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快適なPC環境を求めて。僕が魅了された「自作キーボード」の世界

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パソコンの自作キーボードの世界

こんにちは、ゆかり(@eucalyn_)です。突然ですが、皆さんは「自作キーボード」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

その名の通り自分で作ったパソコンのキーボードのことで、自分好みにいろいろとカスタマイズすることが可能です。僕は自作キーボードに魅了され、キーボードの開発を行っています。

僕と自作キーボードの出会い

僕が初めて自作キーボードのキットを購入したきっかけは仕事による肩こりの悪化です。毎日朝から夜までPC作業をしているうちに首が痛くなり、ついには頭を上に向けることができなくなってしまいました。

病院に行くと「ストレートネック」と診断を受け、姿勢の悪さを指摘される始末。このままではいけないと、いろいろ調べて行き着いたのが「左右に分かれたキーボード」でした。左右分離型キーボードの場合、肩甲骨が広がり姿勢が改善されるというのです。

僕と自作キーボードの出会い。通常のよくあるキーボードでは姿勢が悪くなりがち
通常のよくあるキーボードでは姿勢が悪くなりがち
僕と自作キーボードの出会い。左右に分かれたキーボードなら、肩甲骨が広がり姿勢が改善!
左右に分かれたキーボードなら、肩甲骨が広がり姿勢が改善!

しかし当時、左右分離型キーボードの製品は海外から輸入するしかなく、しかもめちゃくちゃ高かったのです……。その後どうにかもっと手軽に手に入れる方法はないかと模索すると、キット状態の方が少し安いことが分かったので、左右分離型キーボードのキットを追加パーツ込みで300USD(約33,000円)で輸入。

初めてはんだごてやニッパーなどの工具を買ってキットを組み立てました。

ねこでも作れる!オリジナルキーボード

写真のようにこのキーボードは形状や配列など、普通のキーボードとはまるで違いました。初めはタイプミスも頻発しましたが、徐々に使いこなせるようになるにつれて肩こりが改善。

この体験をもって僕の自作キーボード沼が始まったのです……。

【楽天市場】 はんだごて
【楽天市場】 ニッパー


今では自作キーボードの開発に2年以上携わり、自作キーボードの仕組みや作り方について解説した「ねこでも作れる!オリジナルキーボード」という本や、

ねこでも作れる!オリジナルキーボード
自著「ねこでも作れる!オリジナルキーボード」

「Mint60」「BlocKey」などの自作キーボードのキットを作っています。

自作キーボード「Mint60」
Mint60
自作キーボード「BlocKey」
BlocKey

2018年は自作キーボードの世界において節目の1年でした。国内初の自作キーボード「Helix」の発売を皮切りに、「Ergo42」「Corne Keyboard」「Mint60」など次々と新しいキーボードキットが登場。

さらに2019年1月にはHelixを手掛けた「遊舎工房」の実店舗が東京の秋葉原にオープンし、週末はお客さんがお店に入り切らないほどの盛況ぶりです。

このように徐々に知られつつある自作キーボード。カスタマイズする面白さにハマるともう戻れません。今回はそんな「自作キーボードの魅力」を紹介します

自作キーボードのここがいい!

僕が考える自作キーボードの魅力は大きく4つあります。

【ポイント1】 物理配列が選べる

自作キーボード。 物理配列が選べる

自作キーボードの場合、よくある普通のキーボードの形状に縛られる必要がありません。キットによって左右が分かれていたり、指の届きにくいキーが無くなっていたり、逆に特殊な場所にキーが増えていたりします。

自作キーボード。 物理配列が選べる
自作キーボードなら、親指部分にバックスペースキーやEnterキーを配置することも可能です

国内外問わず多数の開発者がさまざまな特徴のあるキーボード基板を公開・販売しています。自分好みのキーボードキットを探すのは自作キーボードの大きな楽しみの一つです。

今まで使っていたものとキーの配置が変わった場合、最初はタイプミスが発生すると思います。しかしそれを乗り越えた時、そのキーボードはあなたの手足となるのです。

もちろん普段皆さんがよく使われているキーボードと同じ配列の自作キーボードもたくさんあります(実は自作キーボードの世界でもこれが主流です)。
その場合、物理配列は同じですが、この後に紹介する見た目や打ち心地などをこだわることで自分だけの一台を作り上げることができます。

【ポイント2】 見た目をカスタマイズできる

自作キーボード。見た目をカスタマイズできる

皆さんはキーボードと聞いてどのようなデザインを思い浮かべますか? 市販されているキーボードの大半は白や黒のものばかりです。LEDで光るものもありますが、真っ黒なゲーミングキーボードくらいしか選択肢がありません。

しかし自作キーボードならケースやキーキャップ(文字が書かれている部分)も自分で好きに選ぶ、もしくは作ることができます。

キーボードキットによってはアルミニウム削り出しのカラフルなケースがセットになっているものもありますし、データが公開されていて好きな色・素材で出力できるもの、アクリル板製・木製などいろいろなケースがあります。

またキーキャップを個別に差し替えることもできます。同じキーボードでも使っているキーキャップによって印象はガラリと変わります。

LED対応の自作キーボードの場合はLEDを付けることができますし、不要なら付けないのもあなたの自由です。このようにケースの色やLEDの有無、キーキャップのデザインによって自分の好きな見た目にカスタマイズできることもポイントです。

機能が満たされていれば見た目はどうでもいいという人もいるかもしれません。一方でオシャレなキーボードを使うだけでテンションが上がる人もいると思います。ちなみに僕は仕事のやる気が出ないときはキーキャップを変えて気分転換することも多いです。

スマホのケースを選ぶように、あなたもキーボードの見た目をこだわりたくないですか?

【ポイント3】好きな打ち心地を選べる

自作キーボード。好きな打ち心地を選べる

前述のように配列や見た目を自分好みにカスタマイズできますが、自作キーボードの良さは外見だけに留まりません。それが、打ち心地のカスタマイズです。

自作キーボードのキー一つ一つには、規格化されたキースイッチと呼ばれる部品を用います。

特によく使われているのは「Cherry MX スイッチ」とその互換軸と呼ばれるもの。

Cherry MX スイッチとは?

ドイツのCherry社が開発したキースイッチで、青・赤・茶・黒など、軸の色によって押下圧等の特性を変えたキーを販売しています。

特許が切れた今では、同じ規格に沿った安価な互換軸が広く出回るようになりました。

例えばCherry MX 青軸に代表される「クリッキー」タイプは、キーが入力される瞬間にカチッと音がなります。このためゲーミングキーボードなどに採用されていることが多いです。しかしオフィスで使うには少し騒がしいかもしれません。

他にも

  • 押した瞬間に軽い引っかかりのあるCherry MX 茶軸等の「タクタイル」タイプ
  • スッと引っかかりのない押し心地が特徴のCherry MX 赤軸・黒軸に代表される「リニア」タイプ

があり、キースイッチは「クリッキー」「タクタイル」「リニア」の3つに大別されます。

さらにそれらの中でもキーの重さや、押した時の静かさ、反応のしやすさによって数えきれないほどのバリエーションが存在します。(小さな力で押すことができる軸を軽い軸、逆にバネの反発力が強い軸を重い軸と表現します)

例えばCherry MX 赤軸とCherry MX 黒軸は同じリニアタイプですが、黒軸は赤軸に比べて重い軸です。赤軸は軽めで一般受けしやすいのに対して、黒軸を打つと指が疲れるという人もいると思います。

しかし黒軸はその重めの反発力を活かして、底まで打ち込まずに撫でるようにタイピングする「撫で打ち」という打ち方ができると、むしろ高速タイピングしやすいと言われたりするのです。

人によって好みの打ち心地は本当に違います。

自作キーボードならキースイッチを自分で選んで購入できるので、例えばESCキーだけクリッキータイプにしたり、人差し指と小指で重さを変えたりすることもできます。自分好みの打ち心地を追求することができるのです。

【ポイント4】そして気づくファームの自由度

さらに忘れてはいけない特徴が、ファームウェア(電子機器に仕事を命令するプログラム)を書き換えられることです。普通のキーボードの場合、キートップに書かれたキーが入力されるように設定されていますが、自作キーボードの場合は中のプログラムも自分で書き換えることができます

つまりあまり使わないキーによく使うキーやショートカットを割り当てる、なんてことができます。自作キーボードでは現在「QMK Firmware」というオープンソースのファームウェアが標準となっており、これがほぼ無限とも言えるほどの自由度を誇っています。

ねこでも作れる!オリジナルキーボード

例えばこれは僕が開発したMint60というキーボードですが、F1やF2といったファンクションキーがありません。どうやって入力するかというとキーの「同時押し機能」を使います。

右下の方にFnキーがあり、これを押しながら数字のキーを押すことでファンクションキーやHome、 Endといった特殊キーを入力することができます。こういった使い方は一部のノートPCでも目にすると思いますが、QMK Firmwareの自由度はその比ではありません。

QMK Firmwareの場合、このような同時押しは「レイヤー機能」として実現されています。

レイヤー機能とは?

あらかじめレイヤーごとにキーの配置を設定しておき、用途に応じてレイヤーを切り替えることで違うキーが入力できるという機能です。

レイヤー機能

最大32枚のレイヤーを設定できますが、僕の場合は4枚のレイヤーを使い分けています。

  • 1枚目はデフォルトレイヤーでアルファベットキーを主に使う用
  • 2枚目は数字や数字の上の記号を入力する用
  • 3枚目は矢印キーや括弧といったキー用
  • 4枚目はLEDや画面の輝度、音量などの調整用

といった具合です。

なぜわざわざ数字や矢印キーをレイヤーで実装しているかというと極力腕をホームポジションから移動させたくないからです。初めて自作キーボードを使い始めた頃はレイヤーをほとんど使っていませんでした。

当時使っていたErgoDoxという自作キーボードはキーの数がかなり多く、レイヤーを使わなくてもキーの数は足りていたからです。

しかしErgoDoxに慣れてきた頃あることに気づきます。それは「遠いキーをわざわざ押すよりも、押しやすい位置のキーで同時押しした方がよっぽど楽」だということです。

例えば右下の矢印キーに手を動かすより、左手親指でレイヤーを切り替えながら右手ホームポジション近くで矢印キーを使った方が楽ではないでしょうか。もしくは業務内容によって決まったショートカットを使う頻度が高かったり、決まった入力を繰り返したりする人もいると思います。その場合は同じように自分が使いやすいように設定することで、1キーで実行することができます。

他にも1つのキーを単押しした場合、長押しした場合、複数回タップした場合……それぞれに違う機能を割り当てることができます。

お分りいただけるでしょうか。自作キーボードを組んでから「終わりのないファームウェア最適化の試行錯誤がスタートする」ということです。

試行錯誤の末にたどり着いた「Mint60」

自作キーボード「Mint60」

ここまでいろいろな自作キーボードの良さを紹介してきましたが、できることが多過ぎて最初は何を買ったらいいのか分からないかもしれません。

そこで去年僕なりに初心者にも経験者にもオススメできるキーボードとして開発したのがMint60です。

【こだわり1】左右分離型キーボード
前述の通り、僕が自作キーボードにハマったきっかけは左右分離型による肩こりの改善でした。そのため僕が持っているキーボードの大半は左右分離型です。そしてMint60は左右分離型キーボードの良さを布教するために開発を始めました。

【こだわり2】通常キーボードに近いキー配置
通常のキーボードからあまりにも特殊なキーボードに挑戦してしまうと、タイプミスによるストレスで嫌になってしまうことがあります。そこでキーの配置は通常キーボードに近いものにしました。Mint60は左右分離型ですが、並べて置くことで通常のキーボードに近い配列になります。

【こだわり3】組み立てミスの起こりにくい設計
自作キーボードに限らず電子工作に付きものの問題が「組み立てミスで動かない」です。特にキーボードは大量のパーツを使うので慣れていてもミスが起こりやすいと言えます。

パーツによっては方向を間違えるだけで動かなかったりするので、Mint60ではそういったパーツの方向ミスや、半田付けのミスといった問題が起こりにくいように設計しました。

【こだわり4】ファームウェアが最初から焼かれている
Mint60も前述のQMK Firmwareに対応していますが、QMK Firmwareの環境構築が若干難しいと言われます。そこでデフォルトのファームウェアを最初から焼いて販売することにしました。

そのため組み立てが終わればすぐ使うことができますし、ファームウェアを変更したければもちろん書き換えることが可能です。

【こだわり5】3色のアクリルケース展開
本体カラーを3色用意しました。中身が丸見えのクリア、LEDが奇麗に光るマットクリア、クールなスモークグレーです。キーキャップと合わせることで見た目をこだわることができます。

【こだわり6】LEDがかわいい
かわいいガジェットといえばLEDは付きもの(と思っています)。 Mint60はフルカラーLEDを搭載しているので光らせ方も思いのまま! キラキラ光らせて周りの視線を集めましょう!!

将来的にはこんなことも! 僕が考える最強のキーボード「Lime40」を開発中

自作キーボード「Lime40」

現在、僕が開発中の「今の自分が考える最強のキーボード」がLime40です。最新の画像はこんな感じ(開発中のためまだ右手分のみの状態です)。

【こだわり1】40%キーボード
キーの配置が特殊なのでぱっと見では分かりにくいかもしれないですが、Lime40には数字キーの行がありません。なぜ数字キーがないかというと、数字を入力したければQMK Firmwareのレイヤー機能を使えばいいからです。

ちなみにこのサイズ感のキーボードのことを40%キーボードと言います。(テンキー付きのフルキーボードがだいたい100キーあり、それに対してLime40は46キーなので40%となります)

【こだわり2】立体的な左右分離型キーボード
自作キーボード「Lime40」
写真を見て一目で分かると思いますが、Lime40の特徴は3Dプリンタを使用した立体キーボードであることです。試しに腕を机の上に置いてみると、手のひらは丸くなり、小指側が机に付き、親指側が浮きます。

平面のキーボードを使う場合、手のひらは机と平行に近くなるため、不自然に腕が内側に回転していると言えます。これを腕の回内動作と言います。Lime40では腕を不自然に回内させずに済むよう、小指部分が低く、人差し指部分が高くなるよう設計しました。さらに親指を不自然に持ち上げなくてもいいように親指キーの部分は潜り込ませるように低く配置してあります。

3Dプリントして試しては修正→もう一度3Dプリントという流れで、既に30回近くプロトタイプを作り改善を繰り返しています

【こだわり3】Bluetooth対応
3Dプリント筐体(きょうたい)で中にスペースがあるので、内部に電池を仕込めるようにしてBluetoothに対応させる予定です。そうすることでタブレットやスマートフォンでも使いやすいはずです。

そんな僕が考える最強のキーボードLime40、5月には完成させたい! TwitterやPixivFanboxで進捗の報告を行う予定ですので、もしご興味のある方はぜひチェックをお願いします。


自作キーボードというムーブメント

今回の記事では自作キーボードのオススメポイントをまとめて紹介させていただきました。これまでキーボードにこだわると言えば高級キーボードを探すのが定石だったと思います。しかし自作キーボードキットのハードルが下がった今、キーボードを自作する人が急激に増えたりしています。

この記事をご覧のあなたもこれを機に「自作キーボード」で検索してみてください。果てしなく深い世界の一端を覗くことができますよ。

【楽天市場】 自作キーボードキット


著者:ゆかり

ゆかり

モノ作り大好きクリエイター。自作キーボードの開発が趣味。Mint60やBlocKeyなどのキーボードキットを開発・販売している。
Twitter:@eucalyn_
Instagram:https://www.instagram.com/eucalyn_kb/
ブログ:ゆかりメモ

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