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世は油揚げ戦国時代! うますぎる「ご当地油揚げ」5つとおすすめの食べ方

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豆腐マイスターが教える、うまいご当地油揚げ

はじめまして。豆腐マイスター*1のくどうしおりと申します。豆腐は主食のような存在で、年間1000丁以上の豆腐を食べ、全国の豆腐屋さんを約200軒訪ねながら、各地の豆腐にまつわる多様な食文化を取材・発信しています。

全国の豆腐屋さんに飛び回っている私(写真は高知県の豆腐屋さん)
全国の豆腐屋さんに飛び回っている私(写真は高知県の豆腐屋さん)

そんな私が豆腐に負けず劣らず大好きなのが、豆腐の友達である「油揚げ」。焼いてよし、煮てよし、挟んでよし、と活躍の幅が広く、調理法によって、サクサク・カリカリ・フワフワ・染み染み……と、いろんな表情を見せてくれる食材。そしてお酒が好きな人からも根強く愛される“いぶし銀”な食材です。

江戸時代から庶民に幅広く普及した油揚げは、各地方に根付いていく過程でその土地の気候風土に合った形、大きさに変化したと言われます。当時から“贅沢品”ではなく私たちの生活に密着してきた手頃な食材だからこそ、呼び名や調理法にも地域性が生まれてきました。

現在でも地域ごとに異なる、昔ながらの手法が代々受け継がれ「ご当地油揚げ」として独自進化を遂げてきました。

そして最近、この「ご当地油揚げ」が盛り上がっているのです!

お取り寄せできる種類もたくさん増えており、まさに時代は地方の油揚げが群雄割拠する「ご当地油揚げ戦国時代」に……!

今回は、私が食べてきた数あるご当地油揚げの中から厳選し、お取り寄せが可能な「ご当地油揚げ」お酒がとまらなくなる、おすすめの食べ方をご紹介します。日本各地に健在する個性豊かなおいしい油揚げがあれば、自炊も楽々、家飲みのおつまみもグレードアップ間違いなし!

今、ご当地油揚げがアツい

冒頭でも述べたように、ご当地油揚げはまさに群雄割拠の時代。

熟練の職人が丁寧に手揚げした油揚げは、一枚一枚の顔つきが違い、不均一さがゆえに一口食べるごとに異なる表情を見せてくれるのも「ご当地油揚げ」の大きな魅力です!

例えば、雪深い北陸地方では、冬の間肉や魚が手に入らずタンパク質が不足しがち。それを補うために分厚く、フカフカ食感の油揚げが発展したといわれています。対して、夏に蒸し暑くなる九州では湿気で油揚げが腐らないよう、保存のために水分を抜いてカラカラに乾燥させたものが存在しています。

では、ここから実際に全国の豆腐・油揚げを食べてきた私のオススメ油揚げを紹介していきたいと思います。

油揚げ界の王様!福井県坂井市のフカフカ“座布団”揚げ

大きさの比較のため、マッチ箱と撮影
大きさの比較のため、マッチ箱と撮影
油揚げの消費量・購入額が高いことで知られる福井県には “座布団”のようなフカフカな厚みで正方形の油揚げがあります。山間の地域では、タンパク質や脂肪を油揚げから取るため頻繁に食べるようになりました。浄土真宗の信仰が深いこの地域では、法要に振舞われる精進料理にも油揚げが欠かせません。

圧倒的人気を誇るのは福井県坂井市(旧・竹田村)で大正14年創業する老舗豆腐店の谷口屋です。圧搾一番搾りの菜種油でじっくり長時間かけて揚げた、谷口屋の看板商品「谷口屋のおあげ」は、まるでクロワッサンのようなエアリー感と弾力がたまりません! 肉や魚に負けない「主役級」の存在感を放ちます。

「谷口屋」のおあげを使ったおすすめのおつまみ

塩辛バター炒めon座布団揚げ
塩辛バター炒めのせ

地元ではシンプルに出汁醤油や大根おろしで食べたり、炊き込みご飯に入れるのが定番ですが、塩辛を刻んだネギとバターで炒め、さいの目に切って焼いた油揚げかければ、お酒のアテに最高! 濃厚な塩辛バターが軽めの食感と合わさった至高のハーモニーを味わえます。白ワインや日本酒のお供にもぴったりです。
照り焼き風やラー油など、こってり系や辛味調味料を合わせても油揚げの存在感が霞まず味わえます。もちろんお出汁をしっかり吸わせて煮物にするなど調理法次第で変幻自在。大きいので半分ずつ食べ方を変えても良いですね。

煮ても、挟んでも!新潟県長岡市の「栃尾揚げ」

新潟県長岡市の「栃尾揚げ」

長岡市の旧・栃尾地区の名物、江戸時代から存在すると言われる「栃尾揚げ」。この地域には16の専門店が集結しています。揚げ立ての油揚げにトッピングが添えられ、その場で食べられるお店もたくさんあり、まさに油揚げの聖地として知られています。

栃尾揚げの厚みは平均して3cm、長さは約20cmの長方形。地元では、「あぶらげ」と呼ばれます。この油揚げは250年ほど前に火の神様として崇められていた栃尾の秋葉神社の参拝人のお土産として当時の豆腐屋が考案したと言われ、馬市(馬の売買)が盛んだった旧栃尾地区では、仲介人の酒のアテとして好まれたそうです。お酒との相性は言わずもがな、ですね!

中でも、あげ家 松兵衛の「謹製 栃尾の油揚げ」は、新潟県産大豆の甘みと旨み、パリッと心地よい皮の歯切れを感じる一枚。通常、栃尾の油揚げは、限られたスペースで油を切るために、金属串に貫通させて吊るす際にできる小さな「穴」が空いていますが、あげ家 松兵衛では、商品の鮮度キープの観点からも、広いスペースを確保して平置きで油切りを行い、厚みにムラのない「穴のない栃尾揚げ」を製造しています。

また通常よりも日持ちの長い、味噌漬けや明太マヨ・キムチ風味の栃尾揚げもあります。そのまま焼くだけで食べられて、ご飯のお供やおつまみにぴったりです。小さめ目に切ってキャベツやネギ、もやしなどと一緒に炒めれば漬けダレも無駄なく使いきれます。

「栃尾の油揚げ 惣菜詰め合わせ」を詳しく見る
「栃尾 あぶらあげの味噌漬け」を詳しく見る

栃尾揚げを使ったおすすめのおつまみ

栃尾揚げのひき割り納豆はさみ焼き
ひきわり納豆はさみ焼

「栃尾揚げ」の魅力は調理の楽しさ。切り込みを入れてネギ味噌や納豆、チーズなどを挟み焼きするのが定番です。
私のイチ押しは、ひきわり納豆のはさみ焼き。栃尾揚げを半分に切れ目を入れてひきわり納豆をはさんでオーブントースターなどで焼くだけ。納豆の粒が細かいので油揚げからこぼれにくく、食べやすいです。冷えたビールはもちろん、新潟県産の日本酒に合わせれば、至福のひとときが味わえます
地元では、煮物やおでんにも栃尾揚げを頻繁に使うそうです。この時期には、お好みの野菜とともにほんのり甘めの出汁で煮て、一晩冷蔵庫で冷やしてから食べる「冷製おでん」もおすすめです。

カリッと角までおいしい!宮城県仙台市の「三角揚げ」

宮城県仙台市の「三角揚げ」

「ミヤギシロメ」*2を代表に大豆栽培が盛んな宮城県。仙台市の豆腐店では三角形の油揚げをよく見かけます。定義山・西方寺の参道にある豆腐店では、揚げたてアツアツ油揚げがイートインできます。もちろん現地で揚げたて油揚げが味わえれば最高……なんですが、最近ではお取り寄せできる三角揚げも登場しています。

宮城県産大豆の風味もしっかり味わえるマルト食品の「みやぎ三角揚げ」は、どことなく懐かしさを感じるパッケージ。福井や新潟の油揚げに比べると軽めの食感なので揚げ物特有の重さを感じず、ひとりでも一枚ペロリといただけます。

三角揚げを使ったおすすめのおつまみ

炙り三角揚げ
炙り三角揚げ
現地同様、三角形の角をカリッカリになるまでトースターやフライパンで炙り、七味とめんつゆや出汁醤油をかけて、究極シンプルにいただきましょう。香ばしい香りとサックサクの歯ざわりがもうやみつきに! ビールのお供に完璧ですね。 

しっとりはんなり、京都の「おあげさん」

上田の手あげ

京都独特の油揚げのことを、地元の人は「おあげさん」と呼んでいます。「京あげ」と呼ばれることも。

京野菜との相性も良いことから、短時間でさっと作れる家庭料理「おばんざい」に、重宝してきた食卓に欠かせない食材です。京都のローカルな大衆居酒屋には、焼いた油揚げに大根おろしをかけ、“あげ”と“おろし”の組み合わせから“エレベーター”と呼ばれるメニューも存在します。

「おあげさん」は長さ25~30cm、幅が約12cmと大判です。福井や新潟の油揚げに比べて、薄く密度が高いので、しっとりとした肉厚な食感が楽しめます。揚げ油は香り豊かな菜種油が主流で、揚げ色ははんなりと薄いものが多く、味も上品。京都の食文化の中心にある「おだし」との調和を追求した油揚げとも言えます。

地元スーパーでも支持されている「おあげさん」と言えば、上田とうふの「上田の手あげ」

職人が一枚ずつ低温・高温の2度揚げで膨らませた肉厚な油揚げは、菜種油の香ばしさとジューシーなおいしさを実感できる一枚です

おあげさんを使ったおすすめのおつまみ

上田の手あげ 南蛮漬け
南蛮漬け

これからの季節には、さっぱりとした南蛮漬けがぴったりです。出汁、しょうゆ、みりん、砂糖、鷹の爪を火にかけて合わせた調味液に、油揚げとお好み野菜を浸して冷やすだけ。夏の暑い日、これを肴に冷酒でぐいっとやれば、えも言われぬ爽やかなおいしさが口いっぱいに広がります。
魚や肉を揚げる手間がなく、酸味が油揚げのコクでマイルドになっておいしいですよ。作り置きの常備菜としても役立ちます!

新食感の乾物油揚げ! 熊本県の「南関揚げ」ほか

熊本県の南関あげ

九州や四国など夏の暑さが厳しい地域では、どうしても腐りやすくなってしまう油揚げを長期保存できるように、さらに薄くし水分を極限に飛ばして乾物にした油揚げが生まれました。これぞ、冷蔵庫が発達する前の先代の知恵です。

九州・熊本の名産として名高い塩山食品の「南関揚げ」は、圧縮機にかけて水分を抜いた後に揚げているため、最大3カ月常温保存が可能です。

一見カラッとあげたお煎餅のようにも見えますが、水に戻すと柔らかな油揚げになります。手で砕いてみそ汁に加えたり、出汁や調味料を吸わせておいなりさんのお揚げにも。カレーに加えるのもおすすめです! すぐに使えるように短冊切りになったタイプは手に油がつかずに便利ですね。


熊本と並び有名なのが、南関揚げ同様に長期常温保存がきく愛媛の松山市のご当地油揚げ「松山揚げ」。南関揚げ同様に長期常温保存がきく乾燥タイプの油揚げです。こちらもエアリーなふわふわ食感で煮ると弾力が出ます。

「松山あげ」を詳しく見る

南関揚げを使ったおすすめのおつまみ
熊本県の南関あげを使ったきつね丼
きつね丼
じっくり煮込むとモチっとした弾力が出やすいのが特徴です。出汁に酒・醤油・みりん・砂糖を加えた煮汁で油揚げと玉ねぎをサッと煮て卵でとじた「きつね丼」は、油揚げに煮汁が染み込みモチモチ&ジューシー。〆の一品にどうぞ!

お取り寄せ油揚げをおいしく食べるコツ!

さて最後に、みなさまにご当地油揚げの魅力を十二分に味わっていただくための調理、保存方法もまとめておきます。

・油抜きをしないこと!
味の決め手でもある油は、作り手が油揚げとの相性を追求して良質なものを選んでいます。基本的に油抜きをせず、到着後早めに食べるのがおすすめです。

・すぐに食べない時は冷凍庫で保存!
到着後にすぐに食べない場合は冷凍庫で保存ができます。冷凍したまま調理も可能で、食感もキープできます。約1カ月を目安に食べ切りましょう。
おつまみにも一品料理にもなる油揚げは、使い勝手の良い食材です。全国津々浦々に伝わる油揚げは、各地域に根ざした個性やスタイルがあって、食べ比べてみるとその奥深さに魅了されると思います。 気になる「ご当地油揚げ」がありましたら、ぜひ取り寄せて、ご当地レシピを再現したり、創作レシピを考案してみてくださいね。


【おまけ】油揚げのアレンジは無限大

冷蔵庫で余りがちな食材でもある油揚げですが、もしも余ってしまっても簡単調理で一品料理ができちゃいます。

みんな大好き油揚げピザ
油揚げピザ
油揚げピザ
例えば、油揚げをピザ生地かわりに使用した「油揚げピザ」はお子様にも大人気。お好みのソースや具材、チーズをのせてトースターで焼くだけです。 定番のトマトソースはもちろんですが、味噌マヨネーズに刻んだ青しそとしらすをのせた和風ピザは、大豆の風味との相性抜群です。福井の座布団あげや栃尾揚げでふっくらタイプ、京都の油揚げなら薄めのしっとりタイプに仕上がります。

気分を変えたい時にはフレンチトースト風のアレンジ!
フレンチトースト風油揚げ
フレンチトースト風 油揚げ

砂糖、牛乳(または豆乳)、ほんの少しの塩を混ぜ合わせた卵液に、一口分に切り分けた油揚げを染み込ませフライパンで焼くだけです。油揚げの油分があるのでバターはお好みで加えてください。通常よりも気持ち塩気を効かせると、甘塩っぱさが病み付きになります。カロリーのことは出来れば忘れてください……(笑)

著者:工藤詩織(くどうしおり)

幼少から豆中心の食生活を送り、豆腐がいつも暮らしの中心にある無類の豆腐好き。日本語教師を目指して勉強する過程で、食文化も一緒に伝えたいと「豆腐マイスター」を取得。国内にとどまらず海外でも、手作り豆腐ワークショップや食育イベントを実施して経験を積む。2018年より「往来(おうらい)」をテーマに本格的に活動を開始。豆腐関連のイベント企画・メディア出演などを通して、各地で豆腐文化の啓蒙活動を行っている。「マツコの知らない世界」(TBS系)、「ヒルナンデス」(日本テレビ系)、「ごごナマ」(NHK)等へ出演。
Instagram:@tofu_ a _day
Facebook:まめちゃんのダイズバーシティ計画!
連載:十人豆色~とうふのうまみ旅~

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公開記事や発掘ネタなど、あれやこれやつぶやいています!

今回紹介した商品

「谷口屋のおあげ」を詳しく見る
「あげ家 松兵衛 栃尾の油揚げ」を詳しく見る
「栃尾の油揚げ 惣菜詰め合わせ」を詳しく見る
「栃尾 あぶらあげの味噌漬け」を詳しく見る
「みやぎ三角あげ」を詳しく見る
「南関あげ」を詳しく見る
「松山あげ」を詳しく見る

※2020年6月17日13:10ごろ、記事の表現を一部改めました。

*1:一般社団法人日本豆腐マイスター協会が認定した資格。豆腐づくりのプロフェッショナルではなく、豆腐の選び方、豆腐料理の作り方、手づくり豆腐の作り方を学び、豆腐を使いこなすスキルを身につけた消費者

*2:宮城県発祥の大豆の栽培品種