それどこ

戦後のオカンが愛した良道具「タミさんのパン焼器」を本気で長々レビューするよ

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はじめまして、mojamojayorikoといいます。

マタニティーハイと産後うつをこじらせたら、無性に“丁寧なくらし”に憧れるオカンへと超進化してた、育児系イラストブロガーです。

ホンモノの良い調理道具を手にいれるたび「この商品なら、あがり症&カミカミマンの私でも、イオンとかで実演販売できそう……!」と、錯覚してしまいます。今回もそんな良道具と出会ったので、そのお話をしたいと思います。



先日、ドイツの鉄フライパン「turk」を購入して以来、鉄の魅力にとりつかれた私。

今度は台所でダッチオーブンでもブン回してやっかぁ! とネットサーフィンしてる途中で、やけに気になる商品名が飛び込んできました。その名も「タミさんのパン焼器」。

なんだこれーー! タミさんってだれーー! と、胸の高鳴りを感じながらネットに転がる情報をあさりまくると、このような商品だということが判明。

  • 今から70年以上前の終戦直後、ジュラルミンという素材で作った「パン焼器」が売られていた
  • この「パン焼器」は配給品の小麦粉などを使いパンを焼く事ができるというシロモノで、当時は庶民の間で広く普及していた
  • 「タミさん」こと近江タミ子さんもかつて愛用者のひとりだったそうで、タミさんの孫が「パン焼器」を南部鉄器で復元したものが「タミさんのパン焼器」なるもの


オーブンがなくてもガス火でパンが焼ける! というのが商品最大の特徴なんですが、もうね、完全にジャケ買い。最初から最後までビジュアルが決め手でした。

だってですよ?

南部鉄器の重厚で男前な鉄のフタに堂々と「タミさんのパン焼器」と丸ゴシックで刻まれているんです! ひと目見るや否や「これ所有したい!」と、人を、財布を、強く突き動かすこのパワー。

現在は、IHでも使えて、しかもオシャレに葉っぱの模様にTamiと刻まれた「タミパンクラシック」が新型として流通しているようです。でも、私はだんぜん旧型派!

いらんねん! タミさんにおしゃれはいらんねん! (※個人の見解です)

タミさんのことをググっただけで分かったつもりになりながら、旧型を買ったのでした。

【楽天市場】 タミさんのパン焼器の検索結果
※「タミパンクラシック」と記載のものは新型です



さて、ここからは商品特徴を実例写真とともにご紹介していきたいと思います。

「タミさんのパン焼器」をひとことで言うならば、“重たくないダッチオーブン”。あるいは“直火のコンベクションオーブン”だ。


母直伝のにんじんケーキを焼いてみた図。鍋のテカリがボディービルダーのようにふつくしい。

南部鉄器の特徴は、蓄熱性がすぐれていること。そこに煙突(中央の穴)を作ることで熱の対流が起こり、熱をムラなく伝えてくれます。

さらに、どっしりとした重量の鉄のフタが、食材の水分をしっかり閉じ込めてくれるのです。

肝心の仕上がりはというと、蒸し焼きのような効果でしっとりふんわり感を保ちつつ、それでいて鍋肌に触れている部分は直火のフライパンで焼いたようなカリッと感。人類が長年追い求めている夢「外カリッと 中ふんわ~り」が実現するのです。



ねっとり系焼き芋もバッチリ。じっくり火を通して引き出した優しい甘みが沁みる……。さつまいもの蜜が表面に出てきたらしく、芋を触ると手がベタベタになったけど、食べる前から期待感UPしたのでよしとする。

ときには少女のように、ときには職人のように。二面性を秘めたそのたたずまい。

良い調理道具はただそこに置いてあるだけでも美しいものですが、「タミさんのパン焼器」はそれだけではありません。

食材をいれた調理中の姿は可憐な少女のようにすこぶるキュート。そして調理後のやや汚れたお姿は、男前すぎて3割増でグッとくる。という二面性を秘めた珍しい逸品でもあります。


パンを作っているところ。二次発酵の可愛さったらない。あんたらもう“ぎゅうぎゅう”やないか。


粉まみれになってしまった「タミさんのパン焼器」は、仕事を終えた職人のようでなんだかグッとくる。

パン実験のひとコマ

ここでブレイクタイム。写真のパンは、むすめにも手伝ってもらいました。題して「パン実験」。


早くも待ちくたびれて、小麦粉で遊びはじめてしまったむすめ。

「ちょっと待ってな〜。わぁ! おててがオバケみたい!」と、声をかけながら場を持たせます。


ですが準備を進めるうち、パン生地が思ったよりもべたついてどうも上手くいかない。

「ごめん、やっぱりお母さんが1人でするわ!」と、急きょ本気モードに路線変更し、せっせとこねていると何やらぼそぼそ聞こえます。


……ふと横をみると、粉だらけの真っ白な手をダランと下げたままのむすめが、

「つ〜く〜り〜た〜い〜……つ〜く〜り〜た〜い〜……」と、なぜかうらめしやのトーンで、じぃっとパンを見つめながら訴えていたのでした──。

キャーー!!

……いやいやいや、ちょっと待ってちょっと待って? モノづくりに目覚めた幽霊なの? 死後に? と斬新すぎる設定に、思わずツッコまざるをえませんでした。

「タミさんのパン焼器」をうまく使いこなすコツ

さて、色々と実験してみて分かったコツは以下の4つ。

  • 購入後に“鍋ならし”をすること
  • 冬場はお風呂にいれてあげると良い
  • シリコン刷毛(ハケ)が便利
  • 火加減は常に最弱火でOK

購入後に“鍋ならし”をすること

購入後の新品の時だけ“鍋ならし”という作業が必要です。私は3cm角に切ったキャベツを使用しました(“鍋ならし”のくわしい方法はこちらをご参考ください)。

冬場はお風呂にいれてあげると良い

鉄器なので、冬場は芯までキンキンに冷えてしまって鍋が冷蔵庫状態になっています。パンを鍋の中で二次発酵させる場合は、パン生地をいれる前に、さっとお風呂にいれて温めてあげるといい感じです。

40〜50℃くらいのお湯が入った大きめのボウルに「タミさんのパン焼器」を“ちゃっぷん”。鍋の内側がほんのり温まったら引き上げてOK。


余談なのですが、小さいキャベツ片で隅々までふきふきしてから、お風呂にいれてあげて鍋底からしたたる水滴をやさしくOFF。なんだか、おばあちゃんのお世話をしている気持ちになってくるから不思議です。


シリコン刷毛が便利

こびりつき防止に鍋肌に油を塗るのですが、カーブ部分など入り組んだ部分もささっとまんべんなく塗れる「シリコン性の刷毛」がおすすめ。100均でも売ってたりします。

火加減は常にごく弱火でOK

かなり厚手の鍋なので「ちゃんと火が回ってるのかな?」と不安になりますが、鉄の熱伝導率なめたらアカン。最初から最後までごく弱火でじっくり火を通すのが成功へのカギ。

「タミさんのパン焼器」の魅力とは

購入から2週間足らずの私が思うに「タミさんのパン焼器」は、簡単にパンが焼けますとか、時短とか、そんなふうに取り上げられがちです。もちろんそのように作る事も可能なのですが、「タミさんのパン焼器」の真のポテンシャルはきっとそこじゃない。

これは「じっくり時間をかけて火を通し、食材の旨味を引き出す道具」だと思うわけです。


真のポテンシャルを味わえる、ハード系鍋焼きパンのレシピ

「タミさんのパン焼器」は、加水率高めのハード系パンが得意。皮がパリッと、中はしっとりもっちり。焼きたてはもちろん、翌々日まで、しっとりもっちりは健在でした。

今回は、私的大ヒットの「こねない鍋焼きリュスティック」のレシピをご紹介します。時短とはかけ離れた時間のかかるレシピですが、焦らず育てたぶんの美味さが待ってるので、ぜひトライしていただきたいです。


こねない鍋焼きリュスティック完成図。鍋肌に油を塗らずに打ち粉をすると、こんな感じで羽根つきのパンになった。

材料 (タミさんのパン焼器 16cm)

  • フランスパン専用粉(準強力粉)……220g
  • 塩……4g
  • 砂糖……10g
  • ドライイースト……1g
  • (人肌くらいの温度がベスト)……170g
  • 打ち粉(準強力粉でも強力粉でも)……適量

作り方

  1. 小さなボウルに水とドライイーストをいれる ※この時点ではイーストと水を混ぜない
  2. フランスパン専用粉、塩、砂糖を大きめのボウルにいれ、スケッパーなどで混ぜる
  3. 1.のイースト液を指でぐるぐると混ぜて溶かし、2.のボウルへいれる
  4. スケッパーで全体的に粉っぽさがなくなるまで混ぜる。少々ダマが残ってるかな〜という下記のような状態でOK

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  5. 【一次発酵】ボウルに濡れ布巾とラップをし、冷蔵庫へ。生地が2倍〜2.5倍くらいにふくれあがるまで、12時間ほど発酵させる
  6. 長時間発酵後、生地を取り出す。打ち粉をたっぷり使って、生地を手で軽くつぶしガスを抜く ※生地がかなり手にひっつくけれど、都度スケッパーでこそぎ落としてがんばる
  7. 生地を8等分にわけたら、濡れ布巾をかけて10分ベンチタイム
  8. その間に【タミさんのパン焼器(以後、鍋)の下準備】。40〜50℃のお湯を少量いれた新しいボウルの中に「タミさんのパン焼器」をちゃぷん。鍋の中に湯が入らないように気をつけて。鍋の内側がほんのり温かくなったら引き上げて、乾いた布巾で水気をきっちり取って、鍋の内側にまんべんなく打ち粉をしておく
  9. ベンチタイム後の生地を、鍋の中へ均等に放りこんでいく。かなりべたつく生地なので、丸く成形しなくてOK
  10. 【二次発酵】鍋に鉄フタをし、ひと回り大きくなるまで40分ほど常温で寝かす
  11. 発酵終了後、鉄フタをして直火で焼く。ごく弱火で20分加熱したら、一度鉄フタをあけて生地の表面をチェック。生地の表面が乾いていることを確認できたら次の最終ステップへ
  12. 鉄のフタを外し、250℃に余熱しておいたオーブンに鍋ごといれ、15分ほど焼いて表面がきつね色に色づいたら完成!


◆◆


現在ダイエット中で朝食を抜く生活を続けてるのですが、焼き上がりのパンの香ばしい香りと美しさを前に、この時ばかりは解禁。

曲がりなりにもメディアに載るレビューなんだから、正しく評価するためにも食べてみないとネ! つって。


やべーー! めっっっさうまい!!! 次はバター塗ってみよ♡ とホクホク顔で楽しんでいた私。

そんな私の顔をのぞき込みながら「ふとりたいのん?」とむすめにキョトンと言い放たれ、ちょっと朝から落ち込みました。

口いっぱいにパン詰め込んでる人に言われる屈辱。なるほど、パーソナルトレーナーって無邪気な人が一番向いているんだな、という気づきを最後に、このレビューを終わりたいと思います。

著者:id:mojamojayoriko

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夫とむすめの3人家族、フリーランスwebデザイナーのわたし(36歳)。育児にまつわる、おもしろかったこと。もやもやしたこと。夫とともに自営業で生計を立てつつ“丁寧なくらし”がしたくて、もがいたりする話を記録しています。

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