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秋葉原戦争:地下アイドルに地位を奪われたメイドのバレンタイン格差社会

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こんにちは、トイアンナです。いよいよバレンタインシーズン、女性は社内や学校で渡す大量の義理チョコ・友チョコ準備に追われている時期でしょうか?

この世には「仕事」としてバレンタインチョコを渡す人たちがいます。たとえばキャバ嬢、メイドさんなど愛情を売る代わりにお金を落としてもらうビジネスでは「チョコレート用意してあるから、お店に来て♡」の営業活動が欠かせません。

そこで今回はメイド喫茶で実際に勤務する女性に、昨今の義理チョコトレンドおよび意外なお返しについて聞いてまいりました。

閑古鳥の店舗でモチベーションを失うメイドさんたち

メイドカフェは秋葉原・池袋に集中していますが、現在その市場が大きく揺らいでいることはご存知でしょうか。その理由は地下アイドルの登場。

かつてメイドカフェに勤めればスカウトの声がかかるものでした。しかし今、秋葉原の路上は「メイドカフェです~今すぐ入れますよ~」と寒空の下勧誘するメイドさんであふれています。

「バレンタインなんて考えてくれるまともな人は、メイドカフェに来ませんよ」

そう語ってくれたのは、秋葉原でメイドカフェに勤める22歳の女性。メイド好きのお客様を幸せにしようとメイドカフェをオープンするオーナーは限られています。「メイド服を着せれば客が集まるだろう」と浅い魂胆で開店した店舗はサービスも食事も粗雑で、結局は長続きせず閉店へ追いやられます。彼女が勤めていたのはそんな「場末のメイドカフェ」でした。

メイドさん:最近のメイドってプロ意識ないから、そもそもチョコってあげないですよねぇ。

地下アイドルは過酷な競争に晒され、少しでもファンを獲得するために寝る間も惜しんでファンサービスをしています。その暮らしとメイドさんの意識の低さは対照的でした。最近はメイドカフェ内ではなくお外でお散歩デートできる店舗が増えているようです。もうそれって、メイドというよりレンタル彼女に近いのではないでしょうか……。

メイドさん:(お散歩サービスの金額は)1時間 6,000円から8,000円くらいですね~。そのうち半分くらいが私たちの時給です。

閑古鳥と言いつつも、お散歩サービスは殿様プライス。そこまで高時給ならお散歩サービスのお客様にはチョコを渡したくなるのかもしれません。

髪の毛、お守り……お返しは重すぎる愛

――どんな義理チョコ渡してます?

メイドさん:全然普通のですよ。会社でみなさまにお渡しするようなチョコがあるじゃないですか。ああいうのを、おまとめ買いしてます。メイドに会うような男性って、チョコのお店とかあんまり知らないから予算もばれないですし。(ホワイトデーには)通信アプリのスタンプをお返ししようとしてくる人が多くて、お断りしてるんですよ。スタンプを贈るって名目で連絡先交換したいのバレバレ。あとは、貰って困るものも多いです。バレンタインじゃないですけどお客様から最近貰ってうわぁ……ってなったのは髪の毛とお守りですね。

髪の毛を貰った……だと。想定外すぎるお返しに、返答もできずメイドさんの生気のない目を見つめました。

メイドさん:(そのときのお客様は)お店に来てくれて、ビニール袋に入ったもの渡されて。僕が切った髪の毛をあげるよって。いや、何で?っていうか怖い!と思ってすぐ捨てました。お守りも怖かったですね。恋愛祈願のやつで、お客さんとの縁を祈祷されてるのかと思ったら……辛かったです。あとは手作り系も困るんですよね……お菓子とかポーチとか。作ってくれるのは嬉しいけど、中に盗聴器とか入ってるかもしれないからって捨てなきゃいけないことになってて。

気付けば閑古鳥の店内で他に男性客もいないせいか、他のメイドさんも加わっていました。

「それでも認められたい」メイドさんの小さな希望

メイドさん:ほんと、地下アイドルでもやればいいかなって思うんですけど、こんな顔じゃ無理だってわかってて。でもそんな私でも好きですって言ってもらえて。最初は短期で辞めるつもりだったんです。でも気付いたら結構働いちゃってますね……。どうしよう、就活しなきゃいけないのに。

彼女に詳しく話を聞いていると、小さいころから「ブス」「おでんのがんも」と苛められてきたといいます。それがメイドカフェでのアルバイトをきっかけに「かわいい」と人生で初めて言ってもらえた。しかし彼女の承認欲求はそこで成仏しませんでした。もっと「かわいい」と言われたい、もっと愛されたい。


気付けば彼女は「メイドお散歩サービス」があるお店へ移っていました。義理チョコも今年は手作りにしようか悩んでいると言います。たとえ承認欲求から生まれても、それがお客様への愛になる。秋葉原の片隅に、私は小さな希望を見出していました。

著者:トイアンナid:toianna

トイアンナ

外資系企業にて約4年従事したのち、ライターへ転身。ブログ「トイアンナのぐだぐだ」にて、キャリアから英語学習メソッド、女性の生き方まで連載中。

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