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“ワケあり”の食品はどこがワケあり? 楽天のお店の人に聞いてみた

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推し活をしている人が「これ良い!」と思ったものを紹介しています

こんにちは。醤油手帖杉村といいます。普段は醤油やお酒の本を書いているのですが、料理漫画研究家(2016年8月末に放送されたテレビ朝日「マツコ&有吉の怒り新党」で見てくださった方もいるかもしれません)もやっておりまして、おいしい料理にも目がありません。

料理漫画といえば、黄金パターンのひとつに「高級食材を繰り出してくるライバルに、限られた予算で用意した食材で打ち勝つ」というものがあります。と、言うと「え、どうやって食材を調達するの?」と思った方もいるかもしれません。

その方法とは、品質はいいんだけれども、形が悪いなどで正規の価格では流通できないものを、お安く譲ってもらうというものです。こういうの、やってみたいけれどもどうやって手に入れたら……と思っていたら、ありました!

それは「ワケあり商品」です。

品質はいいけれども、何かしら理由があって、普段よりもお安く買える商品。これこそまさに、高級食材をお得に味わうことができるのでは!?

というわけで、気になる「ワケあり商品」を早速取り寄せてみました。一人では食べきれなさそうなので、10人ぐらいでわいわい食べることに。そして今回は特別に、取り寄せたお店の人に「なぜ、ワケありなのか」その理由をインタビューしました!

大きさがワケありな仙台牛の切り落とし

一品目はみんな大好きなお肉! 「仙台和牛職人」の「仙台牛切り落とし」です。

【楽天市場】 肉料理に幅広く活用出来る肉質等級最高5ランク 仙台牛 切り落とし 500g:仙台和牛職人

見るからに美しいこのお肉の、どこがワケありなのでしょうか。株式会社栄和・仙台和牛職人の公平慎吾さんに伺ってみました。

公平さんによると「普通のすき焼きやしゃぶしゃぶ用の肉は、1枚1枚を大きく、形をそろえています。でもこれは、大きいものもあれば小さいものもある、形が不ぞろいなものなんです」とのこと。

なるほど。大きさがそろっていないので、切り落としとして売られているのですね。でも、スーパーでよく見かける、余ったお肉を集めたものとは違います。

きちんとした大きさのお肉がそろってはいる。でも、その中に、肉をカットする際に出た、いわゆる端の部分も少し入っている。そのため、全体を通して見ると大きさが全部そろっているとはいえない、というものです。けれども、実際に届いたお肉を見たところ、大きさがそろっていないとはあまり感じませんでした。

このワケあり品は「お手頃価格で仙台牛を食べていただきたい」という思いから生まれたそうです。たしかに、同じ仙台牛のすき焼き・しゃぶしゃぶ用のお肉に比べると、かなりのお買い得になっています。

貴重な仙台牛

ちなみにこの仙台牛。ブランド牛の中でも珍しく、「A5」もしくは「B5」等級でないと名乗ることができないそうです。

「A」や「B」は歩留まり(取れるお肉の量)の等級を表しています。お肉は牛から切り分けたものがそのまま出荷されているのではなく、皮下脂肪などを取り除いてから出荷されています。このとき、脂肪部分が多ければ、同じ重量から少ない量のお肉しか取れません。Aは標準よりお肉が多く取れるもの、Bは標準のものという指標になっています。

「5」とかの数字は、肉質の等級です。霜降りの刺し具合とかお肉の光沢とか、しまり具合とか……そういった質を表しています。5が最高で、3が標準です。部位によっても異なるのですが、霜降りのお肉で「5」がついていたら、最高の霜降り度合いと思うといいでしょう。

というわけで、A5やB5しか名乗れない仙台牛は、質の面では文句なしというわけですね。なんかもうパッケージを開けると、それだけで脂のあまーい香りがしているんです。

醤油をつけていただきます

早速、牛脂を敷いて焼いてみました。醤油をつけていただきます。

「甘みを感じる」

「いいお肉の香りがする」

「味がする」

「おいしい」

「おかわり」

「もっとよこせ」

「早く次を」

人数も多かったせいか、争奪戦になって、あっという間になくなってしまいました。

いろいろな醤油を用意していたんですが、一人当たりが少なかったので、あまり試せず。残念。わさびを用意するの忘れた……と、思ったときにはもうお肉がなくなっていました。

今回は主に焼いて食べましたが、公平さんいわく「牛丼にしても最高」だそうです。もちろん、大きさは若干不ぞろいではありますが、それでも大きいものがあるので、すき焼きやしゃぶしゃぶでもいけるとのこと。

このお肉なら高級食材を繰り出してくるライバルに勝てる……!

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仕入れにワケありな「天然活け〆鱧 」

二品目は「瀬戸内漁師の海鮮問屋」の「天然活け〆鱧 」です。

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見てください。この豪華さ。

これも何か問題があるようには全く見えません。いったいどこにワケがあるのか、倉本水産・瀬戸内漁師の海鮮問屋の岡本あきらさんにお話を伺ったところ……

「うちは活魚・鮮魚がメインの会社で、自社で加工をしたもんをトラックで市場へ運んでいるんです。そうすると、帰りは荷が空になるので、市場に届いた鱧を買って積んで帰るのです。だから、輸送コストがかからず、安くできるんです」と教えてもらいました。

輸送に工夫があって、お安い。どちらかというと、ワケありというよりはお得品なのかも。

ダシでしゃぶしゃぶ ポン酢や梅肉もつけて

早速調理をしてみましょう。

今回はしゃぶしゃぶがオススメということで、ダシを作ります。付属している鱧の頭と骨と昆布をたっぷりの水で煮込んでいきます。分量とかは、オススメのやり方が紙で付属されているので安心です。

生タマネギもスライスして、準備完了。

しゃぶしゃぶ……おいしい!!


と、なったんですが、あれですね。ダシを器にうつすと、あっという間に冷めてしまってしゃぶしゃぶに適さない温度になってしまいますね。

今回は机の大きさの都合でカセットコンロを出せなかったので、一皿目は大半を湯引きでいただくことにしました。もちろん、このダシで湯引きです。

「形もそのままの鱧だ!」

「味わい深い」

「ポン酢がおいしい」

「梅肉もいい」

「こっちの梅肉(友人が持ってきたもの)もいい!」

「家でこのクオリティのものが食べられるとは」

これまた大絶賛でした。


一緒についてきたすだちポン酢は、岡本さんによると「フグにも使っているもの」だそう。繊細な白身との相性は抜群です。これ、かなりおいしいポン酢でした(ちなみにここから岡本さんと醤油談義に花が咲きすぎてしまい……。推し醤油は群馬県の有田屋のものだそうです)。

もちろん梅肉もついていて、こちらはちょっと酸っぱい系のものでした。

それを見越した友人が、はちみつ梅とかで作った甘い梅肉ソースも持ってきてくれたのですが、こっちの相性も抜群。身がしっかりとしていて、噛むごとに“じゅわっ”と旨味が出てくる鱧なので、甘めの梅肉の方が合うと思いました。

一皿二人前で、食べてみると思ったよりも量があります。なのでダシかけ茶漬けにしてみたり雑炊にしてみたりと、いろいろなアレンジも楽しめるのがうれしいところです。


おすすめの買い時は「6月から7月半ば」と「秋から冬にかけて」

ちなみにこの鱧、だいたい5月の半ばから10月の半ば過ぎまで販売されています。

鱧の旬は2回あって、1回目は6月から7月半ば。産卵直前のものです。

京都の祇園祭シーズンや、大阪の天神祭などで食べられる、いわゆる関西の鱧はこの時期が多いですね。この時期の注文もとても多いらしく、またおいしいので、岡本さん自身もお盆には必ず4皿分(1kg)買って帰るのだとか。

2回目の旬は秋から冬にかけて。

冬を越すために栄養を蓄え始める時期もとてもおいしいのです。この時期に、関東では土瓶蒸しにして食べることがあります。なので、これからの時期はこっちの食べ方でもいいかもしれませんね。

冷凍ではなく、活〆なので、届いたらすぐに食べましょう。料亭の味わいが家でもお手軽に食べられます。

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切り落としがワケありなカステラ

三品目はデザート。「長崎 心泉堂」の「幸せの黄色いカステラ」です。

【楽天市場】 訳ありお徳用 幸せの黄色いカステラ切り落とし4パック:カステラ専門店【長崎 心泉堂】

こちらは、見た目からなんとなくワケありの予感がする、薄いカステラが2枚重なった状態のものでした……。早速、株式会社長崎カステラセンター心泉堂の山本明子さんに聞いてみましょう。

山本さんのお話だと「カステラを作る際には、最初からあの長細い状態で作るのではなく、大きく作ってから長細く切るんです。そうなると、どうしても端の部分が出てしまうのです。そういった部分を集めたのが、このカステラの切り落としです」とのこと。

なるほど、完全にワケありです!

ちょっと切ってみると、少し色の濃い部分とそうでない部分があるような……。

これは、カステラの端ならではのものなのだとか。

カステラはたまご、小麦粉、ハチミツ、ザラメなどから作るのですが、溶け込んだザラメなどが端の方に集まるそうです。そうして、蜜がつまった状態になって、味わいが濃くなるんですね。

この濃淡を楽しめるのも切り落としならではと言えます。

部位によって味わいが違うのも面白い

実際に食べてみると

「しっとりしている」

「しっとりしているのにふわふわ」

「しっとりしていて詰まっている」

「おいしい」

「(薄くて一切れ一切れが)食べやすい」

などと、食べた部位によって感想が若干違うのが面白かったです。


「生クリームやアイスクリームを添えてみたり、パフェのスポンジ部分に使ってみたりと、アレンジしてもおいしい」と山本さん

今回はちょっとそういった準備が間に合わなかったのですが、是非パフェにしてみたいところです。蜜がつまった部分とかは、とてもおいしいパフェになるんじゃないかなと想像してわくわくしちゃいました……。


こちらの商品は正規品のカステラを18本作るごとに、2~3パックしか作ることができないため、何月何日発送分、という形で注文するようになっています。

買うときはwebページを必ず見て、欲しい日までに届くかを確認するようにしましょう。

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形や傷がワケありな庄内柿

最後に紹介するのもデザート。「やまがた特産屋」の「庄内柿」です。

【楽天市場】 庄内 柿 訳あり 2.5kg(13〜20玉前後) ※柿、かき、カキ、種なし柿:やまがた特産屋

果物のワケあり商品というと、なんとなくどういうものか想像がつきやすい気がします。やまがた特産屋の佐藤孝士さんによると……

「もともと柿は、JA全農(全国農業協同組合連合会)などが選果をして、形が少し悪いものや、傷がついたものを機械ではじいています。そうやってはじかれたとしても、味には全く影響がないので、JAでジュースやシャーベットにして売っていたところ、これがあまり売れなかったんです。なので、うちが引き取って、そのまま味わってもらおうと販売を開始したんです」ということでした。

もともと果物には「秀」「優」「無印」というランク付けがあって、いわばこれは無印のもの。なのでこれは完全なワケあり商品というわけです。昔はこういった柿は、地元のスーパーや八百屋で袋に入れて売るか、加工品にするしかなかったのでした。

でも試しにネット通販をしてみたところ、最初はじわじわと売れていたのが、3年ぐらい前から急速に認知されて大ヒット。今では「ネット通販においては贈答用のものの10倍は売れている」のだそうです。


こちらも

「甘みがすごい」

「冷たくておいしい」

「(用意した木製スプーンだとすくいにくかったので)手で食べるのもまたいい」

と、あっという間にみんなで食べてしまいました。


ちなみにこの柿、今回は冷凍でした。10月末から11月いっぱいは生のものが販売されるのですが、シーズンが終わると冷凍に切り替わります。

この冷凍が、実にいい具合というか。佐藤さんのお話では「地元の旅館とかでは、宴会のデザートとして用いられていて、宴会の最初から出しておくとちょうどデザートにたどり着くころには半解凍状態になって、おいしくいただける」とのことでした。

ちなみに、これは家庭用の冷凍庫ではできないそうです。業務用の冷凍庫を使って、短時間でしっかりと冷凍するからできるのだとか。

また、その昔、理想のものが出来上がるまでは、短時間で作れるという理由で液体窒素を使って冷凍したこともあったのだそう。けれども、それだと解凍に長く時間がかかってしまうので、今は使っていないという試行錯誤した当時のお話も聞くことができました。

日本酒をたらして食べるアレンジも

半解凍状態で食べるのもいろいろと試すことができます。

今回はちょっとスプーンでほじって、そこに日本酒をたらすという食べ方もしてみました。

お酒がなくなったら注ぎ足す……をやり続けていると、無限に食べられる気がしてきます。

というのも柿は、肝臓の働きを助ける特長があるので、お酒との相性がいいのです。ビタミンやタンニンが豊富で「柿が赤くなると医者が青くなる」という格言があるほど。

私が「昔は、肝臓のための栄養ドリンクとして柿エキスのものもあったけれども、最近は見かけない」と話すと、「たぶんそれは、私たちが全部柿を売っちゃっていて、そういった加工に柿が回らなくなってしまったんじゃないか」と佐藤さんは笑っていました。

柿はどうやって甘くなるのか

ちなみにお話を聞いて初めて知ったことは、柿というのは全てもともと渋柿だということ。甘柿というのは木の上で熟成することによって、渋みが抜けて甘くなっているものだそうです。

渋みの正体は、豊富に含まれているタンニン。タンニンが舌に触れると、渋みを感じるのですね。

熟成するとタンニンが外に抜けるのではなく、タンニンをアセトアルデヒドという物質が包み込んで直接舌にタンニンが触れないようになるため、渋みを感じず、甘みだけを感じるという原理なのです。

というわけで「渋抜き」とは木の上で柿を熟成させるのではなく、渋柿の中にアセトアルデヒドを増やす工程を指すようです。

例えば、収穫した渋柿のヘタ部分にちょっとだけ焼酎をつけて、日にちを置くと、柿は甘く柔らかくなります。これは、日にちを置いて、摂取したアルコールを分解させるとアセトアルデヒドが増えるので、渋みを感じない甘い柿になるためです。これが渋抜きです。

アセトアルデヒドは二日酔いの原因とも言われていて(アルコールを体内で分解したときにアセトアルデヒドがまずできて、それを分解しきれないと二日酔いになる)、悪者にされやすいのですが、こういう使い方もあるとは勉強になりました。柿の中でアルコールを分解する力があるから、お酒を飲む人用の栄養ドリンクにもなっていたということなのでしょう。

そうやって熟成させる果物である柿は、味が均一になりやすい。だから、毎年この味が欲しいとリピートする人がたくさんいるそうです。中には熟成する前の生の柿のシーズンに、10回リピートする人もいたとか。

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* *

今回いただいたワケあり商品は、どれもこれもワケありとは信じられないようなものが多く、これは料理漫画でも勝てるわけだと実感するものばかりでした。ちょっと量が多いので、人を集めてみんなで食べるときなんかに、上手に活用したいですね。

ちょっと、ワケあり商品探しにはまりそうです。早速検索を……。


著者:杉村啓 (id:shouyutechou)

杉村啓

醤油やお酒を愛し、そのおいしさ・楽しさ・奥深さについて広める活動を行うライター。料理漫画研究家でもある。著書に『白熱ビール教室』『白熱洋酒教室』『白熱日本酒教室』(星海社)、『醤油手帖』(河出書房新社)ほか。京都在住。

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