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肉を美味しく焼く技術-料理家・樋口直哉が教える、肉の焼き方「新常識」【保存版】

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こんにちは、料理家の樋口直哉です。

料理の中でも、特に論争を生みやすい「肉の焼き方」。高温で焼き固める、低温で肉にストレスをかけず焼き上げる、などネット上でもしばしば議論が交わされます。……が、ロジックとしてはそれほど難しくありません

大事なのは、他の料理と同様に、温度と時間のコントロールです。

さまざまなルートから山頂にアプローチする山登りと同じく、ステーキも焼き方は数多くあれど、ゴールは「肉の表面に焦げ目をつけながら、目標の中心温度に到達させる」だけです。

今回はよくある疑問に答える形で肉を焼く原則をお伝えします。また、家庭でも入手しやすい「牛肩ロース肉」「豚肩ロース肉」「鶏むね肉」の焼き方を、具体的に解説していきます。

解説の前に、料理に対する僕のスタンスを簡単にご紹介しておきます。一般的な料理研究家の仕事は「レシピを考案すること」ですが、僕の仕事は「料理自体を研究する」というものです。

きっかけは、「調理科学」*1との出会いでした。料理のスキルが仕事の水準に追いつかずに苦労していた頃、調理科学の教典とも言える『マギー キッチンサイエンス』(2008年、共立出版)という本を読み、「調理の裏側にあるロジックを理解すれば、料理はずっと面白くなる」と気づいたのです。

「マギー キッチンサイエンス」を詳しく見る

音楽もコード進行などの理論を知ってから聴くと、より楽しめますよね? 料理もそれと同じで、背景や構造を理解すると、めきめきとスキルが上達します。

さて、肉は種類や状態、部位によって、目指す仕上がりや扱い方が変わります。調理科学の基礎を学び、自宅で「ごちそうステーキ」を焼いてみましょう。

よくある疑問と回答

まずは肉の焼き方にまつわる、「よくある疑問」に答えていこうと思います。
ポイントは冒頭のとおり「温度と時間をどこまでコントロールできるか」なのですが、とはいえ実際にやってみようと思うと次々に戸惑うことが出てくるかもしれません。
そこで、つまずきそうなポイントをQ&A形式で紹介していきます。これまでの認識と違う点もあるかもしれません。

Q. 使うフライパンによって、ステーキの味は変わりますか?


A. ほとんど変わりません。ステーキの味を決めるのはあくまで「温度」と「時間」です。

とはいえ、加熱方法は変わってきます。例えば、鋳鉄のフライパン*2を強火で200℃に上げるには1分30秒かかりました。一般家庭に多いアルミ+フッ素樹脂加工のフライパンを強火にかければ1分もかからず、45秒程度でこの温度に達します。

しばしば、「鋳鉄のフライパンは熱伝導がいい」と説明する人がいますが、それは誤り。鋳鉄はアルミよりも熱伝導は悪く、温まるのに時間がかかります。ただ、鋳鉄はアルミよりも熱容量(蓄熱性)が大きく、表面温度が安定しやすいというメリットがあります。

鋳鉄のフライパンに冷たい肉を入れても表面温度があまり下がりませんが、フッ素樹脂加工のフライパンは蓄熱性が低いため、冷たい肉を入れると表面温度がガクッと下がってしまいます(次のQ&Aでも詳しく解説します)。
したがって、フッ素樹脂加工のフライパンの場合は、肉を入れたら少し火を強め、温度が上がったら火を弱めるといったこまめなアクセルワークが必要になるわけです。*3
時間と温度の条件がそろい、適切な量の油をしいて加熱すると、フッ素樹脂加工のフライパンでも鉄のフライパンでも焼き上がりはほとんど変わらないのです。

逆に、温度の上がり過ぎにも注意しましょう。幸いにも家庭用コンロの多くはSiセンサーという安全装置がついており、鍋底の温度が250℃になると弱火に切り替わる仕様です。どんな材質のフライパンを使うにせよ、このセンサーが働くようでは温度が高過ぎると覚えておくといいでしょう。

Q. 肉は焼く前に室温に戻すべきですか?

A. どちらでも構いませんが、「調理環境によっては戻すべき」 でしょう。

一般的に、肉を室温に戻すとは「30分以上、2時間以内室温に置くこと」です(食品衛生的に2時間以上の放置は避けましょう)。目的は「肉を常温に戻し、火の通りをよくするため(中まで火を通すため)」と説明されます。

では室温に戻した肉の中心温度がどのように変化していくのか、実際に時間ごとに見ていきましょう。なお、室温は22℃でした。

  • 冷蔵庫から出したての時:7.0℃
  • 30分後:10.4℃
  • 1時間後:12℃
  • 2時間後:13.4℃

このような結果となりました。30分置いても上昇する温度は約3℃。目標とする中心温度(あとで詳しく説明していきますが、例えば54℃)までの道のりを考えると、無視できる温度差です。

では、なぜ「室温に戻した方がいい」という話になるのでしょうか? さまざまな理由が考えられますが、一つは肉の表面温度の影響です。

肉の焼き方解説

冷蔵庫から出したての肉の表面温度(ここでは9℃)を、蓄熱性の低いアルミ製フッ素樹脂加工フライパンに投入すると、フライパンの表面温度が下がります。
状況にもよりますが、温度が下がり過ぎたら火を強め、逆に上がり過ぎたら火を弱めるなどの調整をする必要があります。この調整は状況によって異なるため、レシピに記載されている「ステーキを焼く温度と時間」に狂いが生じてきてしまうのです。
なので、蓄熱性の低いフライパンを使うときは、あらかじめ肉を室温に戻す作業が必要です。

肉の焼き方解説

というより、フッ素樹脂加工のフライパンを使うのであれば室温に戻すのではなく、むしろ積極的に肉を温めるべきということになります。

調理科学の第一人者であるフードライターのハロルド・マギーは、袋に入れた肉を40℃の湯に5分間沈め、温めておく方法を推奨しています。
この方法であれば、肉の表面温度は18〜26℃まで上昇するので、肉を効率的に加熱できるというわけです(表面の細菌は増えますが、高温で焼くので問題になりません)。

鶏肉に関しては、低温で焼きはじめるので室温に戻す必要性は薄いでしょう。

Q. 牛肉をミディアムレアに焼き上げるためには、どれくらいの中心温度を目指せばいいですか?

A. 54〜58℃くらいです。

中心温度が60℃を過ぎたあたりから肉がぱさつきはじめ、65℃を超えると急速に水分が失われていきます。

逆にレア=50℃の肉はどうでしょうか。水分を失っていないのでジューシーになりそうなものですが、実際は肉を噛んでもクチャクチャとした食感があるだけです。

グニャッとした食感になる理由は、筋繊維のなかのタンパク質がまだ液体状なので、噛むと力が分散してしまうからです。また、脂肪が溶けていないので、牛肉らしい香りもあまり感じません。レア派の方は別として、牛肉はミディアムレア以上の火の通し具合がよさそうです。

当然ですが、豚肉と鶏肉にはしっかり火を通しましょう。具体的な中心温度の目安は次で。

Q. 豚肉や鶏肉はどれくらいの中心温度まで加熱すればいいですか?

A. 豚肉は68℃、鶏肉は65℃が一つの目安です。

肉の焼き方解説

豚肉は中心温度が65℃を超えると、肉汁が表面に浮いてきます。この状態で火から外すと余熱で2〜3℃は上がるので、最終的に68℃前後になるはずです。

厚生労働省の食肉基準では、豚肉は「63℃で30分、または同等の加熱」をするよう推奨されています。
63℃で30分と同等の加熱に相当するためには、

  • 70℃では1分
  • 75℃では5秒

となります。中心温度68℃を目指して加熱すれば、肉を十分に休ませて上手に余熱を使うことで安全性の問題はクリアできます。*4

もちろん、気になる人はもっと加熱してください。幸いなことに今回取り上げた肩ロースは脂肪が多い部位なので、多少火が通り過ぎたところで、ジューシーさが損なわれることはありません。

鶏肉も同じ方法で中心温度を65〜68℃まで上げましょう。鶏肉をやわらかく食べるには中心温度63℃が目安とされていますが、安全性でやや不安が残ります。幸いなことに63℃の鶏肉はグニャグニャした食感で、あまりおいしくありません。*5

鶏肉の表面には食中毒の原因となる細菌が付着している場合があり、その汚染が肉の内部にまで広がっていることもあります。そのため、しっかりと火を通すことが重要です。かと言って、闇雲に加熱すればおいしく仕上がりません。恐れ過ぎず、適切に加熱することで安心かつおいしく食べられます。

Q. 塩はいつ振ればいいですか?

A. 焼く直前、もしくは30分以上前(あるいは前日)です。2つのタイミングでは、味も食感も異なってきます。

塩を振って5分ほど置くと、塩によって肉の水分が引っ張り出され、汗のように表面に浮きます。この段階で焼くと、フライパンの表面温度が下がり、熱を与えても水分の蒸発に消費されるため、上手に焼けません。

塩を振ってすぐに焼けば、肉から引き出された水分でフライパンの表面温度が下がらないため、きれいな焼き色がつきます。これが焼く直前に塩を振ったほうがいい理由です。

一方、塩を振って10〜15分待つと、表面に浮いた水分が肉に再吸収されます。30分経てば大部分がなくなっているでしょう。ほんのわずかながら水分が蒸発するので、味も凝縮されます。この時点で焼けば、肉にきれいな焼き色がつきます。

また、塩によって水分を保持する力が向上し、ジューシーになります。ただし、塩の働きでやわらかくもやや締まった食感(ハムを想像してください)になるので、この点は好みです。

Q. 焼いている最中に肉をあまり触ってはいけない、というけれど本当ですか?

A. 肉は何度も裏返しながら焼いた方がジューシーに仕上がります。

表面にしっかりと焼き色をつけるには高温で焼く必要がありますが、肉を高温で焼くと水分が失われてしまいます。そのため、この作業は短時間で済ます必要があります。

肉を何度も裏返すと、両面を同時に加熱していることになります。結果として加熱時間が短くなり、ジューシーに仕上がる、というわけです。

逆に裏返すのを一度だけにとどめると、焦げ目が強く付きます。今回紹介する豚肩ロース肉(厚みが薄い肉)は何度も裏返しませんが、それは焼き色を優先したいからです。

厚みが薄いと、両面を均等に加熱することは不可能です。

そこで片面をじっくりと焼き付け、焼き色を優先しました。豚肉は牛肉に比べると淡白な風味なので、焦げ目を強調した方がおいしく食べられるでしょう。

Q. 肉をフォークで刺してはいけない、というけれど本当ですか?


A. 刺しても大丈夫です

確かに肉をフォークで刺すと、そこから肉汁が流れ出しますが、その量は限定的。肉は筋繊維の束であって、風船ではないからです。

実際、お店などではジャカード(千枚通しのような形の筋切り)という調理器具で肉を叩くことがありますが、肉がやわらかくジューシーになれども、水分が失われることはありません。ジャカードは筋繊維の束をほぐしているだけで、繊維一本一本を切っているわけではありません。

手で裏返すのが苦手な方も、安心してフォークで突き刺してください。ただし、穴だらけにするのは避けましょう。見た目にもよくないですからね。

Q. 最終的な焼き加減は何で判断すればいいですか?

A. 昔ながらの方法は、肉を指で押してみること。

肉の焼き方解説

手に力を入れない状態で親指と中指を合わせ、腹の部分を押したときの弾力がミディアムレア。

肉の焼き方解説

親指と薬指を合わせた時の硬さがミディアムと言われています。実際には男性と女性、手のひらの硬さなどには個人差があるため、あくまで参考という感じですが、ここでイメージトレーニングを積んでから肉を触るといいでしょう。

とはいえ、完璧に焼きたいのであれば温度計を使うのが確実。中心温度は肉を休ませている間に2〜3℃上がるので、その手前で引き上げるのがいいでしょう。

鶏肉も、一番分厚い部分を指で押して判断します。あるいはフォークを差して、肉汁が溢れ出ることを確かめていいかもしれません。温度計があれば確実でしょう。

使用器具の紹介〜温度計を買ってみよう〜

ここで、今回使う調理器具をご紹介しましょう。
コンロ、フライパン、料理用の温度計(極めたい方はぜひ持っておきましょう)について具体的に紹介しますが、特殊な道具を使わないと再現できないわけではありません。

コンロ

コンロは、一般的な家庭用ガスコンロです。火加減は以下のように覚えておきましょう。
  • 強火は鍋底全体に火が当たるくらい
  • 中火は火の先が鍋底に当たるくらい
  • 弱火は鍋底に直接火が当たらないくらい

ただし、弱火でも空のフライパンを加熱し続ければ、いつかは強火と同じになりますし、強火でもフライパンにギュウギュウ肉を詰めると、温度は低くなります。
フライパンの温度は素材から蒸発した水分によって発生する気化熱(水が蒸発する際にまわりの熱を奪っていく現象)と鍋底から加熱される熱量のバランスで決まるからです。

なお、IH調理器の場合はこれとは異なり、メーカーによって温度設定に違いがあるので、適宜調整しましょう。

フライパン

今回使用したのは、僕が普段から使っている以下の3種類です。ガス火とIH、両方の熱源を使っているので、どちらにも対応可能なフライパンを選んでいます。

ロッジ スキレット 9インチ(牛肩ロース)
ロッジのスキレットは昔ながらの鋳鉄。熱くなるのに時間はかかりますが、表面温度が下がりにくく、火加減を細かく調節しなくても安定した火入れができます。

北陸アルミ IHハイキャスト フライパン26cm(豚肩ロース)
北陸アルミのIHハイキャストフライパンはIHに対応するため、鉄の貼り底がしてあります。ガス火専用のフライパン(アルミ+フッ素樹脂加工)より、熱くなるのに時間がかかるものの、厚底のおかげで均等に熱くなります。

北陸アルミ IHハイキャスト フライパン20cm(鶏むね)

ただしまったく同じフライパンを使う必要はありません。
いろいろな材質のフライパンを使っていますが、大事なのは温度
一定の温度で加熱すれば、どんなフライパンでも同様に焼くことができます。
ただ、後ほど解説しますが、鶏肉はフライパンのサイズがポイントなので、小さめのフライパンを用いました。

温度計

肉の温度を測るための温度計には、真空調理用の中芯温度計(ハンナ 真空調理用芯温度計セット/HI 935005VC)を使用していますが、デジタル式のプローブ温度計(プローブ=針のこと、刺して使うタイプ)であれば代用できます。
プローブ温度計は高いものではないので、肉焼きを極めたい方は購入することをオススメします。

では、いよいよ肉の焼き方を実践的に解説していきます。

  • 肉の選び方
  • 肉の焼き方(詳細な工程)
  • ソースの作り方

という大まかな3ステップで紹介します。

牛肩ロース肉は「何度も裏返して焼く」

フライパン


【ポイント】

  • 目標の中心温度:54〜58℃
  • フライパンの表面温度:200℃
  • 合計加熱時間:10分(4分30秒+休ませ5分+仕上げ30秒)

まず最初に、スーパーで手に入りやすいアメリカ産牛の肩ロース肉を焼いてみましょう。

脂肪(サシ)のある和牛であれば、焼き過ぎても硬くなりにくいのですが、輸入牛のような赤身主体の肉はおいしく食べられる温度の幅が狭く、難易度が高い。

なかでもアメリカ産牛の肩ロースは「ステーキ用」として売られている牛肉のなかで、最難関と言っても過言ではありません。

肉の繊維がさまざまな方向に入っているだけでなく、牛がよく動かす部位なので筋肉が発達している=硬いのです。一方で、筋肉が発達しているからこそ、味が濃い部位でもあります。つまり、うまく焼けば、非常に香り高く旨味あふれるステーキになるので、頑張ってみましょう。

牛肩ロース肉の選び方

写真のお肉は、同じ店で「ステーキ用肩ロース」として売られていたものです。右と左が並んでいたら、どちらを選びますか?

牛肩ロース肉

肩ロースは牛肉の中で最も大きな部位の一つで、ネックとリブロースの間にあります。焼肉屋さんではこれを解体し、ロースやザブトン、カルビなどの商品に分けます。つまり、ネック側とリブロース側では肉質が異なるわけです。

牛肩ロース肉

写真の肉は右側がネック側、左側がリブロース側です。ネックは牛がよく動かす部位なので、肉質は硬く、ステーキよりも煮込み料理などに向いています。

もうお分かりですね。ステーキ用として選ぶべき正解は、左の肉(リブロース側)です。見分けるポイントは中心に走っている筋と脂肪です(筋は硬いので、食べるときに外しましょう)。

牛肩ロース肉

あと、切った角が立っていて(スーパーの商品を触ってはいけませんが)押すと弾力を感じる肉が、やわらかく焼き上がります。

牛肩ロース肉

この肉の厚みは2.5cmでした。今回の焼き方では3cmくらいまでが適当な厚みです。

牛肩ロース肉の焼き方

牛肩ロース肉

肩ロース肉は形が崩れやすいので、側面をタコ糸などで縛っておくと扱いやすいです。今回はソースで食べるので、塩は片面に薄く振るだけにとどめます。

フライパン

材質にかかわらず、牛肉を焼くのに適したフライパンの表面温度は200℃。

鋳鉄のフライパンを、中火にかけて1分30秒予熱します。フッ素樹脂加工のフライパンであれば、30秒ほど予熱するといいでしょう。いずれにせよ、フライパンを十分に予熱することが成功への近道です。

フライパン

オリーブオイルを大さじ2入れます。凸凹している肉の表面にできた隙間を埋める必要があるので、油の量はやや多めです。

フライパン

中火のまま、肉を焼きはじめます。タイマーを4分30秒にセットし、30秒ごとにこまめに裏返します。

フライパン

3分経った段階で一度油を捨てます。

フライパン

ここに新しい油を大さじ1加えて、加熱を続けます。

フライパン

4分30秒たった状態がこちら。肉の薄い部分と厚い部分を2箇所、指で押して弾力があることを確認します。肉がやわらかければもう30秒ずつ加熱し、いい頃合いになっていれば、コンロの近くなど温かい場所で5分ほど休ませます。

フライパン

仕上げの加熱です。バター15gを中火で熱します。

フライパン

高温のバターで両面を30秒ずつ焼いて、肉の表面温度を上げるとともに、表面についた油の酸化臭を落とし、バターのいい香りをまとわせます。香りの強い和牛であればバターは必要ないのですが、輸入肉の場合には有効です。

フライパン

肉はもう休ませてあるので、熱いうちにカットします。中心の筋のところから切り分けると食感がよくなるでしょう。

牛肩ロース肉のステーキ

表面にはしっかりと焦げ目がつき、内部はピンク色。そこに肉汁が浮いてくる仕上がりが理想の状態です。肩ロース肉はしっかりとした噛みごたえがある部位。切れ味のいい包丁で小さめに切って、よく噛んで食べると味が出てきます。

牛肩ロース肉に合うソースの作り方

醤油大さじ3、砂糖大さじ2、酒大さじ1、みりん大さじ1、にんにくのすりおろし小さじ1/4、好みで味の素少々を混ぜ合わせ、肉を焼いたフライパンでひと煮立ちさせれば出来上がりです。

ソース

こちらをベースにワサビなどで風味をつけてもいいでしょう。

輸入牛は味が薄いので、醤油味のソースがよく合います。


【牛肩ロース肉の選び方】
  • 焼くのが難しい部位だが、うまく焼けば香り高いステーキになる
  • 「リブロース側」を選ぶ
  • 切った角が立っている肉を選ぶ
  • (今回の焼き方では)3cmくらいまでが適当な厚み

【牛肩ロース肉の焼き方】

  • 側面をタコ糸などで縛る
  • 30秒ごとに裏返しながら中火で焼く
  • 焼き始めて4分30秒たったら、温かい場所で5分間休ませる
  • 仕上げにバターで両面を焼く

【牛肩ロース肉に合うソースの作り方】

  • 醤油ベースの和風に仕上げる
  • 風味づけにわさびを加える

豚肩ロース肉は「下処理が大事」

豚肩ロース肉


【ポイント】

  • 目標の中心温度:65℃
  • フライパンの表面温度:200℃
  • 合計加熱時間:5分目安

豚肉の焼き方も基本は牛肉と同じ。目指す中心温度(65℃)を保ちつつ、表面に焦げ目をつけるだけです。

豚肩ロース肉の選び方

豚肩ロース肉

これはトンテキ用に売られている豚肩ロース肉です。ロースに比べると脂肪交雑の割合が高く、食感はやや硬めですが、しっかりとした味わいがあります。今回買った肉の厚みは1.5cmと1cm。

スーパーで売られている豚肉を選ぶポイントはは肉の締まり。つまり、脂肪と肉が緩んだ状態になっていないもの、角が立ったものを選びましょう。脂肪が白く、赤身の部分が瑞々しく、パックの底にドリップ(肉の組織液)が溜まっていないものを選びましょう。

豚肉は牛肉ほど厚切りでは売られていないので、焼き方が少々変わってきます。薄い肉の扱い方をマスターするためにも、豚肉の焼き方を覚えましょう。


豚肩ロース肉の焼き方

豚肩ロース肉

まずは表面の水気をキッチンペーパーで拭き取ります。豚肉は牛肉よりもドリップが出やすいので、この作業は欠かせません。

表面に水気が残ったまま焼きはじめると、フライパンの表面温度が下がり、上手に焼けないからです。

豚肩ロース肉

肩ロースには筋が入っているので、包丁の先であらかじめ切っておきます。こうすることで焼いた時に肉が反らず、全体的にきれいな焼き色をつけることができます。

「切れ目を入れると肉汁がそこから出てしまうのでは?」と思われるかもしれませんが、流れ出す量は限定的なので、心配には及びません。

豚肩ロース肉

今回はフッ素樹脂加工のフライパンを使ってみました。もちろん、鉄のフライパンでも同じように焼けます。中火で30秒予熱したら、大さじ1のサラダ油をしき、片面に薄く塩をした豚肉を焼き始めます。

肉を置いた箇所は温度が下がっているので、ゆっくりと肉を動かしてください。フライパンの表面温度はやはり180〜200℃を維持します。

豚肩ロース肉

しばらく焼いていると表面に肉汁が浮いてきます。これは中心温度が65℃を超えたサインです。このタイミングで裏返します。

豚肩ロース肉

肉の片面にきれいな焼き色がついていればOK。裏側を、厚さ1cmの肉は1分、1.5cmの肉は2分焼けば出来上がりです。

豚肩ロース肉に合うソースの作り方

皿に豚肉を移したら、フライパンの油を捨て、バーボンウイスキー30cc、醤油大さじ1、砂糖大さじ1、ケチャップ小さじ1を加えてひと煮立ちさせ、ソースをつくります。

豚肩ロース肉

仕上げにきゅうりのピクルスを加えると味のアクセントになります。

豚肩ロース肉

ソースを作っている間も肉を休ませていることになるため、その間に肉の中心温度は上がり、安全性も確保できます。

豚肉は牛肉よりもあっさりしており、深い味わいのバーボン風味のBBQソースがよく合います。


【豚肩ロース肉の選び方】
  • 適切な肉の厚みは1cm〜1.5cm程度
  • 角が立ったものを選ぶ
  • 脂肪が白く、赤身の部分が瑞々しいものを選ぶ
  • パックの底にドリップが溜まっていないものを選ぶ

【豚肩ロース肉の焼き方】

  • 表面の水気をキッチンペーパーで拭き取る
  • しっかり筋切りをする
  • 表面に肉汁が浮いてきたら裏返す
  • 厚さ1cmの肉は1分、1.5cmの肉は2分、裏側を焼く

【豚肩ロース肉に合うソースの作り方】

  • バーボンウイスキーで深みを出す
  • 醤油、砂糖、ケチャップでBBQ風味に仕上げる
  • 仕上げにきゅうりのピクルスを加える

鶏むね肉は「低温で焼く」

鶏むね肉


【ポイント】
  • 目標の中心温度:65℃
  • フライパンの表面温度:120~130℃
  • 合計加熱時間:20〜25分程度

牛肉、鶏肉ときて最後は鶏むね肉です。脂肪分が少なく分厚い上に、薄いところと厚いところがある鶏むね肉を均一に焼くのは最難関。この肉が上手に焼ければ、肉焼きマスターと言っても過言ではありません。

鶏むね肉の選び方

スーパーで買う際は、あまり大き過ぎないものを選びましょう。目安は300g程度。350g以上になると、均一に焼くのが難しくなります。また、皮付きを選ぶのも重要。鶏むね肉は分厚いので、ある程度低い温度で焼く必要がありますが、皮があれば断熱材となって火の当たりをソフトにしてくれるからです。パッケージから分かりづらいかもしれませんが、身の薄い部分まで皮で覆われているものがベストです。

鶏むね肉

鶏むね肉は薄く塩を振り、表面に小麦粉をまぶします。

鶏むね肉

小麦粉をまぶすことで、水分が失われるのを(ある程度)補えますし、焼き色もきれいにつきます。

鶏むね肉の焼き方

最初に述べた通り、鶏むね肉は低温で焼く必要があります。そこで登場する秘密兵器が小さめのフライパンとバターです。

大き過ぎるフライパンを使うと、溶かしたバターが広がり、水分が蒸発しやすくなってしまうのです。適切な大きさのフライパンを選ぶことも、肉を焼くうえでは大事なポイント。

鶏むね肉

バター30gを弱火で溶かしたところに、皮目を下にした鶏肉を置き、焼きはじめます。表面温度は、バターが泡立ちはじめたら120℃、泡立ちがやや収まったら130℃です。

バターは20%が水分で、水分が蒸発する際に周りの熱を奪っていく(気化熱)ため、フライパンの温度が上がり過ぎないのです。

鶏むね肉

皮目を下にしたまま、分厚い部分にスプーンなどでバターをかけながら焼いてきます。この作業はフランス料理の用語で「アロゼ」といいます。こうすることで両面から加熱するのと近い状態になります。
油を肉にかける際、フライパンを傾けるのもコツです。熱源からの距離を稼げるので、フライパンの表面温度が上がり過ぎません。

鶏むね肉

10分たったので裏返しました。焼き色がうっすらとついています。身側は火が入り過ぎないよう加熱時間を短くするのがベター。目安は3〜4分です。

鶏むね肉

この時、フライパンのカーブを使って側面も焼きましょう。もしバターが焦げてしまったら、キッチンペーパーなどで取り除き、新しいバターを足しましょう。新しいバターに含まれる水分がフライパンの表面から熱を奪うので、加熱温度が安定します。

鶏むね肉

身側を3〜4分焼いたら裏返し、再び皮目から加熱します。ここからは菜箸などを使い、薄い部分を浮かせるようにします。こうしないと薄い部分に火が入り過ぎ、ぱさついてしまうからです。

鶏むね肉

火の通り具合を調べるには、肉を指で押してみましょう。弾力が出たことを確認します。

鶏むね肉

温度を測るとさらに確実です。中心温度で65℃前後に達していたら、温かい場所で休ませます。

鶏むね肉

台所に温かい場所がなければ、アルミホイルで肉を包むといいでしょう。分厚い肉は中心まで火を入れるのに時間がかかるため、余熱で火を入れる必要があります。アルミホイルでふんわりと包むと、外側が冷めることなく、内側に熱が伝わります。表面が蒸れてしまうので牛肉のステーキなど焦げ目を優先させたい肉には使えない技法ですが、鶏むね肉には有効です。

鶏むね肉

表面には香ばしい焼き色がつき、なかはジューシーな仕上がりです。

鶏むね肉に合うソースの作り方

フライパンに残った油を拭き取り、赤ワイン50ml、マスタード大さじ1を加え、アルコール分を飛ばします。

鶏むね肉
鶏むね肉

そこにデミグラスソース(『ちょっとだけデミグラスソース』ハインツ製)70gと生クリーム50mlで伸ばしたらソースの出来上がりです。

鶏むね肉

鶏肉は脂肪分が少ないので、クリームを使ったこってりしたソースがよく合います。


【鶏むね肉の選び方】
  • 大き過ぎない300g程度の肉を選ぶ
  • 皮付きの肉を選ぶ(できれば、厚みの薄い部分まで皮がついているもの)

【鶏むね肉の焼き方】

  • 焼く前に小麦粉をまぶす
  • 小さいフライパンを使う
  • 皮目を下にして焼きはじめる
  • バターを使って焼く
  • 分厚い部分にスプーンなどでバターをかけながら焼く
  • 菜箸などを使い、薄い部分を浮かせるようにして焼く

【鶏むね肉に合うソースの作り方】

  • 赤ワインとマスタードで深みを出す
  • デミグラスソースと生クリームでコクを出す

まとめ 〜改めて「肉を焼く」ことの面白さについて〜

これまで培ってきたセオリーを総動員すれば、どんな肉も上手に焼けるようになるはずです。

もちろん、ここでご紹介した焼き方が絶対的に正しいわけではなく、他にもさまざまなアプローチが考えられます。

しかし、表面に焦げ色をつけながら、目指す中心温度に到達させる、という原理原則は普遍的なものです。

肉に火を入れることは、正直ある程度の「慣れ」が必要だと思います。自分もそうでしたが、焼いているうちに自然とタイミングやコツを覚えます。

大事なのは、いい肉を手に入れ、肉の状態に応じた加熱をすること。

つまり、絶対的な正解などないのです。そこが、肉を焼くという行為の面白いところです。

著者:樋口直哉

作家・料理家。主な著作に小説『スープの国のお姫様』(小学館)、ノンフィクション『おいしいものには理由がある』(角川書店)、料理本『最高のおにぎりの作り方』(KADOKAWA)など。
note:TravelingFoodLab.
Twitter:@naoya_foodlab


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今回紹介した商品

「マギー キッチンサイエンス」を詳しく見る
「ロッジ スキレット 9インチ」を詳しく見る
「北陸アルミ IHハイキャスト フライパン26cm」を詳しく見る
「北陸アルミ IHハイキャスト フライパン20cm」を詳しく見る
「ハンナ 真空調理用芯温度計セット/HI 935005VC」を詳しく見る
「プローブ温度計 料理用」を詳しく見る
「牛肩ロース ステーキ アメリカ産」を詳しく見る
「豚肩ロース ステーキ」を詳しく見る
「ちょっとだけデミグラスソース」を詳しく見る
「鶏むね肉 ステーキ」を詳しく見る

*1:調理の作業工程について、最終的にどのような状態になれば好ましいか、そのために必要な条件とは何か、という事柄を科学的に突き詰める学問。

*2:鋳型に鉄を流し込んで作るフライパン。代表的なものにスキレットがある。鉄板をプレスして成形する鋼板のフライパンと比べ、蓄熱性に優れている。

*3:ちなみに、フッ素樹脂加工のフライパンの調理限界温度は240℃なので、このあたりにも注意しましょう。

*4:厚生労働省の基準はUSDA(アメリカ農務省)の基準である「63℃で3分加熱」と比較すると、かなり安全めに倒したものと言えそうです。もちろん、高齢者や乳幼児、免疫不全の病気の患者が食べるのであれば話は別ですが、常識的な範囲を守れば安全性に問題はありません。

*5:先に引用したアメリカ農務省のガイドラインによると、鶏肉を含む家禽類は中心温度を74℃まで上げれば、一瞬で安全が確保できる、としています。68℃であれば44.2秒加熱すればこの基準を満たすことができるわけです。今回紹介する焼き方では肉を十分に休ませている間に問題はなくなっているはずです。

社会的責任[CSR]