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北インドカレーと南インドカレーが全く違う理由を調べてみたらインドに行きたくなった

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こんにちは。インド人風コスプレでカレーにまつわるブログを書いている、カレーパフォーマー加藤です。

先日「北インドと南インドでカレーの種類が違うのはどうしてですか?」という質問をいただきました。

そう、北インドと南インドでは、カレーに使うスパイスや具材などが大きく異なるのです。これはインドカレーだけの特徴で、タイやスリランカなどの他国のカレーが、地域によって違うという話は聞きません。これまでも「違い」を説明する機会はたくさんありましたが、改めて考えてみると、同じインドの中で「どうして違いが生まれたのか」については調べたことがありませんでした。

ちなみに、カレーパフォーマー加藤として、カレーにまつわるさまざまな活動をしている僕ですが、実は、インドには行ったことがありません。これは気になると思って調査したところ、インドカレーに対するこれまでの思い込みが、大きく覆りました。

北インドカレーは「濃厚」で「ガラムマサラ」を使う


デリー首都圏ニューデリー駅前の風景 (C)Sakai Kohei

北インドは、ジャンムー・カシミール州やヒマーチャル・プラデーシュ州、チャンディーガルおよびデリー首都圏など、南インドの4州以外を指します。この地域のカレーは牛乳や生クリームなどを使用しているためこってりと濃厚で、油分が多いのが特徴です。

  • よく使う食材:牛乳、生クリーム、バター、カシューナッツ
  • よく使うスパイス:クミン、カルダモン、ターメリック、ガラムマサラ(ミックススパイス)
  • スパイスの香り付け方法:最初に行う。鍋の底に油をひき、カルダモンやクローブなどのスタータースパイス*1を入れて火にかけ、油に香りを移す
  • 主食:小麦粉を捏ねて焼いたパンのようなもの(チャパティ、パラタ、ナンなど)

~北インドカレーに使うスパイスの風味や効能~

カレーの香りや風味付けに使われているスパイスですが、風味が異なっていたり、さまざまな効能を持っていたりとそれぞれがとても個性的です。ここでは、北インドカレーに使うスパイスの特徴を紹介します。

  • クミン

最も歴史が古いエジプト原産のスパイスです。独特の強い香りとわずかな辛みがあり、油で炒めると一層香りが引き立ちます。カレーや炒め物の香り付けに使うインド料理の基本スパイスとしても知られており、「クミンが入っていないとカレーじゃない」と感じるくらい、インドカレーには欠かせない香りです。

効能は、食欲増進、消化促進、胃痛や腹痛の緩和、関節痛や生理不順の緩和など。インド料理の他、メキシコ。東南アジア・アフリカなどの料理の香り付けにも使われています。

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  • カルダモン

その甘い芳香から「香りの王様」と呼ばれています。ピリッとした辛みとほろ苦さを兼ね備えており、肉料理で肉の臭みを消したり、お菓子やチャイなどにも使われたりと、幅広い用途があるスパイスです。

発汗作用があること、また、呼吸器系の不調に効き咳や痰を抑えることから、風邪の引き始めに摂取すると効果的といわれています。加えて、口臭の除去、体脂肪の減少、生理不順緩和、整腸作用なども。香り嗅ぐと、気分が落ち着き緊張がほぐれる効果があるとされています。

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  • ターメリック(ウコン)

インド原産で、カレーを黄色く着色するために使われています。キョウヨウ(春ウコン)やガジュツ(紫ウコン)と区別するため、「秋ウコン」とも呼ばれています。そのままでは土っぽい独特の香りと苦みがありますが、加熱した油に通すと甘い香りが広がるようになります。

主な成分はクルクミンで、肝機能向上に効果があり、二日酔いの抑制効果があるといわれています。殺菌・抗菌効果や抗酸化作用などで、肌が綺麗になったり成人病予防効果があったりも。さらに、抗炎症作用もあるので筋肉疲労にも効果があり、抗がん作用も期待できるという魅力的なスパイスなんです。

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  • ガラムマサラ

ガラムマサラは単体のスパイス名ではなく、複数のスパイスを加熱後にミルサーなどで粉砕し、ブレンドして作られるインドのミックススパイスのことを指します(一部は加熱しないものもあります)。ガラムは「熱い」、マサラは「複数のスパイスを挽いてミックスしたもの」という意味。インドでは、各家庭ごとにガラムマサラを独自配合しています。よく使われるスパイスは、クミン、コリアンダー、シナモン、カルダモン、クローブ、ナツメグ、ブラックペッパーなどです。

北インドでは、主にカレーの香りや辛みを増したい時に使用されており、チキンやマトンのカレーのほか、タンドール料理などにも使われます。南インドでは使われないのも、大きな特徴といえます。

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南インドカレーは「シャバシャバ」で「辛味」が効いている


ケララ州コーチンの民家 (C)Sakai Kohei

南インドは、カルナータカ州、アーンドラ・プラディーシュ州、ケララ州、タミル・ナードゥ州の4つの州を指します(ゴア州を含むという説もあり)。こってり濃厚な北インドカレーと比べると、南インドカレーは水分が多くシャバシャバしています。使うスパイスや、香り付け方法もまったく異なります。


  • よく使う食材:ココナッツミルク、タマリンド(酸味のあるフルーツ)
  • よく使うスパイス:マスタードシード、レッドペッパー、カレーリーフ
  • スパイスの香り付け方法:別の鍋に油をひき、最後に行う。マスタードシードやカレーリーフに火を通して辛みや香りを移した油を、カレーの鍋に混ぜる(テンパリング)
  • 主食:お米

~南インドカレーに使うスパイスの風味や効能~

北インドカレーと同じく、南インドカレーのスパイスも風味を左右する重要な存在です。

  • マスタードシード

マスタードシードは、南インドやスリランカの料理に欠かせないスパイスです。辛みが強く、カレーの辛み付けに用います。インドでは油で熱して、香ばしい香りを立たせます。

主な効能は食欲増進、消化促進、脂肪分解、胃もたれ解消、殺菌作用、血行促進など。ちなみに、インドではブラウンマスタードと呼ばれる、茶色のマスタードシードが用いられています。

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  • レッドペッパー

いわゆる「赤唐辛子」で、口の中が熱くなるような辛さが特徴。カレーに辛さと香りを付けるために使います。

ビタミンCが豊富で、消化促進、食欲増進、新陳代謝活性化、血行促進、冷え性改善、脂肪燃焼などの効果があります。

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  • カレーリーフ

ミカン科のCURRY TREE(日本名:大葉月橘)の葉で、カレーと柑橘類をあわせたような香りがします。南インドでは主にサンバルやラッサムなどの煮込み料理に使われているもので、カレーでは香り付けに利用されます。食欲増進や消化促進、滋養強壮、解熱作用、殺菌作用、発疹抑制などの効能があります。

ちなみに日本のインド食材店では、生のカレーリーフは絶対に手に入らないため、日本のカレーマニアたちは自宅でCURRY TREEを栽培しています。生のカレーリーフを手に入れたい方は、CURRY TREEを育てているカレーマニアを見付けて、鉢植えを分けてもらうことをおすすめします。

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違いの大きな理由は「気候」?

北インドカレーと南インドカレーの特徴は上記で紹介した通りです。では、なぜこのような違いが生まれたのでしょうか。

「カレーのことならインド人に聞こう!」ということで、カレーマニアの間で有名な、北インドカレーと南インドカレーを両方提供している専門店のインド人シェフにインタビューをしたところ、こう答えてくれました。

「北インドは寒いからこってりしたカレーが、南インドは暑いからさっぱりしたカレーが食べたかったからなんじゃないか」

なるほど、たしかに北インドのカレーは、牛乳や生クリーム、バター、カシューナッツなどを使った、とろみのあるこってりとしたカレーです。動物性乳製品で脂肪をつけて、寒さから身を守ろうとした結果、このようなカレーになったのではないかと推測できます。

それに対して、暑い南インドのカレーは水分が多く、酸味やスパイスの辛さを効かせたカレーで食欲増進を誘います。また北インドカレーはチキンやマトンなどの肉類がメインですが、南インドカレーは魚介類や野菜、豆を中心としています。じっくり煮込む北インドカレーと比べて、調理時間が短いのも特徴です。

また、カレーと一緒に食べる「主食」も、気候に影響された違いがあります。

北インドは乾燥しており、小麦が育ちやすい土壌のため、チャパティやパラタなど、小麦をこねて焼いたパンのようなものが主食として食べられています。

対する南インドは1年中暖かく、河川が多くて水が豊富なため、稲作に適しています。そのため、主食はお米です。

日本の南インドカレー専門店では、細長くて粘り気のない「バスマティライス」がよく提供されています。しかし、バスマティライスは味と香りがよい高級米のため、現地では日本と同じような短くて丸いお米(ジャポニカ米)がよく食べられています。

なお、日本のインドカレー店でよく提供されている「ナン」ですが、インド全体を見るとメジャーな主食ではありません。原料となる精製した小麦粉が贅沢品であることと、ナンを焼くためのタンドール釜を持つ家庭が少ないためです。

余談:北インドと南インドの料理あれこれ

カレー以外にも、北インドと南インドでは歴史的背景や郷土色により、料理の特色が異なります。調べだしたら止まらくなってきた、カレーパフォーマー加藤。徹底的に北インドと南インドの食の違いを調査します。

日本で食べられる北インドの料理は大きく「パンジャーブ料理」と「ムガル料理」の2つに大きく分けられます。

パンジャーブ料理は、インド北部からパキスタンにまたがるパンジャーブ地方の料理のこと。ナンやタンドリーチキンなどのタンドール窯を使った焼き物、アルゴビ(ジャガイモとカリフラワーの炒め物)といった野菜を使った料理、バターチキンカレーやパラクパニール(カッテージチーズとほうれん草のカレー)などの良質な乳製品を使ったカレーが有名です。

ムガル料理は、ムガル帝国(16世紀~19世紀にインドを支配したイスラム王朝)の宮廷料理のことで、ナッツや生クリームをたっぷり使用します。キーママター(ひき肉と豆のドライカレー)、ムグライ・ムング・ビリヤニ(ムガル式のチキンビリヤニ)などがあります。

南インドでは、お腹に優しくて気軽に食べられる「ティファン(軽食)」が充実しています。

まずは、クレープのような「ドーサ」。水を吸わせたお米と豆をすりつぶし、発酵させた生地を薄く焼いたものです。写真はマサラドーサという料理で、ドーサの中にスパイスで炒めたじゃがいもが入っています。サンバル(写真左)とココナッツファイン(写真右)に付けて食べます。

ドーナツに似ていますが甘くなく、ふわふわの食感が楽しめる「ワダ」。こちらもサンバル(写真左)とココナッツファイン(写真右)に付けて食べます。

ちなみにサンバルは、南インドのみで日常的に食べられている、豆と野菜のカレーのこと。日本でいうと味噌汁のような存在です。

こちらは、ラッサムというインドで日常的に飲まれている濃厚なスープ。タマリンドとトマトの酸味、ブラックペッパーのキレある辛さ、にんにくのコクとスパイスの香りが組み合わさった刺激的な味わいです。

南インドカレーは、このサンバルとラッサムを、カレーと一緒にライスにかけて、まぜまぜしながら食べます。日本の南インド料理店でミールス(南インドの定食)を注文すると、サンバルとラッサムがついてくることが多いので、ぜひ食べてみてください。カレー単体で食べたときとは違う美味しさに出会えますよ。

インドの食文化が奥深すぎて、ますます現地に行きたくなったぞ

今回の調査を通じて、インドの地理や歴史、食文化を徹底的に調べた結果、現地に行きたい気持ちがさらに強くなりました。実際に北インドと南インドのカレーを食べ比べて、気候に触れて、インド人に話を聞くことで、見えてくるものもあると思います。

カレーパフォーマー加藤、今年こそインド旅行に行ってきます!

インドカレーについてもっと詳しく知りたい!

著者:カレーパフォーマー加藤id:spicecurryevent

カレーパフォーマー加藤エンジニアですが、ブロガー・料理人・芸人の3つの顔をもっています。

東京の名店、美味しいレシピから、カレーイベントまで、ブログで紹介しています。インド風コスプレで、本格インドカレーをスパイスから作ります。お子様に大人気です。打ち上げや忘年会では、カレーラップを歌って踊ります。

ブログ:カレーパフォーマー加藤のスパイスカレー探訪記

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*1:スパイスの香りと成分を油に移すため、最初に使うスパイスのこと