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全国47都道府県のぽん酢を全部飲んだら語彙力が足りなかった

ポン酢とは、柑橘類の果汁に酢酸を加えたもの。ただし一般的には、そこに醤油を混ぜたポン酢醤油も「ポン酢」と呼ばれます。今回は47都道府県から、ご当地感あふれるポン酢を1種類ずつピックアップ。それらを全て試飲し、味わいを表現するレビュー記事です。ともすると、全て「すっぱくてうまい」「すっぱくなくてうまい」というシンプルな感想になりがちなので、「美しい日本語の辞典」(小学館)の力を借りて、各ポン酢に合う言葉を紹介していきます。

全国47都道府県のぽん酢を全部飲んだら語彙力が足りなかった

ライターの岡田悠と申します。

冬といえば鍋。鍋といえばぽん酢。ぽん酢さえ飲めば、どんな冬だって越せる。


ぽん酢が素晴らしいのはその多様性である。近所のスーパーに行けば何種類ものぽん酢がずらりと並んでいる。面白いのが、その産地がどれもバラバラであることだ。北から南まで、日本全国津々浦々でぽん酢が生産されている。まさに一億総ぽん酢時代である。


狭義のぽん酢は柑橘類の果汁に酢酸を加えたものとされるが、この時点でゆずやレモンなどをはじめとして日本各地にさまざまな柑橘類が存在する。さらに広義のぽん酢はそれに醤油を混ぜた「ぽん酢醤油」であり、醤油は醤油で全国に蔵がある。
つまり「果汁 × 醤油」の組み合わせはほぼ無限に存在してると言って過言ではなく、その黄金の方程式がぽん酢のダイバーシティを支えているのである。


われわれが住むこの国には、まだ知られざる魅力がたくさん潜んでいる。あらゆるぽん酢を飲むことは、日本を深く知ることだ。かつて大量の醤油を飲み比べる最高の記事があったが、僕もそうやってぽん酢に浸りたい。そこで醤油記事の作者patoさんに「ぽん酢を大量に飲んでもいいか」と確認してみたところ、大丈夫ですとのお返事を頂いた。これでぽん酢を大量に飲める。


時は満ちた。そうして僕は日本全国47都道府県のぽん酢を集め、北から順番に飲んでいく「ぽん酢日本縦断の旅」に出ることにしたのである。

 

ぽん酢を集める

近所の店を回り、買い集めたぽん酢は10種類。残り37種類を入手する必要がある。地域のぽん酢は現地でしか手に入らないことも多い。ここはインターネットの力を借りて、各都道府県のぽん酢を1つ1つ購入することにした。

「日本を深く知ることだ」とか言いながら正直この時点で心が折れかけた。しかし一旦走り出した手前、もう止まることはできない。

なお、ぽん酢の選別は僕の独断と偏見である。なんとなくその地方っぽいものを選んだつもりだが、全て直感に基づくものだ。ぽん酢ファンにおかれてはあのぽん酢、このぽん酢がなぜないのと疑念を抱かれるかもしれないが、また次の機会に試すのでご容赦願いたい。

無心でぽん酢を探し、超感覚で選びぬき、ようやく全てを買い終わった時、ラジオからはクリスマスの夜を祝う音楽が流れていた。

 

そして正月が明けた頃。届いた。

ダンボールの山。全部ぽん酢


47都道府県のポン酢が我が家に集結した


ぽん酢はワレモノなので厳重な包装が施されている。ダンボールを1つ1つ開け、包装紙をねじ切る。ねじ切る。ねじ切る。気が狂う。


こうして集まったぽん酢たちがこちらである。


ポン酢大集合


それぞれ背丈が違って、卒業アルバムの集合写真みたいになった。この時点ですでに満足したのだが、本番はここからである。北海道から沖縄まで、長い長いぽん酢の旅が始まるのだ。いくぞ……?いっちゃうぞ……?


やっぱやめようかな……


いっちゃえ!!!!!

 

北海道・東北地方

北海道:天然蔵ゆず山のぽんず(伊賀越)

北海道:天然蔵ゆず山のぽんず


まずは北海道からだ。この北の大地でもぽん酢は生産されている。種類としては王道のゆずぽん酢であるが、特徴は北海道昆布が丸々一本入っているという点だ。

 

今回の飲み比べのパートナーには豆腐を採用した。


ポン酢飲み比べのパートナーには豆腐を採用した


刺身や鍋といった自己主張の強いメンバーではなく、あくまでも脇役に徹し、ぽん酢の味を公平に引き立ててくれそうな気がしたからだ。あと安いからだ。

ひたすら豆腐でポン酢を飲み比べていく


感想としては、すっぱくてうまい。ほのかに昆布の風味が香ってくるが、あくまでも主役はゆずである。豆腐は冷奴のままだが、それでも箸が進む。出だしは順調だと言えよう。

 

「天然蔵ゆず山のぽんず」を詳しく見る

 

青森県:おろしりんごと柚子のぽん酢しょうゆ(カネショウ)

青森県:おろしりんごと柚子のぽん酢しょうゆ


ここからどんどん南下していく。青森県といえばやはりリンゴで、地域性の鏡であるぽん酢にもその特産が生かされている。ゆずにおろしリンゴの甘味が調和して、適度にすっぱくてうまい

 

「おろしりんごと柚子のぽん酢しょうゆ」を詳しく見る

 

秋田県:マルイチしょっつるポン酢(マルイチしょうゆ)

秋田県:マルイチしょっつるポン酢


しょっつるとは、秋田県で作られる魚醤のこと。ハタハタなどの魚に塩をふり、1年以上かけて熟成させるそうだ。そのしょっつるをベースに作られた秋田のぽん酢は……うん、ちょっとだけすっぱくてうまい

 

「マルイチしょっつるポン酢」を詳しく見る

 

岩手県:味付ぽん酢柚子 君がいないと困る(八木澤商店)

味付ぽん酢柚子 君がいないと困る(八木澤商店)


君がいないと困る。タイトル買いの一品である。
味としてはかなりすっぱくてうまい。マラソン中などにがぶ飲みしたい。

 

「味付ぽん酢柚子 君がいないと困る」を詳しく見る

 

宮城県:ふわっと香るゆずポン酢(ヤマカノ醸造)

宮城県:ふわっと香るゆずポン酢(ヤマカノ醸造)


気仙沼周辺は、日本におけるゆずの北限だそうだ。北海道から南下してきて、ここで初めて地産のゆずを使用したぽん酢が現れたわけだ。そのゆずの味は……すっぱくてうまい。うん。すっぱい。うん。


もうお気づきだろうが、すでに語彙が切れかけている。だいたい「すっぱくてうまい」しか言っていない。ぽん酢の多様性に僕の語彙力が追いつかない。


困った。これではあと40回くらい「すっぱくてうまい」を繰り返すだけになってしまう。もはやスパムだ。一生グルメ記事を書けなくなってしまう。


悩んだ末に、僕は一冊の本を購入した。その名も、「美しい日本語の辞典」である。「後世に残したい日本語2100語を収録」した辞典らしい。

「美しい日本語の辞典」


このぽん酢の旅には、日本の奥深さを知るという目的がある。ならばその表現も美しい日本語で行うべきではないか。しかし美しい日本語を知らないので辞典に頼ることにしたのだ。


語彙力が勝つか。ぽん酢が勝つか。いま、戦いの火蓋が切って落とされた。この表現も辞典に載ってた。

 

「ふわっと香るゆずポン酢」を詳しく見る
「美しい日本語の辞典」を詳しく見る

 

福島県:みそポン酢(会津天宝)

福島県:みそポン酢(会津天宝)


今回飲み比べる47のぽん酢の中で、唯一味噌の名を冠しているのがこの「みそぽん酢」だ。
出オチかと侮っていたら、これがなかなか、いや、かなりいける。味噌の味がするのは最初だけで、飲み込む頃にはゆずの風味が喉を走る。入り口味噌で、出口ゆず。その間の独創的な変化を楽しむことができる。これはやられた。四字熟語で表現するならえーっと、えーっと……あった。「独出心裁」だ。

 

「会津天宝 みそポン酢」を詳しく見る

 

独出心裁(どくしゅつしんさい):表現や発想が他とは違っていて、並ではないこと。
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山形県:りんご酢のぽん酢(テンスイ醤油)

山形県:りんご酢のぽん酢(テンスイ醤油)


青森県に引き続きリンゴを使ったぽん酢だが、青森のそれがすりおろしだったのに対し、この天童市のぽん酢はリンゴ「酢」が原料になっている。よって比較すると酢の酸味が際立ち、リンゴはほのかに香るばかりである。
辛口ながらも懐の深さを感じさせるその味わいは、天童に行った時に眼前にそびえていた「麗色」を彷彿とさせる。麗色。かっこいい日本語だな。この調子だ。

 

「テンスイ醤油 りんごぽん酢」を詳しく見る

 

麗色(れいしょく):うららかな景色。美しくのどかな景色。
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関東地方

栃木県:山星島崎 ゆずぽん酢(山星島﨑)

山星島崎 ゆずぽん酢(山星島﨑)


南下していくに連れて柑橘類の割合は上がっていく。果たして語彙力は足りるのだろうか、不安で胸がいっぱいだが、とにかくぽん酢を飲み続けるほかない。


さてこの栃木県のゆずぽん酢は、創業330年以上の老舗醤油蔵で作られたものだという。330年前といえば江戸幕府、徳川綱吉の時代。そんなバイアスがかかってか、どこか歴史を感じる風味である。移り行く時代の中で継ぎ足され続けてきた醤油、そんな気がする。
「桃栗三年柿八年」、栃木のぽん酢330年。

 

「山星島崎 ゆずぽん酢」を詳しく見る

 

桃栗三年柿八年(ももくりさんねんかきはちねん):何事も、成し遂げるまでに相応の年月が必要だということわざ。
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茨城県:ポン酢ゆずカツオ(柴沼醤油)

茨城県:ポン酢ゆずカツオ(柴沼醤油)


ゆずをベースに、ほんのりとかつおの香りが漂ってくる。しかしそれより、ボトルが直方体でかっこいい。これだけぽん酢の瓶を並べていると、やはりその見た目も気になってくる。すらっと伸びたその体躯は、ゆず界の読モと呼んで差し支えない。
茨城県にはそこまで詳しくないが、その美しい見た目には思わず惚れてしまいそうになる。「岡惚れ」だ。

 

「ポン酢ゆずカツオ」を詳しく見る

 

岡惚れ(おかぼれ):あまり親しく接したことのない人を、わきからひそかに恋い慕うこと。
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千葉県:昆布ぽん酢(ヤマサ醤油)

千葉県:昆布ぽん酢(ヤマサ醤油)


もう千葉県まで来た。ぽんぽん進んでいいペースだ。ぽん酢だけに。


千葉県は醤油業界の雄、ヤマサ醤油のぽん酢である。ほとんどのスーパーで見かけるであろうこの定番ぽん酢は、しかし改めて味わうと昆布の香りが抜きんでていて、口の中で潮騒が鳴る。定番にはそれなりの理由があり、他のぽん酢と並べてもちゃんとその個性は際立っているのだ。「囊中の錐」というやつである。

 

「ヤマサ醤油 昆布ぽん酢」を詳しく見る

 

囊中の錐(のうちゅうのきり):すぐれた人は衆人の中にいても自然と目立つことの例え。
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群馬県:上州赤しそぽん酢(ユアサ)

群馬県:上州赤しそぽん酢(ユアサ)


小皿に傾けると鮮やかな紫色が溢れ出す。シソである。一口味わうと、その確信が強まる。まごう事なきシソである。前橋産の赤シソとぽん酢の相性は抜群で、爽快感が口を駆け巡る。刻み玉ねぎもアクセントとして効いていて、さっぱりとした味わいが非常に好みだ。
しばらく正統派のゆず系ぽん酢が続いてきた中で、この群馬は優れたアクセントになった。その華やかな見た目といい、ぽん酢の「お色直し」の役割を果たしてくれたのだ。

 

お色直し(おいろなおし):結婚披露宴の途中で、花嫁が式服を脱いで別の色模様のある衣服に着替えること。
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東京都:東京多摩ゆずポン酢プレミアム(近藤醸造)

東京都:東京多摩ゆずポン酢プレミアム(近藤醸造)


首都、東京。その代表として選ばれたのが、こちらのプレミアムぽん酢である。さすが東京、シティ感溢れる洒落たパッケージだ。真っ黒なラベルに金色で記されたロゴは、空に浮かぶ月を思わせる。
味についても、多摩地区で育てられたゆずがさらりと効いていて、上品な口当たりだ。山手線の始発で朝帰りしようとして、ふと空を見上げると薄っすら月が浮かんでいる。まるでそんな情景が浮かんできた。「残んの月」だ。

 

残んの月(のこんのつき):明け方、空に残っている月。
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埼玉県:はつかりポン酢醤油(松本醤油)

埼玉県:はつかりポン酢醤油(松本醤油)


実は埼玉県のぽん酢を入手するのが一番難しかった。検索してもなかなか手頃な商品が出てこない。埼玉だけ飛ばすか? と逡巡していたところ、こちらのはつかりぽん酢が見つかったのだ。
フタを開けた瞬間に柑橘の匂いが、そして口に入るや否や「だいだい果汁」の強く鋭い酸味が、先制攻撃を仕掛けてくる。『翔んで埼玉』を思わせる破竹の展開である。これは戦だ。ぽん酢の戦なんだ。表現するなら「血祭り」だ。

 

血祭り(ちまつり):戦いの手始めに、威勢良く、最初の相手を片付けること。
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神奈川県:湘南ぽんず レモンとみかん(日本のうまい)

神奈川県:湘南ぽんず レモンとみかん(日本のうまい)


あえていうと、苦い。柑橘の苦味がじんわり舌に染み込んでいく。ビールでいうとIPAのような、そういうどっしり感のある苦味である。
しかし、これはむしろ柑橘が本来有している構成要素の1つである。通常のぽん酢では砂糖や蜜で覆い隠された柑橘の素顔。それをさらけ出し、そのまま提供したのがこの商品なのだ。表現するなら柑橘の「楽屋顔」である。柑橘に楽屋はない。

 

楽屋顔(がくやがお):楽屋、休憩部屋にいるときの素顔。
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中部・北陸地方

新潟県:とび魚ぽん酢ドレッシング(越後良寛しょうゆ)

新潟県:とび魚ぽん酢ドレッシング(越後良寛しょうゆ)


47都道府県のぽん酢パッケージ。さまざまなデザインが存在すれど、この新潟県のぽん酢が最高にかっこいい。ジャケ買いである。深い青の背景に「Tobiuo ponzu」の白抜き。ポップなトビウオのイラストが添えられており、商品の特徴もしっかりと伝わる。この瓶だけでも部屋に飾りたい。
そして見た目もさることながら、味も相当いける。マイルドな酸味に、とびうおだしの風味がしっかりと漂ってくる。豆腐や鍋だけではなく、揚げ物などさまざまな料理に試してみたい逸品だ。神は二物を与えた。ここまでの商品は珍しいと思う。表現するなら「優曇華」である。

 

優曇華(うどんげ):仏教で三千年に一度開くとされる花。転じて、きわめて珍しいもの。
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富山県:富山名産 ゆずポン酢しょうゆ(立山酒店)

富山県:富山名産 ゆずポン酢しょうゆ(立山酒店)


新潟県から一変、富山県のゆずぽん酢しょうゆは小太りの瓶にゆずが大きくアピールされており、戦隊モノでいうと黄色のポジションである。
その風味はオーソドックスで、フタを開けた瞬間に、「ゆず入ってんな〜、入ってんな〜」と察するほどにゆずの微粒子が鼻にまっすぐ向かってきて、そのまま脳天へと突き抜けていく。キリッとした辛口は、純粋にゆずに向き合った作り手の姿勢がうかがえる。ゆず「冥利」に尽きる、と言えるだろう。

 

「富山名産 ゆずポン酢しょうゆ」を詳しく見る

 

冥利(みょうり):ある立場・状態にあることによって受ける恩恵。
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石川県:いしりポン酢(カネイシ)

石川県:いしりポン酢(カネイシ)


「いしり」とは能登半島に古くから伝わる魚醤で、秋田県の「しょっつる」に並ぶ日本三大魚醤の1つらしい。いしりを原料にしたこのぽん酢は真っ黒な見た目とは裏腹に、味はマイルドで美味である。瓶も小柄でかわいい。そっと胸ポケットに忍ばせよう。
魚醤のコクが豆腐はもちろん、刺身にも合うし、天つゆとしてもオススメのようだ。卵かけご飯なんかにもいいかもしれない。多様な料理に合せてその顔を変化させる様子はまるで名役者であり、「梨園」にいそうなポン酢である。

 

「いしりポン酢」を詳しく見る

 

梨園(りえん):俳優の社会。演劇界。歌舞伎役者の世界。
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福井県:紅映梅果汁入りの梅ポン酢(エコファームみかた)

福井県:紅映梅果汁入りの梅ポン酢(エコファームみかた)


梅は今回唯一のエントリーだ。若狭の地で生産された「紅映梅(べにさしうめ)」が使われているこちらのポン酢。群馬の赤シソとは異なり、色はいたって普通である。赤シソはぽん酢と素晴らしい調和を見せたが、果たして梅はどうか。
一口飲むと、梅の爽やかな香りが一面に広がった。赤い梅の花が口内に咲き乱れる。口が3月になる。いいわこれ。パッケージの「さっぱリッチ」という表記は、涼しげな後味を的確に表現していた。見事な「余薫」である。

 

「紅映梅果汁入りの梅ポン酢」を詳しく見る

 

余薫(よくん):余った、残りの香り。あとに残る香り。
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長野県:七味ぽん酢(八幡屋礒五郎)

長野県:七味ぽん酢(八幡屋礒五郎)


七味だ。こちらも唯一のエントリーである。これはもう食べる前からうまいに決まっている。なぜなら七味は僕の大好物だからだ。加えてこの七味は、日本三大七味のうちの一つ、「八幡屋礒五郎」の七味である。はい、うまい。
もはや検証する必要もないが、一応その味を確かめてみる。ぽん酢の酸味と一緒に、上質な唐辛子の匂いがふわっと広がり、舌先がピリリと辛い。鍋に抜群に合うと思う。うまいのはもはや「空明」である。

 

「七味ぽん酢」を詳しく見る

 

空明(くうめい):隠し事がないこと。何もなく明らかなこと。
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山梨県:甲州白ワインぽん酢(ヤマフジ)

山梨県:甲州白ワインぽん酢(ヤマフジ)


個性的なぽん酢が続く。今度は甲州産の白ワインだ。ワインといっても加熱され、アルコールは抜かれている。醤油が使用されておらず、透き通った見た目はまるで白ワインそのものである。
小皿に注ぐと甘い匂いがする。思わずそのままいく。ああ、良い。ワインに加え、ぶどう酢も使用されており、それがちょうどいい塩梅の甘酸っぱさを生み出している。豆腐がなくともこれ単体で全然いける。「がぶ飲み」である。

 

がぶ飲み(がぶのみ):水や酒などを勢いよく大量に飲むこと。がぶがぶ飲むこと。
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静岡県:延命酢で作った美味しいぽんず(マルヤス近藤酢店)

静岡県:延命酢で作った美味しいぽんず(マルヤス近藤酢店)


うまっ……これうま!!!
めちゃくちゃ舌に合う一品が登場した。その名も「美味しいぽんず」。そのままだ。そのままで美味しい。なんて正直なんだ。
その味はいたってまろやかで優しく、かすかな甘みがある。「さわやか」のハンバーグにかけて食べてみたい。延命酢で作ったと表記されているが、その効果も「あらたか」な気がする。

 

「延命酢で作った美味しいぽんず」を詳しく見る

 

あらたか:神仏の霊験や、薬のききめなどが著しいこと。
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岐阜県:美濃 特選味付ぽん酢(内堀醸造)

岐阜県:美濃 特選味付ぽん酢(内堀醸造)


すだちとゆずを使用し、地元の昆布と鰹節の一番だしで作られたぽん酢。どうやらぽん酢好きには定番とされる一品らしい。確かにテレビで見たことがある。バランスのとれた味がするかと思いきや、意外としょっぱさが強く、単体で味わうよりは鍋の汁などと混ぜて食すのが良さそうだ。
調べてみると岐阜県にはこの他にもぽん酢がいろいろと存在するようだ。岐阜県はぽん酢界の「梁山泊」なのかもしれない。

 

「美濃 特選味付ぽん酢」を詳しく見る

 

梁山泊(りょうざんぱく):豪傑たちがあつまるところ。『水滸伝』を由来とする。
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愛知県:ミツカン 味ぽん(ミツカン)

愛知県:ミツカン 味ぽん(ミツカン)


ちょうど折り返し地点となる24本目。そこにこのお方がやってきた。ぽん酢界のトップランナー、味ぽんを販売するミツカンは愛知県に本社がある。ぽん酢といえばまずこの一本を想起する人も多いだろう。
改めて味わってみると、やはり王道感がすごい。ぽん酢単体でもなんか鍋の味がする。それくらい舌に深く刻まれた記憶なのだ。その安定感、抜群のバランス性を何に例えよう。弁当に例えよう。「幕の内弁当」だ!

 

「ミツカン 味ぽん」を詳しく見る

 

幕の内弁当(まくのうちべんとう):芝居の幕間に食べるものとして考案され、現在では最も一般的となった弁当。
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近畿地方

滋賀県:ぽん酢 ゆずの囁き(かねなか醤油店)

滋賀県:ぽん酢 ゆずの囁き(かねなか醤油店)


ぽん酢の旅もついに西日本に到達した。一気に飲むと塩分過多で死にそうなので、日をまたぎながら少しずつ味見を進める。


さて、滋賀県はゆずの囁き。なんとも詩的な名前である。囁くゆずというのは一体どんな味だろう。ワクワクしながらひとすすりすると……強っ! ゆずの主張思ったより強っ! こめかみに響く酸味である。
味は十分美味しいのだが、商品名との高低差に衝撃を受けた。囁きどころか、これは「叫び」だ!

 

叫び(さけび):強い感情を伴って発せられた、大きな声のこと。
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三重県:塩ぽん酢(ミエマン)

三重県:塩ぽん酢(ミエマン)


三重のミエマンの塩ぽん酢。色からわかる通り、山梨のワインぽん酢などと同じく醤油が含まれていない「狭義」のぽん酢だ。実は現在流通しているぽん酢のほとんどが醤油を加えた広義のぽん酢だそうで、その意味ではこの種のぽん酢はわりと珍しい。
普通にぽん酢としても活用できるし、醤油のしょっぱさが無いのでドレッシングとしても美味しい。「二刀流」の商品である。

 

「塩ぽん酢 ミエマン」を詳しく見る

 

二刀流(にとうりゅう):両手に1本ずつの刀を持って戦う剣術の流派。転じて、二つの物事を同時にうまく行えること。
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京都府:黒豆ぽん酢(七味屋本舗)

京都府:黒豆ぽん酢(七味屋本舗)


すらっとした出で立ち。真っ黒な容姿。そして京都。もうこの時点で格好良すぎる。漫画『BLEACH(ブリーチ)』に出てきそうである。強キャラの卍解(ばんかい)後の姿みたいだ。味も正直なところめちゃくちゃうまい。なんというか味に6次元くらいの立体感があって、舌で転がすと次々にその変化を楽しむことができる。
京都の名に恥じない奥ゆかしさだ。なかなかお値段は張るが、ぜひ試してもらいたい逸品である。表現するなら「高雅」だ。

 

高雅(こうが):気高く優雅なこと。上品でみやびやかなこと。
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奈良県:宮滝ぽん酢しょうゆ(梅谷味噌醤油)

奈良県:宮滝ぽん酢しょうゆ(梅谷味噌醤油)


こちらのぽん酢、テレビ番組で紹介されたり、「2018調味料選手権」で鍋物調味料部門の最優秀賞をとるなど、大変有名なぽん酢らしい。
一口飲んで、その優しい口当たりに、まるで春の陽気を感じた。そう、かつて修学旅行で訪れた、奈良公園のぽかぽかとしたあの陽の光。そして友達がいなかったので一人でぼんやり鹿を見つめていた、あのほんのりとした苦味。それらの記憶が舌の上で溶けていく。「うらうら」だ。

 

「宮滝ぽん酢しょうゆ」を詳しく見る

 

うらうら:日の光がのどかで明るいさま。
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大阪府:旭ポンズ(旭食品)

大阪府:旭ポンズ(旭食品)


ぽん酢の世界は「西高東低」と言われる。西日本の方がぽん酢に対するこだわりが強く、その種類も豊富とされているのだ。その代表格が大阪である。冒頭で、近所のスーパーに行けば何種類ものぽん酢が売られていると書いたが、大阪に行けばその単位が一桁違う。大阪で「ぽん酢を買ってきて」と頼むと「どのぽん酢?」と聞き返されるという話は有名だ。
そんなぽん酢大国で、圧倒的に支持されているのがこちらの旭ポンズだ。やしきたかじんも愛したというこのぽん酢は、群雄割拠の大阪においても定番の地位を築いている。その味は酸味が効いてまさに王道、特に水炊き鍋に非常によく合う。ぽん酢界の「王者」と呼べる逸品だろう。

 

「旭ポンズ」を詳しく見る

 

王者(おうじゃ):王道で天下を治める君。同類のもののうち最も実力のある者。
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兵庫県:淡路玉ねぎぽんず(ヒガシマル醤油)

兵庫県:淡路玉ねぎぽんず(ヒガシマル醤油)


ビンを傾けると、どろっとした半透明の液体が流れ出る。中にはすりおろされた玉ねぎが大量に混じっていて、それを冷たい豆腐ですくって食べる。口の中が、淡路島の玉ねぎで一気に満たされる。玉ねぎを丸ごと食っているようである。
そして僕はこの甘みになじみがある。なぜなら兵庫県は僕の地元だからだ。まるで幼なじみたいなこの風味は、古風にいえば「筒井筒」である。

 

「淡路玉ねぎぽんず」を詳しく見る

 

筒井筒(つついづつ):幼ともだち、幼馴染のこと。
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和歌山県:紀州みかんポン酢 みかポン(早和果樹園)

和歌山県:紀州みかんポン酢 みかポン(早和果樹園)


みかん生産量日本一を誇る和歌山県のぽん酢。当然みかんが入っている。入っているはずだが、色ではその存在を判別できない。フタを開けても、みかんの匂いがすることはない。
数滴を垂らし、舐めてみる。舌先が感知するのは酸味、じんわりと広がるのも酸味、飲み込んだ後に残るのは……甘い! ほんのり甘い香りが残る! みかんだ! 最後の最後で、ちらりと特産のみかんが顔を出した。この後味を持ってして、みかポンは完成するのだ。まさに「画竜点睛」である。

 

「紀州みかんポン酢 みかポン」を詳しく見る

 

画竜点睛(がりょうてんせい):物事を完成するために、最後に加える大切な仕上げのたとえ。
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四国地方

徳島県:みちこの有機ぽんず(阪東食品)

徳島県:みちこの有機ぽんず(阪東食品)


長い南下の旅もついに四国に突入した。四国といえばゆずにみかん、柑橘類の王国である。怒涛の酸味を覚悟しておく必要があり、今一度気を引き締めてかからねばならない。
しかし「みちこの有機ぽんず」は醤油のしょっぱさとゆずの酸味がちょうどバランスよく、四国の入り口としてはベストである。いきなり強烈な酸味がきていたら本州へ引き返すところだったが、みちこはもっと「慎ましやか」であった。ありがとうみちこ。

 

「みちこの有機ぽんず」を詳しく見る

 

慎ましやか(つつましやか):遠慮深くしとやかなさま。
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愛媛県:伊予柑ぽん酢(あいさと)

愛媛県:伊予柑ぽん酢(あいさと)


ご覧いただきたい、この色。このパッケージ。なんとわかりやすい訴求であろうか。そして見た目に違わず、首尾一貫してみかん(伊予柑)の味が炸裂する。特産品をここまで前面に押し出すスタイルは和歌山県の「みかポン」とは真逆の方向性であり、みちこの慎ましやかさとも異なっている。
しかしそのおかげでこのぽん酢は唯一無二の個性を放っており、愛媛らしさの塊と言える。わが道をいく姿にはみかんへの誇り高さ、気高さを感じずにはいられない。「狷介」だ。

 

「伊予柑ぽん酢」を詳しく見る

 

狷介(けんかい):自分の意志をかたく守って、他と妥協しないこと。
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香川県:四国生まれのぽん酢(高橋商店)

香川県:四国生まれのぽん酢(高橋商店)


高知のゆず、徳島のすだち、香川の醤油を使用したぽん酢。四国のトリオが協力体制を組んだその味は酸味が強く、商品名の通りザ・四国という感じがする。しかし三国である。
なぜ愛媛だけ仲間はずれなんだろう。まるで漫画『キングダム』において、秦に対して他国が合従体制を組んだ場面のようである。やはり愛媛がわが道を行きまくっているからだろうか。柑橘の世界における「合従連衡」と言えるかもしれない。

 

合従連衡(がっしょうれんこう):中国の春秋戦国時代において戦国七雄がとった一連の戦略。転じて、巧みな外交政策。
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高知県:ぽん酢しょうゆ ゆずの村 馬路村(馬路村農業協同組合)

高知県:ぽん酢しょうゆ ゆずの村 馬路村(馬路村農業協同組合)


高知県はゆずの生産量日本一。そしてゆずはぽん酢のメインストリート。すなわち高知県は大阪府と並ぶ、ぽん酢の王国、ぽん酢のシード権、ぽん酢の明星と呼べる存在である。
そんな王国でも一目置かれる存在が、この馬路村のぽん酢だ。味はガツンとゆずに正面から殴られるようなストレートパンチで、小細工など一切不要だという自信が感じられる。もちろんその味には「太鼓判」を押せる。ぜひ一度殴られてほしい。

 

「ぽん酢しょうゆ ゆずの村 馬路村」を詳しく見る

 

太鼓判(たいこばん):太鼓のように大きな判子。転じて、確実であるという保証。
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中国地方

岡山県:ももたろうとまとぽんず(大黒屋)

岡山県:ももたろうとまとぽんず(大黒屋)


トマトだ。桃太郎トマトだ。桃太郎トマトといえばトマトの国内シェア70%を占める最強のトマトであるが、実は大阪の会社が生産している。しかしこのぽん酢は岡山東商業高校がプロデュースしたとのことで、岡山のカテゴリーに入れても差し支えないだろう。岡山東商業高校のみなさん、ありがとう。
さて味はといえば、かなり好みである。トマトの甘みがやんわりと染み込み、豆腐などにはちょうど合う。酸味も少なく、飲みやすい。ていうかこれジュースでもいける。実際この後もちょくちょく冷蔵庫から出してつまみ飲みしている。トマトに「首ったけ」である。

 

「ももたろうとまとぽんず」を詳しく見る

 

首ったけ(くびったけ):相手にすっかりほれこんで夢中になること。首までどっぷり浸かるような状態が由来。
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鳥取県:梨ぽん(北國)

鳥取県:梨ぽん(北國)


なんだろうこれは。不思議な味である。
大好物の梨に釣られて買ってみたものの、これは本当に梨なのだろうか。甘いといえば甘いのだが、同時にお酒のような芳香が匂い立つ。これまで飲んだどれにも似ていない。何度も味わって謎を解きたくなるような、ミステリー小説のようなぽん酢である。「通」向けの一品と言える。

 

通(つう):あることに精通している人。
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島根県:浜守の塩ぽん(浜田の海で生活する会)

島根県:浜守の塩ぽん(浜田の海で生活する会)


ぽん酢の旅も残り10ちょっと。もう豆腐の味は忘れた。酸味と共に駆け抜けるのみだ。


こちらは三重県に引き続き、2本目の塩ぽん酢である。透明感のある液体はさらりとした口当たりで、その酸味はまさに定石通り。塩という言葉に引きずられそうになるが、純然たるぽん酢だと言える。醤油も含まれていない「狭義」のこのぽん酢は、生徒会長っぽいといういうか、ひときわ「真面目」な印象を受けた。

 

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真面目(まじめ):うそやいいかげんなところがなく、真剣であること。
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広島県:あかぽん(オタフクソース)

広島県:あかぽん(オタフクソース)


辛え〜〜〜!!! めっちゃ辛え〜〜〜〜〜!!
びっくりしたわ。確かに唐辛子と書いてあるし、ぽん酢の色も真っ赤なんだけど、それでも予想の5倍辛かった。ぽん酢のノリでごくごく飲むもんじゃなかった。ぽん酢というより、唐辛子ソースにぽん酢を混ぜたイメージだ。オタフクソースってこんなの作るの? 長野県の七味ぽん酢よりかなり辛い。口に燃え盛る「燎原の火」だ!

 

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燎原の火(りょうげんのひ):勢いが盛んで防ぎ止められないことの例え。「りょうげん」は野原に火をつけること。
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山口県:ぽん酢しょうゆ ふくしょうゆ(大津屋)

山口県:ぽん酢しょうゆ ふくしょうゆ(大津屋)


まだ広島のダメージが残っている。何であんな辛いんだ。他のぽん酢で調和しなければ。
山口といえばフグ。かっこよく言えばふく。FUKU。このぽん酢しょうゆは、ふくを美味しく食べるために作られたというから、贅沢である。
ペロリと舐めると、萩特産の果実「だいだい」が爽やかに広がる。ていうかそれよりふく食べたい。ふく食べさせて! そしたらもっといいレビュー書けるから!! ふくをくれ!!! ふく食いてえ……僕はしばし「煩悶」した。

 

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煩悶(はんもん):悩み悶え苦しむこと。
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九州・沖縄地方

福岡県:博多華味鳥 博多ぽん酢(トリゼンフーズ)

福岡県:博多華味鳥 博多ぽん酢(トリゼンフーズ)


博多の水炊き料亭謹製のぽん酢。意外にも「酢」が強い、かなり酢寄りのぽん酢である。これはこれで新鮮だ。博多の鉄板餃子によく合いそうである。ていうか博多に行って食べたい。ラーメンやもつ鍋も食べたい! 博多行かせてくれ!! いいレビュー書けるから!!!
これだけ日本全国のぽん酢を試してみると、むくむくと湧き上がる旅行衝動に収まりがつかない。博多に「垂涎」状態だ。

 

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垂涎(すいぜん):よだれが垂れるほど食べたいこと。手に入れたいと熱望すること。
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長崎県:ゆず醤油 かけぽん(チョーコー醤油)

長崎県:ゆず醤油 かけぽん(チョーコー醤油)


正直なところ、もうゆずはいいよ、十分だよと、そう思っていた。間違っていた。慢心だった。その心の隙に染み渡るように、この「かけぽん」は僕の舌を滑らかに泳いでいく。ゆずがそこにあるのに、そこにない。シュレディンガーのゆず。決して強く主張しないのに、しっかりとしたゆずの風味が下支えしている。これまで出てきたゆずぽん酢の中で、正直一番好きかもしれない。
僕はかつて長崎で見た景色を思い出した。「つばき公園」という公園で、軍艦島を背景に咲き乱れる椿の花。そんな華麗な景色がこのぽん酢には広がっている。「列列椿」だ。

 

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列列椿(つらつらつばき):椿の花が多く並んで咲いている様子。
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佐賀県:キヌアぽん酢(丸秀醤油)

佐賀県:キヌアぽん酢(丸秀醤油)


キヌアとは標高4,000メートルの南米アンデスで、数千年前から栽培されている穀物のことらしい。アンデス山脈といえば、昔行ったペルーを思い出す。ペルーでは年間を通じてほとんど雨が降らないと聞いていたのだが、アンデス山嶺から望むマチュピチュには小雨が降っていた。冷んやりとした空気が肌にまとわりつく感覚が、妙にリアルに思い出されるのである。
キヌアぽん酢の味はむき出しの酢といった感じで、あの雄大でむき出しの自然、「ぱらぱら雨」のアンデス山脈を彷彿とさせた。

 

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ぱらぱら雨(ぱらぱらあめ):まばらに弱い雨が降るさま。
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熊本県:ほんなこつデコポン! 火の国ぽん酢(ホシサン)

熊本県:ほんなこつデコポン!火の国ぽん酢(ホシサン)


「ほんなこつ」とは方言で「本当に」との意味らしい。訳すと「マジでデコポン」ということになる。きっと切れ味のある酸味がするに違いない。そう思って飲んだところ、裏切りの甘さである。かなり甘い。子ども受けしそうな味だ。マジでデコポン?
そして写真には写っていないが、背面にはあのキャラクターがどでんと掲載されている。どこでも出没するのですごい。表現するならもちろん「熊」である。

 

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熊(くま):くま科の食肉獣の総称。
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大分県:カボスぽん酢(フンドーキン)

大分県:カボスぽん酢(フンドーキン)


大分といえばフンドーキン。ぽん酢だけでなく醤油や味噌、ドレッシングでも九州一の生産量を誇る雄である。本社内にある醤油工場には世界最大の木樽があり、ギネスブックにも認定されているらしい。高さが9メートルとのことだが、よくわからない。9メートルの木樽ってなんだ?
カボスの酸味はゆずよりも優しくて、非常に爽やかである。口の中を涼風が駆け抜ける。このぽん酢を擬人化したら、実に「恬淡」なキャラクターになるだろう。

 

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恬淡(てんたん):あっさりしていて物事に執着しないこと。心安らかで欲のないこと。
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宮崎県:三柑ぽん酢(ミツイシ)

宮崎県:三柑ぽん酢(ミツイシ)


ぽん酢の旅も残り3つ。残り3つ……!


宮崎県産の「日向夏・へべす・ゆず」が使用されているこちらのぽん酢は、期待通りの正統派の酸味に、後味がほろりと苦い。しかしそれは決して嫌な苦味ではなく、どこかやみつきになるような苦さである。ああ、人生とは、この世とはほろ苦く、だからこそ癖になるのかもしれない。ぽん酢を飲みすぎて、「空蝉」について考えさせられる。頭がおかしくなったのかもしれない。

 

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空蝉(うつせみ):この世に生きている人。また、この世。
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鹿児島県:薩摩ぽん酢(ヤマエ)

鹿児島県:薩摩ぽん酢(ヤマエ)


薩摩の名を冠するぽん酢。特徴は、なんといってもゴマだ。瓶から溢れ出る喜界島のゴマである。鍋料理ではゴマ味噌かぽん酢の二択を迫られることが多いが、薩摩ぽん酢はそれらのいいとこ取りを実現した第三の道だ。
黒砂糖が使用されているので、味はまろやかで非常に甘い。酸味の嵐と戦ってきた身としてはありがたく、快適な味である。数年前に桜島で沈みゆく夕日を眺めていた時も、こんな快い心持ちだった。ここは「まほろば」だ。

 

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まほろば:すぐれた良い場所、住みやすい場所。
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沖縄県:シークヮーサーポン酢(座間味こんぶ)

沖縄県:シークヮーサーポン酢(座間味こんぶ)


ついにたどり着いた最終地点、沖縄県。思い起こせば北海道のゆず山ぽん酢から始まって、実に長い旅だった。強い酸味、甘い酸味、叫ぶ酸味。いろんな酸味があったけど、最後に待ち受けるのは、シークヮーサーの酸味である。
沖縄の方言で「シー」は酸味、「クヮーサー」は「食わし」を意味するらしい。酸味食わし。妖怪の名前みたいだが、なんて最後にふさわしいぽん酢だろう。そしてその酸味もまた最後にふさわしくまっすぐで、口の中に余韻が残る。ああ、ついにこの旅も終わったんだと感じさせられる。「至り」である。

 

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至り(いたり):物事の行き着くところ。これ以上ない状態。極限。

 

47都道府県のぽん酢を飲んでみて見えてきたこと


終わった。47のぽん酢を飲んだ。最初は豆腐につけて食べていたけど、面倒になって途中からぽん酢ごと飲んでた。押しては返す酸味の波に喉がイカれそうになったが、なんとか全国を巡れたし、感想も「すっぱくてうまい」で終わらなくてよかった。


ぽん酢はやはり多様だった。ゆずから始まりりんご、昆布、赤シソ、伊予柑にだいだい、梨や七味……各地の名産が酢や醤油と出会い、その土地ならではのハーモニーを奏でる。今回紹介したぽん酢は氷山の一角であり、この国には他にも無数のぽん酢が存在する。これから旅に出る際は、現地のぽん酢をチェックしていきたいと思う。


飲み比べるうちに、傾向のようなものも見えてきた。まず強い酸味が好きならば、西日本、特に四国や九州のゆずぽん酢を試してみるのが良さそうだ。やはり南にいくほど柑橘類が豊富に生産されているので、自分に合った酸味が見つかると思う。


また、赤シソのぽん酢やワインぽん酢、梅ぽん酢にトマトのぽん酢。これらの「変わり種」のぽん酢はどれも個性的で楽しかった。これらは決して出オチなどではなく、家に常備しておきたいほど美味である。ゆずに比べるとその酸味はどれもまろやかで、ゆずに飽きたときに使うのもいいだろう。


そして主張したいのは、パッケージのかっこいいぽん酢。これはだいたいめっちゃうまい。新潟県のとび魚ぽん酢ドレッシングに東京の東京多摩ゆずぽん酢プレミアム、そして京都の黒豆ぽん酢。どれも床の間に飾りたくなるデザインながら、深いコクと、どんな料理にも会う万能さを兼ね備えている。イケメンはだいたい心も広い、の法則である。


よって個人的なお勧めとしては、

  • 南国のゆずが使用されたゆずぽん酢
  • 一風変わり種のぽん酢
  • パッケージのかっけえぽん酢


これらの3種の神器を家に備えおくことで、いかなる非常時にも対応できるだろう。


ではそろそろ、結論に入る


結局のところ、47都道府県でもっともうまいぽん酢はどれなのか?


無限の酸味、無限のぽん酢があれど、その中で映えある1位に輝いたのは?


それは、これまで紹介してきた「美しい日本語」に、最後の単語を加えることで回答としたい。ありがとう日本語。

 

折句(おりく):句頭を利用し、ある文章や和歌の中に、別の意味を持つ文章を織り込む言葉遊び。いわゆる縦読み。

 

著者:岡田悠

会社員兼ライター。仕事の隙を見て旅行記やエッセイを書く。「オモコロ」「cakes」などで連載中。大体の食べものが好き。
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今回紹介したぽん酢

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社会的責任[CSR]