それどこ

ノイズキャンセリング浴衣にドローン浴衣! アンティーク着物屋さんが「新時代の浴衣」を考える

日本にいて、あったかくなれば、浴衣。浴衣の新しい機能はどうあるべきか、あるべき未来像はどうなのかについて、アンティーク着物屋さんが考えてみました。

f:id:blog-media:20150511103911p:plain

あったかくなってきましたね。

リサイクルやアンティークの着物を販売している会社「ICHIROYA」をやっているIchiroと言います。『ICHIROYAのブログ』というまじめなブログも書いています。

?

日本にいて、あったかくなれば、浴衣でしょう。ということで、夏に向けて、浴衣についての記事を書かせていただくことになりました。

浴衣ってどんな風に楽しめばいいのとか、今シーズンのカッコイイ浴衣ってどんなかとかを書いてくれ、というご依頼かと理解しました。

?

そこで、僕=社長は専務を呼びました。

多くの日本の小企業では「専務」とは「社長の奥さん」と同義であることが多く、弊社もご他聞にもれません。僕としてはデザインやセンスにすぐれたスタッフを呼んでやりたい会議ではあるのですが、その前に社長と専務のトップ会議で、せめて方向性を決めておく必要があります。

?

■ トップ会議

?

妻であり、専務であるYukaがやってきました。

?

Ichiro 今年の浴衣商戦をどうするか、方向性を決めたい。

Yuka いまから? もう5月だし、買う側はともかく、企画するには遅いんじゃない?

Ichiro たしかに、すこし遅い。けど、どれだけ遅くても、遅すぎるということはないんだ。僕もいつもブログでそう書いているし。

Yuka じゃ、さっさとしよ。

Ichiro ……。

Yuka で、どんなことがしたいの?

Ichiro なにか、こう、大人たちが眉をひそめるような、とんがった浴衣がいいな。そんな着方は花魁みたいでエロ過ぎるとか、そんな浴衣はホンモノの浴衣じゃないとか、さんざん言われそうなやつ。

Yuka ふ~ん。でも、毎年そんなこと言ってるやん。エロ路線はもう飽きられてると思うわ。

Ichiro そうか、エロは古いのか……。しかし、浴衣っていうのは、そもそも若いひとたちのファッションで、ファッションっていうのは、反体制の心意気なんだ。俺はそれを新しい浴衣で表現したい。むふっ。

Yuka だから、具体的に、どんなんよ?

?

トップ会議は白熱しました。

僕としては、ファッションとしての浴衣、あるいはデザインの方向性について、突っ込んだ話をしたかったのですが、やはり、50代のお洒落さんとは言えないふたりに、そのテーマは難しすぎたようです。

話がずれた感は否めませんが、浴衣の新しい機能はどうあるべきか、あるべき未来像はどうなのかについて、いくつか建設的なアイディアが生まれたように思います。

専務は「それは公開すべきではない」と言いますが、僕は「素晴らしいアイディアは共有してこそ現実化する」と断言して、ここに公開することにいたしました。

?

(1)オナラも消せる! ノイズキャンセリング浴衣

f:id:blog-media:20150507161824p:plain

浴衣で彼とデート中に、お腹が空きすぎて『ぐう!』となったら困りますよね。また、お腹の具合が悪くて、ついおならが……なんてことも心配です。

そんな心配のある方には「ノイズキャンセリング浴衣」はどうでしょうか。

浴衣の内側から発する音は、どんなものであれ、消音して外に漏らしません。

?

(2)ボーッとしてても大丈夫! 全自動盆踊りサポート浴衣

f:id:blog-media:20150507161823p:plain

Googleが全自動運転で世界を変えるなら、弊社は「全自動盆踊りサポート浴衣」で世界を変えてみせたいと思います。

この浴衣を着れば、日本各地のどんな盆踊りの特徴ある踊りも「全自動」で踊れます。浴衣にプログラムされているため、あなたは身体を浴衣に任せているだけで、地元で最高の踊り手に遜色のない踊りができるようになるでしょう。

もちろん、どれだけ大人数の踊り手が小学校の運動場に集まっても、この浴衣を着た人は適度な距離をとる機能がついていおり、決して、ほかの人とぶつかったりしません。

?

(3)人込み余裕!?ドローン浴衣

f:id:blog-media:20150507161822p:plain

「ドローン浴衣」に免許は要りません。簡単なリモコンで空を飛ぶことができます。

あの、人並みで窒息しそうな花火大会の日も、ドローンのスイッチを入れるだけで、ほらこの通り。

ドローン浴衣なら、いままで経験したことのない視点から、花火の様子を見ることができるのです。

?

(4)ソデから彼氏! カレ浴衣?

f:id:blog-media:20150507161821p:plain

ひょっとして、おしゃれな浴衣を買って、カレをゲットするのだと思っておられたりするのでしょうか?

「カレ浴衣」なら、万一その作戦がうまくいかない場合でも、袖に折り込まれているカレをベロン!と出すことができます。つまり、いざというときの保険がついているのです。

?

(5)可能性無限大! ディスプレイ浴衣?

f:id:blog-media:20150507161820p:plain

「ディスプレイ浴衣」は、やわらかなディスプレパネルからできています。そして、そこにどんな柄を表示させることができます。気分によって柄を変える、場所によって柄を変えるなんてことも簡単。

また、周囲の風景に溶け込むような色に変えてみたり、アフィリエイトを貼ったり、なんてことも可能です。

?

(6)超速乾! 水陸両用浴衣

f:id:blog-media:20150507161819p:plain

なぜ、夏になるたびに「浴衣と水着をどうしよう」と2つも悩まなければならないのでしょう。そこで「水陸両用浴衣」です。

浴衣が水陸両用なら。浴衣で海に入ればそのまま身体にぴったりとフィットする水着になるのなら。わざわざ浴衣と水着をそれぞれ買う必要はありません。

?

* *

?

いかがだったでしょうか。

弊社では、さっそく、これらの浴衣の開発に乗り出したいと思っています。

ただし、難題があります。

専務が財布の紐を固く握って、開発費を出し惜しみしていることです。

なぜ、社長の僕が、やりたいことをやれないのでしょうか? なぜ、専務が僕をさしおいて、この重要プロジェクトの決定権をもっているのでしょうか。

?

おそらく、それが日本の小企業の宿痾なのでしょう。

でも、僕は頑張ります。

?

■ 浴衣はカジュアルなファッション

?

……そんなわけで、おもしろ浴衣を考えてみました。

今年はどんな浴衣が流行るだろうか。なにか、大人たちが眉をひそめるような着方やデザインは生まれるのだろうか。ちょっとワクワクします。

そして、きっと大人たちが言うでしょう。そんな浴衣はホンモノの浴衣じゃないとか。

?

もしかすると、あなたはそういう意見に心を折られて、自分が本当にかわいいと思う着方やデザインを放棄しそうになっていませんか?

僕は断言します。

あなたはあなたが素敵だと思うとおりに、浴衣を着ればいいのです。

あなたが便利だと思う着方で、浴衣を着ればいいのです。

?

「着物」にはたくさんのルールがあります。

しかし、そのルールとは「フォーマルとして着物を着て、フォーマルな場所に行くとき」に限られたものに過ぎません。

フォーマルな場所に、その場に参加している人たちが眉をひそめるような姿で行くべきでないことは、洋服でも同じです。

じゃあ、浴衣は?

たしかに浴衣は着物のひとつではあるけれど、それ以前に、カジュアルなファッションのひとつの選択肢であるに過ぎません。

カジュアルなファッションをまとうとき、あなたは親の目や口うるさい大人の視線なんて、まったく平気ですよね。浴衣だって同じなのです。

?

■ お仕着せの浴衣ではなく、好きなように浴衣を着よう

?

着物は、浴衣は、こうあるべきと言う大人たちの多くは、そのルールの多くが実は戦後にできたものであることすら知りません。

たとえば、現在、多くの人が締めている「名古屋帯」ができたのは、大正末期です。名古屋帯ができたとき、多くの大人たちは、そんな簡便さを追求した帯の形は邪道だと言ったのです。もうひとつの主流である袋帯ができたのも戦後です

?

弊社では、明治ごろから戦前までの着物をよく入荷しますが、古いものを毎日のように扱い、その形式の変遷を見ていると、伝統とはいえ、それがファッションである以上、激しく変わってきた歴史なのだということがよくわかります。

?

お仕着せの浴衣ではなく、若い人が新しい感性で、好きなように浴衣を着て、町を楽しそうに闊歩してほしい。あなたが最高に素敵だと思う着方で浴衣を着てほしいと思います。

そして、大人たちの眉をひそめさせてやってほしいのです。

?

そんなわけで、ことしも楽しい浴衣のシーズンがやってきます!

?

?

(イラスト:長女のShoko / アイディア:Ichiro、Yuka、Shoko)


著者:Ichiro Wada (id:yumejitsugen1)

id:yumejitsugen1 profile

1959年、大阪府生まれ。京都大学農学部卒業。大手百貨店に19年勤務したのち、独立。まだ一般的でなかった海外向けのECを2001年より始め、軌道に乗せる。現在、サイトでのビジネスのほか、日本のアンティークテキスタイルの画像を保存する活動を計画中。

ICHIROYAのブログ

社会的責任[CSR]