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低温調理の世界をAnovaで楽しむ 牛肉や鴨肉、サーモンを使って「おうちでごちそう」

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こんにちは。ぶち猫と申します。料理と写真を趣味に、猫2匹と暮らしています。

今日は、最近話題の「低温調理法」で、肉や魚などいろいろな素材を調理してみたいと思います。

“ちょうどいい火入れ”ができる低温調理法

最近、低温調理法という言葉をよく耳にしませんか?

低温調理法とは、タンパク質が変性・凝固する温度(大体55度から68度)に着目した調理法です。肉や魚などタンパク質を多く含む食材を、凝固温度より低い温度で長時間(1時間〜)加熱することにより、素材全体を最適な温度で均質に加工します。

※ 広義では、野菜なども対象に含め、通常加熱する温度(80度)よりも低い温度で長時間加熱する調理法全体を指す場合がありますが、分かりやすくするためここでは狭義に定義しました。

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少々時間はかかりますが、家庭でも「焼きすぎてパサパサ」と「中心部が生焼け」の中間の“ちょうどいい火入れ”をほとんど失敗なく実現できます。

専用の調理器具「Anova」で気軽に低温調理

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低温調理の基本は「真空パックした素材を適切な温度に保った湯に長時間浸けておくこと」です。手動で温度を維持・調節したり、炊飯器を使用したりといろいろ方法がありますが、今回は「Anova Precision Cooker」という低温調理用の機器を使いたいと思います。

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中央にある筒状の機器を水中に立て、加熱温度と加熱時間を設定すると、指定した時間中、水温を指定した温度に保ってくれます。手動でやる場合、頻繁に水温を測ってお湯を足して……と大変な作業になるところ、Anovaがあればスイッチひとつで簡単に本格的な低温調理ができてしまうのです。



専用のアプリケーション( iPhone用アプリAndroid用アプリ )をインストールすれば、スマートフォンやタブレットからAnovaを操作することもできます。アプリには「Time and Temp Guides(温度と時間のガイド)」や「Recipes(レシピ)」が掲載されているので、加工したい素材を何度でどれくらいの時間加熱したらよいかも調べられます。

前置きが長くなりましたが、ここからはAnovaを使った低温調理レシピを紹介します。

ふんわり柔らかく、ジューシーな「和牛のタリアータ」

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手始めに牛肉を調理したいと思います。これは和牛のザブトン(肩ロースの芯)という部位で、250gほどあります。厚さは4.5cm! そそりたつ崖感。この厚さの肉をオーブンかフライパンでミディアム・レアに調理するには、それなりの経験と技術が必要ですが、Anovaがあれば心配ありません。

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この後の加熱が均一になるよう、牛肉は調理を始める1時間ほど前に冷蔵庫から出しておき、あらかじめ室温に戻しておきます。あとは、にんにく1〜2かけ、牛肉の重さの0.8%の塩、あれば牛脂を用意します。

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叩き潰したにんにくと塩をまぶした肉をジップ付きのポリ袋に入れます。このとき、なるべく真空にするのがポイント。写真のように素材を入れたポリ袋を水中にゆっくりと沈めると、空気が追い出されて真空に近い状態になります。



さて、加熱です。厚手の鍋など保温性のよい容器にお湯を張り、Anovaを差し込みます。

今回は肉の内部全体をレアからミディアム・レアに仕上げたいので、ステーキをレアに焼く場合の中心温度が55度〜65度であることを参考に、55度に設定しました。加熱時間は肉の厚みも勘案し、2時間に。

アプリ経由で温度と時間を設定し、スイッチを入れてしまえば、あとはAnovaが勝手に加熱してくれます。

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2時間の加熱が完了したお肉です。オーブンやフライパンで加熱したときよりも表面の色が薄く、ところどころ表面に赤みが残っている状態。

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表面を滅菌するとともに焦げ目をつけて旨味を増すために、厚手の鉄フライパンをよく熱してから牛脂を滑らせ、フライパンでソテーします。すでに低温調理での火入れが終わっているので、余計な熱が入り過ぎないよう、肉を入れてからは高温短時間で加熱し、表面をカリッと焼きます。

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焼き上がり。強めの焦げ目がつくくらいがおいしいです。

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10分ほど落ち着かせてから、5mmの厚さにスライス。肉の表面近くから芯部まで均等にミディアム・レアに加熱できているのが分かります。

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ルッコラとミニトマトを添え、スライスしたパルメザンチーズ、塩胡椒、オリーブオイルを適当に散らしたら、和牛のタリアータの出来上がり。きっちりと芯まで火の入った牛肉は、食感がふんわり柔らかく脂がジューシーで、野性味のあるルッコラととてもよく合います。ほんのりとしたにんにくの香りがアクセント。

このままでも充分おいしいのですが、たくさん作った場合に備えて、ご飯と合わせるアレンジレシピも紹介します。味付けは塩だけなので、和風にも洋風にもアレンジできるのがうれしいところ。

バリエーション1~和牛カルボナーラ丼~

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お肉といえば、ご飯。そして、卵! 温かいご飯の上に薄めにスライスしたお肉を並べ、温泉卵を落とし、削ったパルメザンチーズと胡椒を散らします。これにポン酢をかけたら、和牛カルボナーラ丼のできあがり。

半熟の黄身をポン酢と一緒にご飯に混ぜて、お肉でくるっと包んで食べます。和洋折衷のジャンクな味付けですが、癖になるおいしさ。

バリエーション2~雲丹(うに)和牛丼~

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もうひとつは贅沢なハレの日のどんぶり。スライスした低温調理肉に、生雲丹と山葵を添えた雲丹和牛丼です。

しっとりした和牛に雲丹とご飯を巻いて食べると、背徳の味がします。人間がとろけてしまう。お店で食べれば高価なこと間違いなしですが、おうちごはんなら“ちょっとした贅沢”の範囲で実現できます。ぜひみなさんにも一度とろけていただきたい!

日本酒と一緒に楽しみたい「鴨ロース煮」

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次は鴨です。今回は合鴨の胸肉(ロース肉)を用意しました。1枚で250gほどです。

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鴨ロースは脂身が厚いので、身からはみ出した部分を切り落とし、さいの目に切り込みを入れてから、牛肉と同じようにジップ付きポリ袋に入れます。味付けは加熱後に行うので、この段階では塩もふりません。加熱温度と時間については、Anovaアプリのレシピを参考に、57度/2時間に設定しました。

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加熱が終了したお肉。牛肉と同じく薄い褐色になっており、ところどころ赤みが残っている部分もあります。

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厚い皮を香ばしく仕上げるため、皮目からフライパンに入れ、中火でじっくりと脂を出しながら焼きます。焼き目がついたらひっくり返して、身の方は軽く焼色がつくくらいに。直接フライパンに触れない部分には、表面を滅菌するため、鴨から出た脂をスプーンですくってかけるとよいです。

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並行して、だし汁50cc、醤油・みりん・料理酒各25ccを合わせたものに、低温調理で鴨から出たドリップを合わせて軽く沸騰させ、漬け汁を作ります。これを少し冷ましてジップ付きポリ袋に入れ、焼き上がった鴨を加えて粗熱を取り、冷蔵庫で一晩寝かせます。



翌朝、冷蔵庫から出してスライスしたところ。全体に均一に火が入り、上品なピンク色に仕上がっています。一晩寝かせたことで落ち着いて、きめ細かく瑞々しい質感に。

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きゅうり、水に晒した茗荷と紫蘇の千切り、和辛子を添えれば、鴨ロース煮のできあがり。

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低温調理で仕上げたしっとり鴨ロースで夏野菜の薬味をたっぷり巻いて食べると、日本酒が進んで困ります。

バリエーション~鴨ロースそうめん~

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鴨の漬け汁がもったいない!という方に、鴨ロースそうめんをおすすめします。そうめんを袋の表示通りに茹でて器に盛り、スライスした鴨ロース、きゅうり、水に晒した茗荷と紫蘇の千切り、ミニトマトをのせ、余った漬け汁をかけるだけ。仕上げにすりごまをひとふりします。鴨の旨味が贅沢な変わりそうめんです。

ハーブの風味がたまらない「ラムラック」

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牛、鴨ときて、次はラムをやりたいと思います。ごちそう感のある骨付きラム(ラムラック)を用意しました。火入れの難しい骨付き肉も低温調理なら余裕です。

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材料は、ラムラック450gほど、ラム肉の重さの0.8%の塩、お好きなハーブ。ハーブはぜひ、香りがいい生のものを探してください。今回は、肉料理と相性がよいタイムを使用しました。ラムの脂が厚い場合は、鴨肉と同じように表面にさいの目の切り込みを入れておきます。

加熱温度と時間は、Anovaのレシピを参考に57度/2時間としました。

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できあがり。これまでで一番まがまがしい雰囲気になってしまいました。骨と脂身とハーブの相乗効果ですが、進捗には問題ありません。

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厚手の鉄フライパンで、表面を強火でこんがりと焼きます。フライパンに触れない部分には、肉から出た脂をスプーンですくってかけましょう。



切り分けたところ。骨の周りまでムラなくロゼ色に火入れができているのが分かります。

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ラムにはおいも。ということで、タイムで風味をつけたオーブンポテトも用意しました。一緒にプチトマトとズッキーニも焼いておきます。



もちろんこのままでもおいしくいただけますが、余力があればワインの一種マディラ酒を使う簡単なソースもおすすめ。マディラ酒50ccを半分になるまで鍋で煮詰め、市販のフォン・ド・ヴォー25ccと低温調理時に出たラムのドリップを加えて軽く煮立てるだけ。ラムには甘いソースが合います。

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切り分けたラムに、オーブンポテト、焼きプチトマトとズッキーニを添え、全体に胡椒をふってから生ハーブをあしらえば、ハーブ風味のラムラックの完成です。低温調理をしたラムラックは、すごく柔らかい上に全くぱさつきがなくて、ラム肉のおいしさを最大限味わうことのできる調理法なのでは? と思います。

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まずはそのまま食べた後、マディラ酒のソースをかけてふたつ目の味を楽しむという贅沢。ラム風味のソースで焼き野菜ももりもり食べられます。

肉厚のサーモンも、低温調理ならしっとり

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さて、最後は目先を変えてサーモン。300gほどのサーモン一切れ*1とサーモンの重さの0.8gの塩、オリーブオイル少々を用意します。

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これまでと同様にサーモンに塩をまぶして、オリーブオイルとともにできるだけ真空になるようにジップ付きポリ袋に入れます。盛り付けのことを考え、この段階でふたつに切りました。火入れは45度/1時間。肉類よりも低温です。

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火入れ後のサーモン。生っぽい雰囲気も残しつつ、全体に色が薄くなってタンパク質が変性している様子も伺えます。今回はこれを北欧風に仕上げていくので、生のディル(ハーブ)、そしてサーモンにコクを加えるためにバターを用意しました。

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厚手の鉄フライパンでバターを温め、サーモンを入れます。低温調理後のサーモンはとても崩れやすくなっているので、慎重にやりつつ、中火・短時間で表面をカリッと焼きます。あまりにも崩れやすくて裏返すのは不可能なので、上の面にはフライパン上で熱せられているバターをスプーンですくってかけましょう。



北欧風の付け合わせといえば、クリーミーなマッシュポテト。材料は、茹でたてのじゃがいも、バター、すり下ろしたパルメザンチーズ、牛乳、塩少々と白胡椒です。

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これをハンドブレンダーでガーッと混ぜると、簡単にクリーミーなマッシュポテトを作ることができます。コツは熱々のうちにやること。バターが溶けやすくなります。

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クリーミーなマッシュポテト、軽く茹でてからオーブンでローストしたビーツに低温調理したサーモンをのせ、フライパンに残ったバターをかけます。全体に胡椒をふり、ディルをたっぷりあしらえば、サーモンのソテーの完成です。



表面はカリッと香ばしいのに、中は芯までしっとりふんわり。肉厚のサーモンを焼くときにありがちな、生焼けを恐れて焼き過ぎたせいでパサパサになるという現象とは無縁でした。おいしかった。

バリエーション~サーモンのソテーのオープンサンド~



バリエーションとして、オープンサンドに仕立ててみました。今回はくるみパンをスライスして、バターとマッシュポテトを塗った上に、一口サイズのサーモン、ローストしたビーツ、ディルをあしらって胡椒をふっています。食べやすいのでおもてなし料理にもよさそうです。

低温調理の注意点も忘れずに

ここまで長い記事にお付き合いいただき、ありがとうございました。既にお気付きかもしれませんが、今回のレシピはどれも、下味をつけて低温調理する→表面を焼く→盛り付けるというシンプルな工程の繰り返しです。

シンプルな工程でおいしくできる、いいことずくめに見える低温調理ですが、低温で長時間加熱するという調理の特徴から、いくつかの注意点があります。



肉や生食用ではない魚の切り身には、食中毒の原因となる細菌や寄生虫等が付着している(素材によっては内部まで汚染されている)可能性があるため、素材ごとに適切な温度と時間で加熱殺菌し、リスクを低減しなければなりません。厚生労働省によると、豚肉を販売する際の加熱殺菌の基準は「中心部について63度で30分以上または75度で1分以上」とのこと。これは、豚肉を安全に加熱するためのひとつの目安になります。

また、低温調理(55度から68度)は高温調理(80度〜)よりも細菌が繁殖しやすい温度帯を長く維持することになり、細菌の繁殖による食中毒を防ぐためには、通常よりもさらに衛生管理に気をつける必要があります。

具体的には、細菌などに汚染されている可能性の高い食材(鮮度がよくないものや流通経路が不明確なもの)は使用しない、調理器具は清潔なものを使い必要に応じて熱湯消毒をする、ジップ付きポリ袋は再利用しないなど。最後に表面だけ高温で焼いて、表面に付着しているかもしれない細菌を加熱殺菌するのも有効です。

§ § §

低温調理のポイントは、適切な温度と時間での加熱塩分濃度そして衛生管理。これらをきちんと押さえれば、シンプルな工程でもおいしい一皿に仕上げることができます。準備の面で少々ハードルが高い印象はありますが、肉や魚の塊をおうちで調理する際の奥の手として、ぜひ一度お試しいただきたいと思います。その際にこの記事が少しでも役に立つことがあれば、とてもうれしく思います。

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著者:ぶち猫 (id:buchineko_okawari)

buchineko_okawari

ぶち猫二匹と暮らしています。趣味は料理、お菓子作りと写真。主に食べ物にまつわるあれこれをブログに綴ったりもしています。

ブログ:ぶち猫おかわり

*1:2016年9月8日 15:15追記:サーモンは必ず生食できるものを選んでください。なお記事中で使用しているのは、寄生虫対策済みの冷凍サーモンです。