラジオ局)のディレクター・麻藤(まとう)にくだを巻いてしまったがために、MRSのラジオパーソナリティとして担ぎ上げられていくというストーリー。

『波よ聞いてくれ』
『波よ聞いてくれ』第1巻より (C)沙村広明/講談社

同じ沙村先生の剣劇時代ものである『無限の住人』とは打って変わって、ゆるいコメディテイストなのだなあ……と、初めはかなり油断して読み始めました。

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しかし、麻藤のむちゃ振りに、暴走列車のような気性のミナレが、がむしゃらに食らい付いていくと、予想斜め上のホラー×サスペンス×バイオレンスが訪れます。どうにか騒ぎが落着する頃には、毎回「これ何のマンガだったんだっけ!?」と叫びたくなる読後感に襲われます。

例えば、しれっと振られる「野生のヒグマが視認できる距離で20通の恋愛相談に真摯に答える企画」。ヒグマにガン見されている設定で番組が進みます。

『波よ聞いてくれ』
ヒグマにガン見されている設定のミナレ、『波よ聞いてくれ』第4巻より (C)沙村広明/講談社

「こんなのアリかよ!」とミナレと一緒にツッコみ、同じ回数だけミナレの行動にツッコみ、手に汗握りつつも、友達とたくさんおしゃべりしたような充実感もある、唯一無二のマンガなのです。

さまざまな要素が堪能できる本作なのですが、間違いなく特盛りなのが「札幌&北海道への愛とdis」。意味が分かるとじわじわ笑ってしまう、細か過ぎるネタが作中にあふれています。

ミナレが元彼・光雄とのデート中に「世界初の次世代ケーブルカーだから!」と擁護する藻岩山の「もーりすカー」

『波よ聞いてくれ』
札幌もいわ山ロープウェイ。『波よ聞いてくれ』第2巻より (C)沙村広明/講談社

釧路出身のミナレと札幌出身のパーソナリティ・茅代(ちしろ)まどかによる仁義なき札幌vs.釧路disバトルに登場する釧路の「幣舞橋(ぬさまいばし)」。などなど……。

『波よ聞いてくれ』
札幌出身の茅代まどかに説教されるミナレ、『波よ聞いてくれ』第4巻より (C)沙村広明/講談社

沙村先生は北海道出身なのか? と思っていたら、実は千葉県出身。本作の舞台設定は「主人公が大自然に逃げ込むシーンのある失恋マンガを描いてほしい」と担当編集に言われたことで生まれたそうです。

取材旅行で向かった和寒町でミナレたちがとんでもない大事件に巻き込まれる「大自然」パートも面白いですが、私が好きなのはやっぱり、ミナレたちが仕事をして恋をして酒を飲んで生活している、「街」としての札幌が描かれているエピソード。

読んでいると自分も、ミナレの番組を聞いている札幌市民になれるのです。札幌出身の友人も、「ホームシックを癒やすために読んでいる」と言っていたので、このバーチャル札幌を札幌として愛でていても、大丈夫……ですよね?

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夏のテレビ塔
札幌出身の友達が送ってくれた、夏のテレビ塔(提供:いとう)

実は昨年、初めて札幌を訪れました。ノルベサ(札幌にある商業施設)の観覧車! テレビ塔光ってる〜! あそこに見えるのが藻岩山! と、聖地巡礼気分で興奮しましたが、やはり「観光客」として行くと、触れられる「街」の顔が限られてしまうのも事実。

『波よ聞いてくれ』を改めて読んでバーチャル道民レベルを高め、いつかまた再訪して、違う「街」の顔に触れられたらいいなと思います。

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著者:ひらりさ

1989年生まれ。ライター・編集者。女性の生き方や、オタク趣味などに関わるインタビュー記事やコラムをメインに執筆する。またオタク女性4人組の同人サークル「劇団雌猫」の一員でもある。著書に『浪費図鑑―悪友たちのないしょ話―』(劇団雌猫)、『沼で溺れてみたけれど』(単著)など。

Twitter:@sarirahira

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