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カレーづくりのスパイスも活用できる。1万杯のチャイを飲んだ男が教える、自宅で絶品チャイをつくる方法

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チャイ

初めまして、神原博之と申します。20代のころにチャイと出会って以来、40年間毎日欠かさずチャイを飲み続け、最近は茶葉のブレンドを研究したり、おいしいチャイのつくり方を伝授するワークショップを開催したりしています。

そんな私がチャイと出会ったのは、大阪に今もある「カンテグランデ」というカフェでアルバイトを始めたことがきっかけ。当時はまだ誰もチャイなんて知らないような時代でした。

カンテグランデ 中津本店 1990年ごろのカンテグランデ 中津本店(※現在は内観が異なります)

当然、僕もチャイなど知るはずもなく、お茶自体にもさほど興味はありませんでした。しかし、いざお店で出されたものを飲んでみると、「紅茶って本当はこんなおいしい飲み物だったんだ」とカルチャーショック! 飲み続けていくうちに、紅茶の別の飲み方として「チャイ」を知り、惹かれていきました。

今にして思えば、ポットで提供する紅茶が最終的に砂糖の有無やミルクの足し具合をお客様に委ねるのに対し、チャイは自分の技量でつくった完成形を提供するという点が、ある意味「ものづくり」的で面白かったのだと思います。

ちなみにカンテグランデで働いていた同僚には、トータス松本を始め、ウルフルズのメンバーたちがいます。1996年に『ガッツだぜ!!』が大ヒットした際には、出演するさまざまなメディアで「チャイ」という単語を連発していました(笑)。

それから25年、徐々に市民権を得ていったチャイは、今ではカフェチェーンでもよく見かけるようになりました。今回は長年チャイを楽しみ研究してきた私が、自宅で楽しめるおいしいチャイのつくり方をお教えしたいと思います。

最近はスパイスからカレーを作るのが流行していますが、スパイスカレーをつくる方ならそろえているであろうスパイスを使ったレシピも紹介しています。いつものカレーのお供に、おうち時間のお供に、ぜひつくってみてください。

初めての人でも大丈夫! 絶品チャイのつくり方

チャイと言うと、なぜだか「スパイスの入った飲み物」という印象を持っている方も多いようですが、インドでは特段スパイスの入っていないチャイもよく飲まれています。

ですので、今回はそんなプレーンチャイのレシピを基本として紹介し、その上でスパイスを効かせたアレンジレシピを3種類ご紹介しようと思います。つくり方自体は、プレーンさえ覚えてしまえば大丈夫です。

チャイづくりに必要な道具はこちら。「絶対にこれ!」というわけではありませんが、私が長年試行錯誤した上でたどり着いた道具なので、良ければ参考にしてください。

<道具>
  • 手鍋……直径約16cm(これ以下だと噴きこぼれやすく、これ以上だと水分の蒸発が多過ぎる)。ホーロー鍋だと液ダレせず、注ぎやすいのでおすすめ
  • 茶こし……目詰まりしないように、目があまり細かくないものが良いです
  • 計量カップ……目分量は失敗の元なので、必ず計量します。目盛りは上から見ないで、水平に見ましょう
  • タイマー……必需品(体内時計を信用せず、きちんと計りましょう)
  • スケール……0.5g まで計れるもの
  • すりおろし器……セラミックが使いやすい
  • ティースプーン……3g計れるのがティースプーンです。コーヒースプーンでは小さ過ぎ、カレースプーンでは大き過ぎます。チャイ専用に1 本は欲しい

チャイの道具

「ホーロー鍋 16cm」を詳しく見る
「茶こし」を詳しく見る
「キッチンスケール 0.5g」を詳しく見る
「すりおろし器 セラミック」を詳しく見る

スパイスなし! シンプルなプレーンチャイ

プレーンチャイ

材料(2 杯分)
  • 水:180cc ※軟水=普通の水道水でOK
  • 牛乳:180cc ※成分無調整、乳脂肪分3.5 〜3.7%がベスト。4%以上の特濃はNG
  • CTC製法茶葉:6g
  • 三温糖(あるいはきび砂糖):10g


日東紅茶ロイヤルミルクティーブレンド
日東紅茶ロイヤルミルクティーブレンド

僕は「神原チャイ」という名でオリジナルブレンドの茶葉を販売しているのですが、比較的入手が容易な茶葉としては「日東紅茶ロイヤルミルクティーブレンド」がおすすめ。他の輸入もののCTC紅茶に比べて、クセがなくコクがあっておいしいので初心者には最適です。

「CTC製法 茶葉」を詳しく見る
「三温糖」を詳しく見る
「日東紅茶ロイヤルミルクティーブレンド」を詳しく見る

つくり方
1.手鍋に水と茶葉を入れ、火を点けます。最初は強火でOKです。

プレーンチャイ

2.沸騰したら火を弱め、中火で2分茶葉を煮出します。この段階でどれぐらい煮込むかで、おいしさの80%が決まります。
※厳密には茶葉により煮出す時間は前後します。今回は上記でおすすめした「日東紅茶ロイヤルミルクティーブレンド」を想定しています

プレーンチャイ

3.牛乳と三温糖を加えて、再び強火にします。沸騰しそうになったら火を弱め、様子を見つつ徐々に火力を上げて3分ほど泡を出して膨らませます。

プレーンチャイ

4.泡を出すことで効率的に水分が飛び、茶葉の味わいと牛乳がよくなじみます。

プレーンチャイ

5.最後に茶こしで濾し、カップに入れたら完成です!

このレシピは1杯あたり130ccの計算になっています。水と牛乳合わせて360ccを煮詰めて2杯分つくるわけなので、つくる過程で100ccの水分を飛ばすというわけですね。
※130ccは少ないと思われるかもしれませんが、この量が「もう一杯飲みたくなる」絶妙な量なのです

たまに「100ccも飛ばすのではなく、最初から水と牛乳の量を減らしても良いのではないか」と聞かれることもあるのですが、茶葉と牛乳の味をうまくなじませるには、牛乳を加えてから3分は煮出す時間が必要ということが経験的に分かってきたので、そこは短縮しないようにお願いします。

むしろ、いつも僕は「あなたが思っている以上に煮てください」と言っているぐらい。僕が思う、おいしいチャイをつくるポイントは「時間をかけて泡で煮る」こと。慣れてきたら少し時間を延ばして、お好みの味に調整してみるのも良いかもしれません。

アイスチャイ

これからの暑い季節、アイスチャイにしたいという方は、水の量を減らして濃いめのチャイをつくってみてください。冷蔵庫で寝かせれば、翌日もおいしいチャイが飲めますよ。
※できれば氷水の入ったボウルなどに浸け、急冷してから冷蔵庫にお入れください。そのまま冷やすと牛乳が劣化して味に影響してしまいます

スパイスを使ったアレンジチャイ3種

お次は、スパイスを使ったアレンジチャイを紹介していきます。いずれも、プレーンチャイとのつくり方の違いは最初に茶葉と一緒にスパイスを入れることだけ

もちろん、人によっては最後にふりかける方もいますが、それだとチャイに味がなじまないため、僕は最初に茶葉と一緒に水に入れてしまうことをおすすめしています。最初に入れると、煮出すときに部屋中にスパイスの良い香りが広がるのもたまりません。

ジンジャー& カルダモンチャイ

ジンジャー& カルダモンチャイ 生姜は皮ごと擦り下ろしてしまってOKです
材料(2 杯分)
  • 水:180cc
  • 牛乳:180cc
  • CTC製法茶葉:6g
  • 三温糖(あるいはきび砂糖):12g
  • 生姜(擦りおろし):10g
  • カルダモン:5 個
  • シナモンスティック:1g
ジンジャー& カルダモンチャイ 最初の段階で、茶葉と一緒にスパイス類を入れてしまいます

実は、インドで広く飲まれているのがジンジャーチャイ。カルダモンは、少々値段がお高いのでインドのチャイ屋さんは使いたがりませんが、こちらのレシピでは贅沢に使っていきます。

生姜の辛みとカルダモンの高貴な香り。そこにシナモンで少しの甘さを加味すれば、なんともリッチなチャイの出来上がりです。

カレー好きの人はカルダモンを好む人が多いような気がしますが、消化不良を助けるカルダモンの効能がカレー好きの胃腸を助けているのかもしれません。カレーのお供に是非どうぞ。

「カルダモン」を詳しく見る
「シナモンスティック」を詳しく見る

マサラチャイ

マサラチャイ
手前に写っているのは、茶葉とマサラパウダーをブレンドしたもの。
あらかじめ混ぜておく場合は、茶葉60gに対してマサラ6~7gを入れてあげましょう
材料(2 杯分)
  • 水:180cc
  • 牛乳:180cc
  • CTC製法茶葉:6g
  • 三温糖(あるいはきび砂糖):10g
  • マサラパウダー(クローブ、シナモン、カルダモンのミックス):1g

マサラパウダーのスパイスの割合は、基本的に1:1:1。ただ、お好みに応じてシナモンを増やして1:2:1などにしていただいても構いません。

マサラとは、香辛料を混ぜたものという意味で、数種類のスパイスの組み合わせのこと。今回はクローブ/カルダモン/シナモンのミックスを使います。

一つひとつは癖のあるスパイスなのですが、3つが混ざり合うと得も言われぬ良い香りが漂い、一瞬のうちにインドへトリップできますよ。

もちろん、ホールスパイス(加工されていないスパイス)があれば、それを潰してつかうのも良いですが、パウダーでも十分おいしいマサラチャイになります。

「クローブ」を詳しく見る
「シナモン パウダー」を詳しく見る
「カルダモン」を詳しく見る

ゴールデンチャイ

ゴールデンチャイ

材料(2 杯分)
  • 水:180cc
  • 牛乳:180cc
  • CTC製法茶葉:6g
  • 三温糖(あるいはきび砂糖):14g(多めがおすすめ)
  • 生姜(擦りおろし):10g
  • ターメリックパウダー:1g
  • ブラックペッパー(粗挽き):少々(隠し味程度)
ブラックペッパーとターメリック
ミル付きのブラックペッパーが便利です。ターメリックは慎重に扱わないと、台所中が黄色くなるので注意してください

インドには煮込んだミルクにターメリックと生姜を加えた「ゴールデンミルク」なる飲み物があります。

もともとターメリックは、インド文化圏では薬として親しまれてきたものなので、日本でいうところの「生姜湯」や「葛根湯」といったところでしょうか。最近では健康志向の高い人たちの間でターメリック人気が高まり、ニューヨークでもよく飲まれていると聞きます。

今回つくってみたゴールデンチャイは、このゴールデンミルクに茶葉を加えたもの。ターメリックはスパイスカレーに使う定番スパイスですし、そのうちに日本でもターメリックブームが来るかもしれません。今のうちに一度つくってみてはどうでしょうか。

「ターメリックパウダー」を詳しく見る
「ブラックペッパー ミル付き」を詳しく見る

自宅でチャイをつくろう

チャイとは、もともと中国から伝わった「茶(チャ)」が訛って「チャイ」と呼ばれるようになったもの。今の私たちがイメージするチャイが生まれたのは19世紀のインドと言われています。

当時、インドはイギリスの植民地で、ヨーロッパへ輸出するために大量の茶葉の栽培を行っていました。上質なものは当然輸出に回されるため、国内に残るのは茶葉のカスばかり。そのまま飲もうと思っても、苦くてとても飲めたものではありませんでした。

そこで、残った茶葉をおいしく飲むためのレシピとして編み出されたのが、たっぷりの砂糖とミルクで茶葉を煮出したチャイだったというわけです。

日本においては1970年代ごろ、先ほど紹介した「カンテグランデ」などのアジアをモチーフにしたカフェの登場により大阪で人気に火がつき、徐々に全国的に飲まれるようになっていきました。

ただ、まだまだ自宅で煮出してつくったチャイを飲んだことがある人は少数派でしょう。今回はプレーン含め、4種類のレシピを紹介しましたが、つくり方はどれも簡単。ぜひ一度つくってみてくれるとうれしいです。

スパイスカレーと同様、チャイもまた奥深い世界であることが分かっていただけるでしょう。


著者:神原博之(かんばらひろゆき)

1954年生まれ。1980年、「カンテ・グランデ」にアルバイトとして入店。1983年、社員となり、お茶の仕入れや販売、卸を担当。2015年、「カンテ・グランデ」を退社し、「チャイのワークショップ」など各地でチャイを伝える活動を行う。著書に『チャイの旅』がある。「マツコの知らない世界」(TBS系)出演。

Webサイト:神原マガジン

Instagram:@chai_wall_newspaper