それどこ

クライミングのために仕事も辞めた。私が今も魅了され続けているクライミングの世界

フリークライミングに魅せられた植田幹也さんが、クライミングの魅力を紹介します。「登る際にロープを使わないボルダリング」「安全確保のためにロープを使うルートクライミング」などクライミングの分類を図解したり、クライミングを始める際のつまずきポイントを解説したり、初心者向けの「クライミングの始め方」も紹介します。

スポーツクライミング(ボルダリング)をする様子

こんにちは、植田幹也(うえだ・みきや)と申します。

私はロッククライミングで登りたいルートを追いかける毎日を過ごしながら、ボルダリングジムに勤めたり、クライミング全般に関するブログを書いたり、大会の実況解説をしたり、クライミングイベントの企画や運営に関わったり……自分の人生の99%をクライミングに注いでいます

昨今、注目を浴びるクライミング。今回は私がクライミングの世界に入るきっかけとなった「スポーツクライミング」の世界の魅力を、私の遍歴とともに紹介します。

スポーツクライミングにハマったきっかけは、知人のプロクライマーのスライドショー

スポーツクライミングと聞いて「クライミングと何が違うの?」と思われた方もいるかもしれません。

詳しくは最後に説明するのですが、実はひとくちにクライミングと言っても種類はさまざまあり、よく耳にするボルダリングもその一つ。

さらにボルダリングにも室内で楽しむものと、岩場などの屋外で楽しむものがあり……と細分化されるのですが、とりあえずこの時点では、スポーツクライミングは「室内で楽しむクライミング」と思っていただければ大丈夫です。

そして、私がこのスポーツクライミングに興味を持ったきっかけは学生時代にさかのぼります。

高校で山岳部に、大学で山岳サークルに所属し、それがきっかけで大学では富士山の登山ガイドのアルバイトをしていました。

クライマー・植田幹也。大学では富士山の登山ガイドのアルバイトをしていた
終始半袖でやたらテンションの高いカナダ人もガイドしました
クライマー・植田幹也。大学では富士山の登山ガイドのアルバイトをしていた
頂上で三点倒立

このガイド組織には、岩場など外で楽しむロッククライミングの世界で、ものすごい成果を出しているクライマーがたくさんいました。そして毎年ガイドたちを集めて成果報告会が開催されるのですが、そこであるクライマーがパキスタンの岩頭(がんとう)に登るスライドショーを見た時に、ものすごい衝撃を受けてしまったのです。

到底人が登れるとは思えない傾斜の岩を登っていき、夜は崖の途中で宿泊。何日もかけて頂上まで登り、そこでは歓喜の涙。自分がこれまでやってきた登山とは似ても似つかないもので、「自分もこれくらい人生をかけて何かに熱中して生きたい!」と心が揺さぶられました。

とはいえ、いきなりこのようなロッククライミングを行うのは無理です。そこで、まずはスポーツクライミングから始めようと、大学の壁で登ったり近所のボルダリングジムに通い始めたりしたのです。

ボルダリングジムで壁を登る様子
ボルダリングジムではこのような角度がある壁を登ることもできちゃいます

スポーツクライミングを始めてみると、クライミングの世界にどんどんハマった

いざ始めてみると、クライミングの面白さ、奥深さにどんどんハマっていきました。

もともとは自然の中でのロッククライミングに魅せられたのですが、室内で楽しむスポーツクライミングにもどっぷり浸かり、コンペと呼ばれる大会にもたくさん出ました。

ボルダリングのコンペではシビアなルート(壁を登る経路)ばかりでかなり集中します
コンペではシビアなルート(壁を登る経路)ばかりでかなり集中します

私がクライミングにハマった理由は大きく3つあります。

【1】自分の成長を実感できること

コースごとに「グレード」という難しさの基準が決まっているので、明確な目標を立てやすく、また自分の成長を実感できることが1つ目の理由です。

例えばボルダリングなら日本では段級グレードが用いられていて、一番簡単なコースで10級や8級となっており、徐々に5級、3級と難しいコースを目指していきます。

「ようやくこのジムの5級が全部登れたから、明日から4級をやるぞ!」などのように、グレードを基準にして上達を目指している人が多いです。

【2】身体だけじゃない。頭と心もバランス良く使う感覚が面白い

ボルダリングのコンペにて。決勝などではライトアップの中、登ることも
コンペの決勝などではライトアップの中、登ることも

2つ目は頭と身体と心、それぞれの必要とされるバランスが取れているスポーツであるということ。

初心者のうちはクライミングの動きやポジションのコツが掴めず難しいコースが登れませんが、次第に「あそこを右手で取ったら、次は左手を出すために先に左足を踏んで……」「ゴールに到着するまで体力をこういうふうに温存して……」と、戦略を立てることで徐々に登れる幅が広がってきます。

また登るうちにフィジカルも次第に鍛えられていくので、中級者以上になってくると身体も引き締まり、とてもパワフルな動きができるようになってきます。

そしてコンペや岩などでは、ここぞという時のメンタルも大いにクライミングに影響します。頭、身体、心の3つのどれが欠けても登れず、またそれぞれのバランスが本当に絶妙です。

【3】何にも代えがたい高揚感と達成感

ボルダリングで岩頭を掴んだ瞬間
ボルダリングで岩頭を掴んだ瞬間

最後は何より、ゴールを掴みとった瞬間の高揚感、岩に登り切った瞬間の達成感。つまりは「日常では味わえない気持ち良さ」だということです。

どんなに簡単なコースでもゴールを掴んだときは気持ちいいのですが、それが特にコンペなどの大会だと脳内麻薬が出ているのが分かるくらい快感を味わえます。

サッカーでゴールを決めた瞬間、野球でホームランを打った瞬間、などに近いのでしょうかね。そして大自然の中で岩を登り切ってその上に立ったときの達成感も、一度味わったら忘れられないものになるはずですよ。

全てはクライミングを存分に楽しむために。ついには仕事を辞めた

そんなふうにしてクライミングの世界にハマっていったわけですが、当時の私はとても仕事が忙しくて登る時間がほとんど取れませんでした。

それでも週に1日くらいは24時半までやっているボルダリングジムに行って、30分でもいいからと、がむしゃらに登りました。そしてそこからタクシーで帰宅して、また朝から仕事。しかし週末も仕事が入ることがあったので、やはり思うように登れない……。

そんな中、ふと「人生において自分は一体何に幸せを感じているのか」ということを真剣に考えたことがありました。もしたくさん時間があったら、たくさんお金があったら、何がしたいのか。

そうすると、どう考えたって「妻と一緒にクライミングをすること」という結論に至ることに気付いたのです。

妻もクライミングの世界に魅了された一人
妻もクライミングの世界に魅了された一人

それにクライミングである程度のレベルに達するには、フィジカルの点において若いうちに真剣に取り組まないといけないことも事実でした。そうして妻と二人で仕事を思い切って辞めて、クライミングの世界に飛び込むことを決めたのです

世界の岩場に遠征することも。クライミングは世界共通言語

ヨセミテ国立公園のエルキャピタンという1,000m級のビッグウォール
「ヨセミテ国立公園」のエルキャピタンという1,000m級のビッグウォール

そこからボルダリングジムに勤めつつ、趣味のブログでクライミングについてあれこれ考え、心身ともにほぼ毎日、壁や岩場と向き合う日々が始まりました。そして、ついにはクライミングの聖地と言われるアメリカ・カリフォルニアにある「ヨセミテ国立公園」など、世界中の岩場にも遠征するようになりました。

世界にはクライマーなら誰もが知る有名な岩がたくさんあるので、そういったルートにチャレンジすることでクライミングの歴史を追ったり、世界中のクライマーとつながったりできるのも面白いです。

岩が壊れない限り、何十年も前にスーパースターたちが初めて登った岩を自分も追体験できるわけです。

ヨセミテ国立公園にある世界的に超有名なルートだが、登り切れなかったのでリベンジにいきたい
「ヨセミテ国立公園」にある世界的に超有名なルートだが、登り切れなかったのでリベンジにいきたい

また現在ならSNSなどで簡単に世界のクライマーたちと自分が登ったルートを共有できるので、岩のルート自体がまさに国境を超えた「共通言語」となっているとも言えるでしょう。あらゆる岩場を登ることで自分のクライミングの世界がより広がりましたね。

「クライミング」の種類を図解で解説

クライミングの世界に興味が湧いてきたでしょうか? ここからは「これからクライミングをやってみよう」と思う人に向けて、少し専門的なことを解説していきます。

冒頭で紹介したように、ひとくちにクライミングと言っても種類がさまざまあります。


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上図はクライミングの一部です


まず自分の身体だけを使って、岩なり壁なりどこでもいいので登っていくものを「フリークライミング」(上図1)と言います。フリークライミングに対して、登るためにハシゴやアックス(斧)のような道具を使うクライミングは「エイドクライミング」です。

フリークライミングをさらに細かく分解していきます。

落ちた時の安全確保のためにロープを使うものを「ルートクライミング」(上図2)と呼び、その中でも

  • 登りながらロープを安全支点に掛けていくものを「リードクライミング」(上図3)

  • あらかじめゴール付近にロープを掛けておき、常に安全を確保されながら登るものを「トップロープクライミング」(上図4)

と呼びます。

これらはロープを使って登っているわけではなく、あくまでも「落ちた時の墜落防止としてロープを使用しているだけ」です。

ルートクライミングに対して、ロープを全く使わないクライミングを「ボルダリング」(上図5)と言います。多くの場合ボルダリングではせいぜい5m程度の高さまでしか登りませんが、落ちた時のためにクラッシュパッドと呼ばれる衝撃吸収マットを下に敷くことが多いです。

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つまりボルダリングの本質は「ロープすら付けないで本当に身体一つでクライミングをすることを指す」のです。

そしてリードクライミング、トップロープクライミング、ボルダリングいずれも

  • 主にインドアでプラスチックのような石(ホールドと呼ぶ)を使って楽しむ「スポーツクライミング」

  • アウトドアで岩を登る「ロッククライミング」

の2種類が存在します。

そのためボルダリングにも「スポーツクライミングとしてのボルダリング」と、「ロッククライミングとしてのボルダリング」が存在するということですね。

そして近年、スポーツクライミングに競技性を持たせた「競技クライミング」が注目を集めています。 

初心者向けのつまずきポイント

スポーツクライミング(ボルダリング)の壁

初めてクライミングをする場合は、無我夢中に本能のまま登るのがいいです。今はWeb上や多くの本でクライミングのテクニックが紹介されていますが、何も経験していないうちからテクニックを発揮することは難しいです。それよりも自分の身体が動くままに手と足を出し、自然にあるがままに楽しんだ方が絶対におすすめです。

そして多くの場合、初回で「思ったよりも難しい」と感じると思います。実際にやってみると思っている通りに動けないのです。

そしてここで「自分には力がない。自分は体重が重い」と思ってしまい、「鍛えてからまた来よう。体重を落としてからまた来よう」と考える人をたくさん見掛けます。しかし、ここが最大のつまずきポイントであり、クライミングにハマるかハマらないかの分岐点です。

当たり前なのですが、ほとんどのスポーツにおいてコツがあります。

サッカーの初心者がいきなりうまくドリブルできなかったり、シュートを打てなかったりするのは当然です。ただ、そこで「力がないからシュートが打てない。身体が重いからドリブルができない」と考える人はほとんどいないのではないでしょうか。多くの場合はそのやり方が身に付いていないだけであり、クライミングも例外ではないのです。

自分の身体の声をしっかり聞いてたくさん登って、うまい人の登りを見て学んで、そしてある程度したらクライミングの本を読んで動きを自分なりに整理して……そうして徐々にうまくなっていくのです。

私が愛読するスポーツクライミング(ボルダリング)に関する本
私が愛読する本

また中級者でつまずいている人には、自分の好きな角度の壁や、好きなタイプのコースばかりやっていて、バランスよくテクニックを身に付けたり身体を鍛えたりできていない人が見受けられます。

上にも少し書きましたが、クライミングは登ること自体が身体に相当な負荷をかけるので、きちんと登っていれば身体はどんどんシェイプアップされるはずです。見た目にはむしろ細くなる人もいますが、引き締まってより力強く登れるようになります。

しかし、例えば腕で登るようなコースばかりやっていれば足の体重移動や足技がおろそかになりますし、逆に角度の緩い壁ばかりを登っていれば上半身が鍛えられないままです。全てのことに言えますが選り好みせずに、とにかく何でも体験してみることが大切ですね。

皆さんもクライミングを始めてみませんか?

言い忘れましたが、クライミングがうまくなるコツとして一番重要なことは、「クライミングをやってみたい!」と思ったら今すぐに近所のクライミングジムへ行くことです。早く始めるということはいつでも正義です。

ボルダリングなら動ける服装さえあれば、シューズもチョークもレンタルできるのでほとんど何も持っていなくても始められます。マイシューズやマイチョークは何度か通ってから、スタッフの方などに相談して購入すればOK。

マイシューズやマイチョークは慣れてきてから購入しましょう
マイシューズやマイチョークは慣れてきてから購入しましょう

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皆さんもクライミングを始めて、その向こうに広がる広大な世界に、ぜひ足を踏み入れてみてください。いつかクライミングという「共通言語」で通じ合える日を楽しみにしています。

著者:植田幹也(うえだ・みきや)

植田幹也(うえだ・みきや)フリークライミングに魅せられ、サラリーマンを辞めてボルダリングジムスタッフに。 自分の登りを追求しながら、クライミングとは何かを考える日々を送っています。
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