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それどこ

男性よ、ほっといてくれ! 私たちが買っているのは‟夢”なのだから

大枚はたいて買ったブランド品、増えていく化粧品……男性から見たらほとんど差異のないであろうものを、女性はなぜ買うのか? 女性に特化した人材コンサルティングの会社を経営する川崎貴子さんが、男性に向けて女性の気持ちをつづります。

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こんにちは、川崎貴子です。私は女性に特化した人材コンサルティングの会社を経営する傍ら、婚活結社「魔女のサバト」という婚活セミナーを主宰しています。結婚アドバイザーとしてコラムを書いたり、男女のコミュニケーションを円滑にするための対談やセミナーを開催したり、11月からは「働く女性の為の結婚マッチングサイト」もオープン予定。働く女性の成功、成長、幸せのサポートという理念のもと、さまざまなアプローチで活動しております。

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さて、自己紹介はその辺りにして。

ある夜、寝る前に化粧水やら美容液やらを塗りたくっている私を見て、夫が言いました。

「それって、何に効くの?」

一瞬ディスられているのかと思いました。日々すっぴんで過ごし、日焼け止めも塗らずに石鹸で顔を洗っている「男という生き物」が、私の化粧台に並んでいる小瓶たちの存在意義を理解できるはずはない。

私は塗りたくる手を止めずに言いました。

「“いろいろ”に効くのだ」

と。正直なところ、何かに効くと思ってそれらを買ったのかどうか、私はすでに忘れていたのですが、「いろいろに効いてほしい」というとっさの願いで口走っただけです。

思えば、若い娘だったころ……

化粧品といえば口紅やマスカラなど、それを施すと大人っぽく見えたり綺麗になったりと、プラスに作用するそれはそれは心躍るアイテムでした。


Photo by Maria Morri

ところが、40歳もとうに過ぎた私の「化粧品」とは、「失くしたものが戻ってきたらいいな~」という消極的かつ祈祷(きとう)めいたアイテムに変化を遂げています。

失くしたキメや潤い、許可なく出現したシミ、シワ、たるみ、毛穴……。数えだしたらきりがなく、鏡に対峙する度にマイナスからの203高地が延々と広がるのであります。

よって、プチプラなどのリーズナブル化粧品が増えたこともあり、「キメが整う」「極上の潤い」などのコピーに心を奪われては買う日々。そして「シミが薄くなる」という宣伝文句に「嘘つけ!」と毒づきながらも手を伸ばすというサイクルが出来上がっているので、そりゃあいちいち覚えていられませんって。

ま、そんな愚かな消費者代表の私でも、化粧品の原価がびっくりするほど安いことも、塗った途端に皺がなくなるクリームが存在しないことも(あったら教えてほしい!)、頭ではわかっているのです。

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本当に買いたいものは……


Photo by Wen-Cheng Liu

化粧品の他にも、ハイブランドのバッグやアクセサリーも同じ。若いころはこぞって、

「流行ではなく“一生モノ”だから」

「モノを買うのではなく、その“ブランドのストーリーを買う”のだ」

などという訳のわからない信仰にイカレて購入したものですが、そのモノたちの末路はすでに流行遅れのバブル廃棄物だったりいたします。

また、素の状態に戻れば、セレブでも貴族でもない我々が、〇十万円、〇百万円のバッグやアクセサリーを一点だけ身に着けてもあまり意味がないことぐらいわかっております。全身と他のコーディネートにもちゃんとお金がかかっているからこそ「その一点」も光るわけで。とはいえ、大枚はたいて買ったモノを「本物」と認識されないのはある意味大惨事です。そこで、それを回避するために起こるのが「わかりやすいブランドの、わかやすい商品を買ってしまう」という事故です。

バブルのころ、電車の中を見渡したら同じハイブランドの同じバッグを持っている人が5人いるとか、レストランで同じアクセサリーをしている人が3人いるとか、なんてことがよくありました。それこそ大枚はたいておきながら、行き着くところ「無個性」になってしまうという現象に戦慄を覚えた記憶がございます。

ですから、わかっちゃいるのです。

【楽天市場】 バッグ ハイブランドの検索結果
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小説の彼女に重ねる今の私

森瑤子さんの小説で、大富豪の妻が若いつばめと逃げる話があります。彼女は男との逃走資金が必要で、いつも購入していた宝石店に今までそろえたジュエリーを持ち込んで換金しようとするのですが、提示された金額は二束三文。

「どういうことなのよ! 買った時いくらしたと思っているの!」

と噛みつくと、店主に

「私たちはジュエリーという夢を売っているのです。あなたも早く夢から醒めて現実に戻ったほうがいい」

と諭される内容だったと記憶しています。それを読んだ時の私は高校生だったもので、ジュエリーの換金率の低さにおののきながらも、同時に「愚かな女だなー」とあきれ返りました。

しかし、それから30年近く「女道」を歩いてきた私は、新たな夢を掴もうともがく小説の彼女を、もう笑うことはできません。

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アイ・ハブ・ア・ドリーム! 私たちが買っているのものの正体は「夢」

私たち(少なくとも私と私のまわりの女性たち)は男性が思うよりずっと、効果効能などの合理的判断ではなく「もしかしたら、これを買ったら奇麗になれるかもしれない」という「もしかしたら」を購入しています

たとえ、マイナスからの出発で、目指すところがプラマイゼロだったとしても、若いころに新しい口紅を買って「大人っぽくなれるかも」と心を震わせた時と同じように夢見てる。

今では私はもう「損失補てんの夢」レベルになりましたが、この夢が醒めるまでは「女道」を歩いているという自覚があると思います。それを早く卒業したくもあり、もっと楽しみたくもあり……。

ですから、どうか男性の皆さん、夢見る私たちを笑わないで。そして、「それ、何に効いてるの?」なんて現実に戻さないで。より「夢」を見ている分、あなたの隣の女性は、女であろうとしているのですから。

アイ・ハブ・ア・ドリーム! それが見果てぬ夢だとしても。

著者:川崎貴子

川崎貴子

1972年生まれ。埼玉県出身。1997年に働く女性をサポートするための人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を展開。女性誌での執筆活動や講演多数。著書に「結婚したい女子のためのハンティング・レッスン」「私たちが仕事を辞めてはいけない57の理由」「愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。」「上司の頭はまる見え。」がある。2014年より株式会社ninoya取締役を兼任し、ブログ「酒と泪と女と女」を執筆。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。10歳と3歳の娘を持つワーキングマザーでもある。 Facebookはこちら

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