それどこ

身につける、見て楽しむ、いっしょに暮らす。ちょっと変わった「生きものグッズ」の世界へようこそ

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文と写真 メレ山メレ子

 もともと旅行記ブロガーだったわたしが、ふとしたことから生きものに関わる人の世界を知って数年が経ちます。愛好家に研究者、写真家――みんな個性的な人々ばかりですが、生きもの好きの広く深い裾野でひときわ楽しそうにしているのが、生きものをモチーフにした作品を作るクリエーターたちです。

 彼らの作るものからは生きものへの深い愛情が感じられ、わたしはネットや販売イベントで彼らの作品に触れるのをとても楽しみにしています。ここでは、個人的にも親しくさせてもらっている作家さんたちを紹介します。奥深い「生きものグッズ」の世界を共にのぞいてみましょう。


(※なお、この記事の中には犬や猫といった世間認知度の高い愛玩動物のグッズは基本的に登場しません。もっと言えば、昆虫がかなり多めです)

野生を身につけて出かける―「URBAN SAFARI」のブローチ

urban safari
URBAN SAFARI 野生動物たちの魅力溢れるハンドメイドアクセサリー - CINRA.STORE

▲左からブチクスクス、カラス、アオカケスのブローチ


 「身につける野生」をテーマに、羊毛フェルトで作られた動物のブローチ。URBAN SAFARIデザイナーの茨木菜摘さんによる、ハンドメイドの作品です。

 羊毛フェルトで動物を作る作家さんはたくさんいらっしゃるのですが、URBAN SAFARIさんの作品はアフリカなどの遠い国に住む生きものが多く「その国の森やサバンナのことを想像しながら刺したんだな~」という感じがすごく伝わってきます。

 最近では氷のようなビジューを抱えたシロクマの人気シリーズなど、ちょっと遊び心のあるモチーフのものも。シンプルな服やストール、帽子にURBAN SAFARIのブローチをつけると、野生動物の凛とした感じを分けてもらえるようで、お出かけがいっそう楽しくなります。

大人のための虫アパレル―マメコ商会

佐藤マメコ (@mamekosato1) | Twitter

▲半翅目に属する変わった形の昆虫・ツノゼミ3種をモチーフにしたバッグ


 もともと知り合いだったマメコ氏、ふだんはタイに住んでいます。「大人が大人っぽく使える虫グッズが少ないから自分で作る」と言って、下絵の発注やタイのサプライヤー選定を行い、バッグやストールなどの虫グッズを作りはじめました。

▲タイで見て感動した虫「テングビワハゴロモ」のTシャツ


 モチーフになるのは、マメコ氏の琴線に触れた虫たち。上のTシャツは薄手の生地で襟もとが空いているので、かわいく着こなせてお気に入りです。イベント等に合わせての少量生産のため、在庫管理が難しいTシャツなどの服は今後あまり作らないそうです。

▲テナガコガネのバッグ


 大容量のバッグは、裏地がしっかりついていてファスナーで閉じることもできるので一泊旅行などでも活躍しています。リアルな虫をあしらったアイテム、大人の着こなしに取り入れてみてはいかがでしょうか。

手紙を書くのが楽しくなる生きもの文具―ひよこまめ雑貨店

ひよこまめ雑貨店
ひよこまめ雑貨店 | 海福雑貨

▲イモムシやコノハムシなどの虫はんこ


 消しゴムはんこや文具などの雑貨を作る作家・ひよこまめ雑貨店。生きものモチーフのグッズばかりを作っているわけではないのですが、虫や粘菌などのモチーフに挑戦するとき、確かな観察眼に裏打ちされた繊細さや上品さが際立ちます。

▲ブータンシボリアゲハやネジレバネなど、虫はんこの図案を用いた絵はがき


 はんこ化した図案を用いたひよこまめさんの文具作品は、はがきやぽち袋、ブックカバーなど多岐にわたります。

▲筆者が主催する不定期開催イベント「昆虫大学」に出展してくれた際のブース


 ただし、油断するとすぐにおかしな作品を作りはじめる傾向も。昆虫の触角をモチーフにしたカチューシャなどは、その最たるもの。ご本人はとても落ち着いた雰囲気の女性なのですが……。クマムシ研究者・堀川大樹さんのトレードマークになっているクマムシ帽も、彼女の作品です。

ちなみに私がかぶっているクマムシ帽子は、ひよこまめ雑貨店さんに特注で作ってもらったものだ。クマムシは生物学的にも芸術的にも優れていることを説明。そして、むしむし女子からもキラキラ女子からも圧倒的に支持されていることも。

クマムシ、極限環境微生物学者に完全勝利。 - むしブロ

▲アゲハの幼虫が威嚇時に出す器官「臭角」のカチューシャを装備した筆者。怒りの意を表明したいときにおすすめ


 うっかり「こんなのあったら面白いですよね~」と言うと、数日内に「ちょっと作ってみました~」というメールが来て、言いだしっぺの責任をとって珍妙な虫グッズを装用することもありました。講演などを盛り上げたい生物研究者のみなさん、ぜひ一度彼女に相談してみることをおすすめします!

博物趣味な部屋をはじめるための昆虫標本―うみねこ博物堂

うみねこ博物堂 (@umineko22) / Twitter
うみねこ博物堂 | 海福雑貨

 生きものの造形に惹かれる人の中には、グッズのみならず昆虫標本などの「そのもの」を、入手してみたいという向きも多いはず。毎年東京・大手町で開催される「インセクトフェア」などの標本即売会も有名ですが、目利きによってセレクトされた状態のいい標本を落ち着いて選びたいという場合は「うみねこ博物堂」の昆虫標本もいいですよ。

▲神奈川県相模原市の「海福雑貨」にて、筆者が爆買いしてしまった美麗昆虫標本たち


 在野の甲虫研究者でもあるうみねこ博物堂さん。実はひよこまめ雑貨店さんの旦那さんでもあります。

 昆虫の知識がある人が、一般ウケする昆虫をセレクトし、確かな技術で展脚(昆虫標本の形を整えること)したものなので、ライトな博物趣味を持つ人も安心して買えます。インテリアショップなどで売られている昆虫標本は、虫自体の価値からいうと相場より高めなことが多いので、なかなか手を出しやすいラインナップだと思います……(と、自分に言い訳しながらたくさん買ってしまいました)。

▲青くきらめく銀河のようなニシキカワリタマムシ。白い斑点のように見えるのは起毛!


 これらの昆虫標本は、ひよこまめ雑貨店さんの作品とともに、神奈川県相模原市にある「 海福雑貨 」さんの実店舗またはネットショップで購入できます。生きものグッズや博物グッズが買える店舗をご夫婦で構える予定もあるそうで、わたしも今から貯金をしておく必要がある……。

アリのいる生活を「蟻マシーン」で―AntRoom

AntRoom アントルーム|蟻について語ろう

 地中にいるアリたちの暮らしを、部屋にいながらにして凝視できてしまう。そんな画期的な商品が、アリ専門Webショップ・AntRoomの島田拓さんが改良に改良を重ねて生み出した「蟻マシーン」です。

▲蟻マシーン2号ミニに、一緒に購入したムネアカオオアリのケースを連結したところ


 蟻マシーンでのアリの飼育は、結婚飛行を終えた女王アリを投入するところから始まります。購入当初は、女王アリとその娘である5匹の働きアリ、そしていくつかの卵だけでした。

 石膏でできた巣をアクリル板で綴じ、クランプで留めてあります。アリの観察キットではゼリー式のものなどが市販されていますが、蟻マシーンは石膏部分に巣の裏側から水を注入して湿度を保てるなどよく計算された作りで、長期飼育ではこれ以上のものはなかなかないと思います。

▲3年目に入ったアリのコロニー


 女王アリの寿命は、なんと10年~20年。実は犬猫を飼うのと同じくらいの覚悟が必要だったことにあとから気づきましたが、手間は犬猫の10分の1もかかりません。働きアリが増えて最初の蟻マシーンが手狭になってきたため、同じ蟻マシーンを連結するという手もあったのですが、思いきって特大蟻マシーンを購入してお引っ越ししてもらいました。

▲卵や幼虫を甲斐甲斐しくなめて世話する働きアリ


 働きアリたちはとてもきれい好きで、卵や幼虫を世話する部屋やゴミ捨て場をきっちり分けて生活します。コロニーが育ってくると体の大きな兵隊アリが出てきたり、アリ同士が口移しでエサを分け与えたりグルーミングしあう様子も見ていて飽きません。

 アリの生活が赤裸々に部屋で見られるのもすごいけれど、虫が大好きでその生態を見たい一心でこんな装置を作ってしまう島田さんの好奇心も本当にすごいと、いつも感動してしまいます。

 わたしは、生きものの世界の魅力は「生きものに魅せられた人たち」の魅力でもあると思います。自分自身は生きものの専門家でも何でもありませんが、彼らと生きものの話をするとき、好奇心が人を自由にすることをいつも教えてもらっています。

 彼らクリエーターの作品を購入するときは、もちろん「欲しい欲しいぜったいに欲しい……ギギギギギ」という物欲にまみれてもいるのですが、「あなたたちへの生きものの愛、しかと受け取りました!」という感謝の気持ちをこめてお金を払っています。趣味の買い物って、基本的にそういうものなのかもしれません。

 今回ご紹介した方々は主にネットで活動されていて、作品も少量生産のものが多いです。Twitterやブログ等をフォローして、イベント等の最新出展情報をキャッチしてみてください。

 また、12月12日(土)・13日(日)には京都のみやこめっせにて「いきもにあ」という生きもの好きのための交流イベントが開催され、上記の作家さんたちも多数出展します。ブース数はなんと約170とのこと! 生きものをめぐる作家さんたちの熱をじかに感じてみたいという方は、ぜひ足を運んでみてください。
equimonia.jimdo.com

著者:メレ山メレ子id:mereco

メレ山メレ子

1983年、大分県別府市生まれ。平日は会社員として勤務。旅ブログ「メレンゲが腐るほど恋したい」にて青森のイカ焼き屋で飼われていた珍しい顔の秋田犬を「わさお」と名づけて紹介したところ、映画で主演するほどのスター犬になってしまう事件に見舞われた。やがて旅先で出会う虫の魅力に目ざめ、虫に関する連載や寄稿を行う。2012年から、昆虫研究者やアーティストが集う新感覚昆虫イベント「昆虫大学」の企画・運営を手がける。著書に『メレンゲが腐るほど旅したい メレ子の日本おでかけ日記』(スペースシャワーネットワーク)、『ときめき昆虫学』(イースト・プレス)がある。現在、亜紀書房のウェブマガジン「あき地」にて、旅と死をテーマとした連載「メメントモリ・ジャーニー」を連載中。
ブログ:http://mereco.hatenadiary.com/
Twitter:@merec0