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プラモデル漬けだった私が鉄道模型に出会ったら、第二の人生が始まった話

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どうも。からぱたです。むやみやたらと巨大な写真を貼り付けまくる「超音速備忘録」にて、主にプラモの話を書いていたはず……なのですが、最近はひたすらに鉄道とその模型にまつわるエントリーが増大しております。いったいどうしたことなのか、というのをどうしても語りたくなり、今回は原稿を書かせてもらう運びとなりました。

鉄道模型にハマった話

いきなりですが、みなさんは鉄道模型にどんなイメージを持っているでしょうか。

高額だ、場所をとる、細かくて扱いが難しそうだetc.……。結果として、鉄道模型に「オタク趣味の代表格」のような、とても敷居の高いものだという印象を持っていないでしょうか。

かく言う私も、同じことを思っていました。そう、今年の6月に落ちるまでは……。

しかも、私がズブリとハマった沼は、鉄道模型の中でも「16番ゲージ」だったのですから、さあ大変。あの大きくて、高額で、絶対に自分の人生と交わることがないだろうとどこかで諦めていたジャンルに、自分がここまで没頭するなんて、当の本人ですら全く想像していなかったのですから。

ここからは、なぜ私がこれまで諦めていた16番ゲージ沼にハマり、買い物を重ねていったのか、その過程を読者の皆さんにお届けしたいと思います。

鉄道模型の分類

鉄道模型は、線路幅によって「ゲージ」という規格が定められている。中でも、日本で代表的なゲージは以下の2つ。

●Nゲージ:レール幅が9mmであることから、英語の9(Nine)の頭文字をとって“N(エヌ)ゲージ”と呼ばれる縮尺約1/150サイズの鉄道模型。1つの車両の大きさが約11cm〜15cmとコンパクトなため、テーブルの上や畳1枚のスペースでも楽しむことができ、日本で最も普及している規格

●16番ゲージ:レール幅が16.5mmの縮尺約1/80サイズの鉄道模型。1つの車両の大きさは25cmほどあり、Nゲージと比べると価格も高額。俗にHOゲージと呼ばれることが多いが、正確にはHOゲージとは1/87サイズを指すため、本稿では「16番ゲージ」という記載で統一する

その他にも、Nゲージより小さい「Zゲージ」など、さまざまな規格が存在する。

眺めるだけだった鉄道模型との付き合い

幼少期のオモチャの代表格として親に与えられるプラレールを覚えていますか?

よく考えたら、あれは純然たる鉄道模型であり(デフォルメされた玩具でありながら、縮小された実在の車両がレールの上を走るんです)、それがとんでもない市民権を持っているのですから不思議です。

プラレールも純然たる鉄道模型である

子供は鉄道が好きなのか、それともプラレールのせいで鉄道好きな子供が増殖するのか……。考えてもしょうがないのですが、とにかく私もプラレールを与えられ、狂ったようにそれで遊ぶ子供ではありました。ただ、だからといって鉄道グッズに固執するようなことはなく、夢中で読んでいた学研の図鑑も『飛行機・ロケット・船』だったので、断じて鉄道大好き少年ではなかったように思うのです。

本格的な鉄道模型との出会いは、多少物分りが良くなった頃(たぶん小学校低学年くらい)のこと。祖父が水色のプラスチック製トランクをしずしずと持ってきて、パカっと開けたんですね。すると、そこには、めちゃくちゃに精密なNゲージのブルートレイン(4両編成)と光り輝く金属製のレール、そして4分割された島式の駅ホームが入っていました。

注1.島式の駅ホーム……プラットホームの両側が線路に接している駅の形式。

Nゲージの魅力というのは恐ろしいもので、まるで宝石のようにピッカピカの車両が、電池切れの心配もなくスルスルと金属製レールの上を走り、有線式のコントローラーによって発進・停止はもちろん、スピードからポイントの切替まで全てをコントロールできるのです。

子供心にその衝撃は大きく、祖父の家のじゅうたんの上にこれを広げては走らせ、怒られては元通りにしまうということを繰り返していたのを覚えています。

上がプラレール。下がNゲージ。

上がプラレール。下がNゲージです。子供がガシッとつかんで遊ぶ「玩具」と、繊細な「模型」という佇まいの違いがありますね。ボトルガムと比較すると、なんとなくの大きさがつかめるでしょうか。

とはいえ、Nゲージ車両というのは子どもの小遣いで買えるようなものではありません。これ以外に車両があり、どんどんそろえていくもの、というイメージも持っていなかった少年は、いつしか鉄道模型のことを忘れ、ファミコンやらサッカーやらに明け暮れるフツウの学校生活を送るのでした。

再び鉄道模型と邂逅したのは、社会人になり、給料を手にするようになってから。趣味のプラモデルが欲しくて模型屋に入り浸るようになったとき、祖父の家の光景がフラッシュバックしたのです。

「あれ、鉄道模型を自分の意志で買える!?」と。

日本各地を旅行して乗った思い出の鉄道が、手のひらサイズの精密な完成品となってショーケースに鎮座しているのを見るにつけ、「これは素敵だ。素敵だが、危険だ!」と脳の中でアラートが鳴るのを感じました。

そのため、これまでは飲み会数回分の金額で購入できる車両をたまに買い、箱を開けて眺めるだけ(買ってんのかい!)。走らせることもほとんどなく、ただレアなレコードを数枚手元に置いておくようなスタイルで付き合ってきました。

しかし、昨年末に転機が訪れたのです。

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「フィギュアとしての16番ゲージ」を買う決意

初めて見た動くものを親だと思いこむひな鳥のように、「鉄道模型はNゲージ」だと信じて疑わなかった自分も、一回り大きくて格段に繊細な作りの16番ゲージの存在くらいは知っていました。銀座の天賞堂や、ユザワヤのショーケースに居並ぶ16番ゲージは日本型の車両だと1/80スケールであることが多く、その大きさはざっくりNゲージの倍(体積比にして7倍程度)あります。

ざっくりの感覚として1万円〜2万円程度でひとつの編成がそろうNゲージに対して、16番ゲージはひとつの車両が数万〜数十万、さらにレールの上で走らせようと思ったら超広大な部屋が必要になる……。そんな先入観によって「16番ゲージは俺とは一生関係ないもの」だと断じていたのです。

しかし、2017年末のある日、オンラインの模型店の予約品一覧を見ていたところ、ある鉄道車両に目が止まりました。

多くのローカル線で使用されている「キハ110」という車両を、KATOが16番ゲージとして製品化するというのです。自分が磐越西線や飯山線、小海線なんかでお世話になった車両であり、Nゲージでも持っている車両なので、この形式にはかなり愛着があります。

注2.キハ110……ローカル線のサービス改善を図るため、JR東日本が開発した気動車の名称。1両または2両編成となっていて、これらを組み合わせて、1~7両で運転することができる。
注3.KATO……Nゲージや16番ゲージの鉄道模型の企画、製造、販売を行う日本の大手鉄道模型メーカー。
KATOが「キハ110」という車両を16番ゲージとして製品化

そしてその価格を見たときの衝撃は、いまでもはっきりと覚えています。2両セットで2万7500円。オンラインの模型店での予約価格は税込みで2万円ジャストだと言うのです。

一両数万すると思っていた16番ゲージが、2万円で2両も手に入る。しかも、「キハ110」なので「2両でも立派に1編成の列車として飾ることができる」というのがミソでした。

いまとなっては完成品フィギュアの価格も1万円オーバーのものが珍しくなく、ちょっと豪華なプラモもそれくらいの値段になっています。

「たとえ走らせる場所がなくてもいい! 完成品フィギュアとして、ディテールや塗装をじっくり鑑賞できる寸法の鉄道模型を手元に置いておく気持ちとは、一体どんなものなのかを確かめたい!」

この一心で、私は予約購入ボタンをポチッと押したのでした……。

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展示台としてのレールを買いに行ったつもりが……

半年後、家に届いた16番ゲージの「キハ110」を手にした自分は気が動転していました。

「店のショーケースではなく、自分の手の中にこんなに美しいものがある!」という驚きと歓び。世の中には、こういう世界があるのか!と目の前がパアッと明るくなったようでした。

こちらがKATOの「キハ110 200番台 M+T 2両セット」。M車というのはモーター入り。T車はモーターが入っていませんが、M車と連結されることで走行します。

こちらがKATOの「キハ110 200番台 M+T 2両セット」。M車というのはモーター入り。T車はモーターが入っていませんが、M車と連結されることで走行します。

Nゲージの「キハ110 100番台」と並べた様子

Nゲージの「キハ110 100番台」と並べます。その大きさや解像度、存在感の違いが分かりますでしょうか。圧倒的です。

プラレールと16番ゲージの車両はだいたい同じサイズ。プラレールのレールの真ん中2本の幅はほぼ16.5mmとなっている。

好事家には知られていることですが、プラレールと16番ゲージの車両はだいたい同じサイズ。プラレールのレールの真ん中2本の幅はほぼ16.5mmとなっているんですよ……。幼少期、すでに罠は仕掛けられていたんだ(な、なんだってー!)。

そして大事な「キハ110」をテーブルの上に置いて考えたのです。「レールが必要だ……」と。鉄道模型はレールの上に置かないと、台車の向きがあっちこっちに曲がってサマになりません。2両を飾れる直線レールは単品で買えるだろうし、それなら数百円だろうと鉄道模型店に行ったとき、事件は起こりました。

「KATO HOゲージ テーブルトップスターターセット EF510 カシオペア 3-003 鉄道模型入門セット」という物体が、棚にしれっと置いてあったのです。

説明を読むと、文字通りテーブルの上に16番ゲージのレールをぐるりと敷設し、「EF510」という電気機関車と「ワム80000」という貨車2両を走らせることができるというセット。値札を見ると2万1600円と書いてあります。電気機関車と貨車2両とコントローラー(パワーパックと呼ばれるもの)、それにレールがセットで2万円ちょい。

これは実質的に無料だと判断した私は、そのままスウッと気絶していたのでした

目の前をぐるぐると走る「EF510」と「ワム80000」

……意識を取り戻した私は家にいて、目の前をぐるぐると走る「EF510」と「ワム80000」の編成を眺めていました。

テーブルトップスターターセットに含まれる線路は、1151mm×782mmときわめてコンパクトで、リビングのテーブルの上にピッタリ載るサイズ。

そこにずっしりと重い「EF510」を走らせると、聞こえるのです。レールの継ぎ目を踏む、ガタンゴトンという音が……。

テーブルトップスターターセット

我が家のリビングのテーブルの上に広げられたテーブルトップスターターセット。あなたの家のテーブルのサイズ、即測りましょう。

置くだけのフィギュアを買おうと思っていたら、家で電気機関車がぐるぐる走っていた。これに一番驚いたのは私自身ですが、しかし、そのための導線がしっかりとメーカーによって敷かれていたわけですね。

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もっと車両が欲しい! お得に手に入れるにはどうすればいい?

16番ゲージの動力車におけるとんでもない重量感と音の魅力は文字だと伝わりませんが、一度持てば絶対に理解できます。おかげさまで、その後は電気機関車をひたすらに買うことになりました。

注4.動力車……客車や貨車など動力を持たない付随車を動かすための鉄道車両。

入手にあたって調べるのは、ショップの新品入荷情報と中古市場の二本立てとなります。基本的に鉄道模型は一度生産すると再販まで長大な時間がかかるか、二度と生産されないパターンがほとんどです。発売から年月がたつほど新品の市場在庫は値段が上昇する傾向にあり、中古市場の相場変動もきわめて大きいのが特徴です(16番ゲージを嗜む人はわりと几帳面であるか、丁寧にモノを保存しておく人が多く、中古品の流通が極めて活発です)。

お得に手に入れるには、価格競争の激しい新品の予約受注に一期一会の気持ちでスパッとお金を払うか、中古市場を睨み続けるのが重要。中古市場には、新品同様のアイテムが日夜出品されていますので、生産から時間がたっているものがどうしても欲しければそれを狙い撃ちすることになります。

さらに私の場合は、海外の製品でどうしても欲しいものがあったので、これも探しまくりました。スペインで活躍する「RENFE251」という電気機関車なのですが、これも日本でフツウに探すとまず出物がない。

奥が中古で購入したTOMIXの「EF66」、手前はスペインのElectrotren社の「RENFE251」。

奥が中古で購入したTOMIXの「EF66」、手前はスペインのElectrotren社の「RENFE251」。日本の電気機関車の外観をそのまま踏襲したマシンが遠くスペインの地を走っているの、ロマンですよね!

そこで、海外のショップやebayといったオンラインオークションに目を移すと、そこにはまたとんでもない世界が広がっていました。見たこともないような色とりどりの機関車や客車、貨車が通販でサクッと買えるのです……。しかも日本の製品と同等の値段だったり、それより安いものも多く存在するじゃありませんか。

そう、海外ではNゲージではなく、1/87スケールのHOゲージが鉄道模型の王道なので、販売されている品目も流通量も多いんですよね……(改めて調べてみると、HOゲージをきっかけに海外の鉄道にハマる日本人も多数存在するようです)。

一番手前は新品を予約購入したKATOの「EF65 2000番台 後期形 JR貨物2次更新色」

そしてこちらが現在の様子。一番手前は新品を予約購入したKATOの「EF65 2000番台 後期形 JR貨物2次更新色」です。

テーブルトップスターターセットに付属していた「ワム80000」もいいのですが、やはり貨物列車を実際に眺めに行くと、コンテナ車やタンク車を牽いたものが現代の主流。こうしたものを鉄道模型店に行ってチビチビと買いそろえていくと、少しずつ家の機関車がイキイキとしていくところがまたよろしい。

「タキ1000」という石油輸送用のタンク車

「タキ1000」という石油輸送用のタンク車。3000円ちょいで手に入るのに、この複雑なディテール再現と色分けが完全に終わった状態で箱に入っている! 私、3000円でコレ作ってくれって言われたら泣いちゃいます。

なんといっても、電気機関車は単体でも走るし、うしろに少しでも貨車を牽引すれば好きな編成で楽しむことができるところが素晴らしいです。

電車や客車列車となると、ある程度まとまった量を買わないと線路を走る編成にならないのでまだまだハードルは高い気がしますが、気動車や貨物列車などの電気機関車はコンパクトに遊ぶことができるので、これから「16番ゲージを楽しんでみよう!」という人には本当にオススメなんですよね。

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部屋から飛び出し、広大なレールの上を走らせる

テーブルトップレイアウトは、夕食後にサッと広げて走行を楽しむことができるナイスな提案なのですが、それでも少々面倒だなというときがあります(テーブル全体を片付けるのも大変だしね)。

そんなときによくやるのが「直線レールを2本だけ敷いて、ゴロゴロ行ったり来たりしているのを眺める」という遊び方

ゆっくりゆっくりと往復させるだけでも「鉄道を動かしている!」という実感があるのは、先述した16番ゲージの圧倒的な重量感とこまかなディテールによるもの。ぐるぐると小判型のレールを走らせなくても、眼の前があっという間に貨物の入れ替えをするヤードのように見えてくるのだから不思議なものです。

鉄道模型を広大なレールの上に走らせる

なぜ2本なのかというと、奥に動かない車両を置いて、擬似的にすれ違いを楽しめるから。そしてお気に入りのウイスキーを舐めると最高の時間がたっていくのです……。みんなもやるべき……。

とはいえ、「もっと長い編成が欲しい!」「もっとたくさんの貨車を引っ張りたい!」という欲求はいつか出てくるはず。

また、カーブの半径が短いとどうしても車両がカクカクと折れ曲がるのが気になるかもしれません。私もタンク車が好き過ぎて延々と集めているうちに、このような事態に直面するわけです。

鉄道模型を広大なレールの上に走らせる

タキ17両を「EF65」が牽引!としゃれ込みたいところなんですが、もはや顔とおしりがくっつきそうな状態でさすがに実感に欠けます……。自宅走行の限界。

そんな人のための優しいビジネスが、「貸しレイアウト」。家からお店にえっちらおっちら大量の車両を持ち込めば、長大なレールが何本も並走する大きなレイアウトを時間制で貸してくれるのです。友達と複数の編成を組んで並走したり、すれ違ったり、重連走行したり、貨車の貸し借りをしたり……。大きなレイアウトを使った遊びは本当に楽しく、所定の時間はあっという間に過ぎ去ってしまいます。

家では短い線路でお気に入りの車両をチョロっと走らせてその佇まいを楽しみ、たまの贅沢として貸しレイアウトで長大編成を力走させる。こういった割り切りをできるようになるのが16番ゲージのいいところかなぁ、と思ったりもします(Nゲージだとわりと小さなスペースでもあれこれできる気がしてきて、どうしても自宅で遊べる範囲を広げたくなってしまうんですよね)。

16番ゲージは「本当に欲しいもの」と対話する趣味の王道だ!

と、ここまで自分がズブズブと沼にはまっていった様子をつづってきたわけですが、これはあくまで一例。

16番ゲージに触れていく中で、特に私が素晴らしいと感じているポイントは以下の3つです。

ポイント

(1)とんでもない重量感(機関車1両が350mlの缶ビールと同じか、それ以上にズッシリしています)と、それに伴うゆっくりとした走行の安定感、そしてレールの継ぎ目を踏む音(鉄道ファンはこれを「ジョイント音」と呼びます)が明瞭に鳴るところが素晴らしい。

(2)1/80というスケールゆえにサイズが大きく、そこに起因するディテールの解像度、塗装のシャープさが素晴らしい。これは他ジャンルのホビーと比較すると目覚ましいものがあります。この価格でこんなにシャキッとしたものが作れるって、どういうカラクリなんだろうと心配になるほど。

(3)長大な編成を組まなくても、1両から湧き出してくる実在感が極めて強いところが素晴らしい。周囲の景色を作らなくても、短い編成をゆっくりと走らせて眺めているだけで、周囲の光景が描き替えられるような錯覚に陥ることがしばしばあります。

鉄道模型の16番ゲージは重量感と繊細さを併せ持つ

重厚感と繊細さを併せ持った模型が、ガタンゴトンと音を鳴らしながら走る。それだけで、短い編成でも高い満足感が得られるんです。

趣味、とくにコレクタブルなものというのはどうしても肥大化して、あれもこれも欲しくなってしまう! という傾向にあります。16番ゲージが面白いなぁ、と思うのは、そのボリュームと価格がほとんどの人にとってヒョイヒョイ買えないくらいの「少し高級な模型」になっているところ。これって趣味の本質のところに響くんですよね。

16番ゲージの魅力に気がついてしまった。でも、あれもこれもというわけにはいかない……。じゃあ私は何が欲しいんだろう。この模型を通じてどんな景色が見たいんだろう。これって、いつどこをどんなふうに走っていたものなんだろう?

そういうことをものすごく突き詰めて考えるようになったことで、これまでもほんのりと好きだった鉄道のことをより深く知りたくなったし(幸いなことに、鉄道ファンは星の数ほどいて、知識や記録の集積もとてつもない世界なので必ず知りたいことは調べられるというのも素敵だなぁと思います)、「これを買うぞ!」と覚悟を決めたときの高揚感もハッキリとした輪郭を伴うような気がして、とても気持ちがいいものです。

そう、自分との対話によって、自分の本当の欲求がどこにあるのかを削り出していく作業。フツウのサラリーマンの所得や家の広さと、その価格や仕様が微妙にバランスしているのが16番ゲージのいちばんチャーミングなところだと私は信じています。

鉄道模型は写真を撮っているだけでもホクホクする

写真を撮っているだけでも、本当にホクホクするんですよ……。

同時に、こうした楽しみをもっと手軽に体験してほしいという提案を、メーカーが長年にわたって取り組んでいたことを知らなかったのが恥ずかしいなぁとも思っています。

小さな半径でも走る(狭いスペースでも走ることができる)構造の車両を作ろう、ディテールの再現をある程度のところにとどめて、安く手に入る車両を作ろう、そして短い編成でも実感のある車両選定をしてみよう、というのがKATOの「キハ110」のコンセプトだと知ったのは、それを手に入れてからのことでした。

サイズ、重量感、表現力。これを兼ね備えたちょっとだけ高級感のある鉄道模型が、幼少のときのプラレールのはるか先にある。そして今、日本のメーカーや海外のメーカーがより手に入れやすく、楽しみやすい製品を作ろうと頑張っています

プラレールやNゲージに触れたことはあっても、16番ゲージは諦めていた人、多いのではないでしょうか。

今回の記事をきっかけに、「買うたやめた音頭」を踊りながら鉄道模型店のショーウインドーとにらめっこして、覚悟とともにエイヤと買ってくれると幸いです。

注5.買うたやめた音頭……買おうかやめようか迷いに迷い、棚から商品を取っては、レジに行く途中で引き返し、棚に戻してはまた手に取るさま。

その時の満足感は、おそらくいままで経験したどんなものとも異なる種類のものだと保証しますので。ぜひ。

著者:からぱたid:kalapattar56

からぱた

1982年東京生まれ、中学時代にプラモデルの世界と出会い、高校大学時代に没頭していたプラモデル専門誌の編集部に就職。現在はブログ「超音速備忘録」にてさまざまな視点からプラモデルのレビューを執筆し、各種メディアへの寄稿や作例製作なども行なっている。好きな食べ物はシメサバ。
Twitter:@kalapattar

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