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キモくなどない!10秒で理解できるギャルゲー入門

最近、オシャレな若者たちがファッション感覚でアニメを見るオシャレアニメ枠でギャルゲー作りを題材にしたアニメが放映されるなど、空前のギャルゲーブームが到来しているようです。

しかし、裏では「アニメ観るやつなんてキモい! キャンプ行こうぜ! ギャハハ!」と高笑いしているファッションアニメファンのみなさんにとっていきなり“ギャルゲー”などと言われても何のことかわからないのではないでしょうか?(ちなみにギャルゲーとは、かわいい女の子と仲よくするゲームのことです)

そこで今回は、みなさんが楽天で買う前に知っておきたいギャルゲーの「常識」をたった10秒でご紹介したいと思います。(ここまで2秒)







1. ギャルゲーの登場人物


ギャルゲーは、しばしば現実世界で女性と仲よくできない男性にとっての心の癒やしという役割も担います。
そのため、この中では現実世界では起こり得ないような都合のいいことが起きたり、あり得ないほど恵まれた状況から物語が始まったりすることがままあるのですが、そこに文句をつけるのは「本当にタケコプターが実在したら首が吹き飛ぶ」というような野暮な指摘に変わりありません。

まずは登場人物の設定で「驚いてはいけない前提部分」を学んでいきましょう。









主人公


主人公は多くの場合「俺は◯◯。何の変哲もない高校生だ」といった感じで登場し、プレイヤーの没入感を手助けするために無個性が強調されますが、彼が本当に何でもない人間である場合はむしろ稀有です。

中流以上の家庭に住み、平気で美人の女友だちが複数いながらモテないと嘆き、ひどいときには普通の人間には使えない異能を駆使します。

何よりも変哲でないのは前髪が異常に長いことですが、このあたりに疑問を持ってはいけません。









幼馴染♀

彼女は主人公の幼馴染で、大概において学年1位クラスに美しく、特に理由なく自動的に主人公を好きになります。

彼女となあなあで話せる主人公は「いいよな、お前は」と同級生にからかわれますが、ずっと一緒にいた主人公はその魅力に気付かず「あんな女のどこが」と軽口を叩きます。

彼女は自分の気持ちに対し徹底的に素直な場合と、徹底的に不素直で照れ隠しが過ぎる場合があり、後者はツンデレと呼ばれます。
主人公以外に恋愛感情を抱くことは基本的にありません。









親友


女の子と仲よくするためのゲームに登場する男性のなかでも、感情移入の対象にない「親友」は決してプレイヤーを苛立たせてはならず、この世のものとは思えないほどいいやつである場合が多いです。

自身は決してヒロイン格とお近付きになることはできず、時に女の子に関する情報をサポートするなど役割はお膳立てに終始します。










生徒会長

校内トップクラスに頭がよく、美しさや人格に対する支持も厚い生徒会長は多くの生徒にとって高嶺の花ですが、なぜか特にいいところのない主人公を目にかけ、時には積極的に仕掛ける一面も見せます。

古くからの関係性がある幼馴染と違って、彼女の場合は本当に何の縁もない主人公を最初から好きであったりするため、都合がいいというよりは意味のわからない存在です。










急に旅行に行く両親


息子がヒロインと家に2人きりという状況を作るため、両親はしばしば「高校生の1人息子を家に置いて長期的な海外旅行に出る」などといった唐突なネグレクトを展開します。

これによって主人公は何の疑問もなく、親の庇護下にあるモラトリアムと行動を制限されない自由という最高の環境を手にすることができるのです。









2. 序盤の展開


ギャルゲーの主人公とヒロインは、大きくわけて
出逢い→人となりの分かる出来事→選択→すったもんだ→大団円
以上のような段取りで結ばれます。

ヒロインが複数いる場合、主人公は特定の「選択」をすることによって展開が変わり、「フラグ」が立つことによって意中のヒロインのルートに進むことができるのです。

まずは、ヒロインとの出逢いです。










女の子が現れました。










この段階では主人公と女の子はたいして親密になっておらず、大きな出来事は起こりません。

この何もない段階は、複数のヒロインと知り合い、ユーザーがざっくりとその人となりを判断する時期です。










もちろん、ゲームの種類によってはいきなり“可能”となります。









3. スキンシップ

この子というのが見つかったら、それ以外の子には脇目もふらず、選択肢ではその子を最優先して気遣うようにしましょう。

ギャルゲーにおいて八方美人に振る舞うとエンディングまで誰とも仲よくなれず、普通の学校生活を送っただけのやつになってしまうことがあります。
そんなことは、わざわざゲームでする必要はないですよね?










さて、順調に関係を深め、ついに「頭撫で」のときがやってきました。
何を隠そうギャルゲーのヒロインはチョロいので、頭を撫でるだけで落とせます。

現実だとこうもいかないかもしれませんが、とにかく頭を撫でると落ちるのです。










女の子の右手のPOWゲージにご注目ください。

この「頭撫でパワーゲージ」は多くのギャルゲーに実装され、ほぼ選択肢を選ぶしかゲーム要素がないギャルゲーにおいて、唯一といっていいゲームっぽさを担っています。
タイミングよく黄色の部分で止めるようにしましょう。

もし少しずれて赤になると…。










頭撫でパワーが強すぎ、ヒロインの頭頂部が陥没してしまいました。
これでは逆に機嫌を損ねてしまいます。










主人公が自分みたいな人生を送るバッドエンドが出てしまいました。

こんな言われ方をされたくなければ、ピッタリと黄色で止めるようにしましょう。









4.クライマックス、そして…

さて、順調に彼女と信頼関係を築き、そろそろ彼女も「体を許してもいいかな?」という頃合いのはずです。









両親が旅行で不在の自宅にて、ヒロインが愛を口にし始めたらいよいよ「OK」のサインです。
なんとかしてキスに持ち込みましょう。

女性というものは、とにかくキスさえすればあとは何とかなります。
僕にそう教えてくれた先輩は今、刑務所にいます。

それでは、ここからはお待ちかねのセクシータイムです。
(子どもの教育上よくないシーンですが、せっかくなのでこのままご覧ください)










えーと…あれ…?










完全にバグってしまいました。
ギャルゲーの真骨頂をお見せしたかったのですが、残念です…。

申し訳ありませんが、ここは検索するなどして各自でご確認お願いします。









5. エンディング


さて、ストーリーとお楽しみの山場を越えたらいよいよエンディングです。

寂しいですが、終わりはただ悲しむべきものではありません。










ハンガーいっぱい見つかったエンド

それはハッピーエンドかもしれません。









ヒロインの死エンド

あるいはバッドエンドかもしれません。

いずれにしろあなたは思うでしょう、「どうして終わってしまうんだ!」と。
「永遠にこの幻想を見せ続けてくれないのか?」と…。

しかし、悲観してはいけません。
ギャルゲーやその他の虚構は自らに終止符を打つと同時に、あなたの現実、つまり本当の生活の始まりを作っているのです。

終わりを作ることで、嘘の世界は変化したあなたをまばゆい現実世界に引き戻し、それをただの嘘ではない何かに作り変えているわけです。
その親切さを真摯に受け止めつつ、完全に無碍にするのが真のギャルゲープレイヤーなのだと教えてくれた先輩は今、ロシアで砂利を運んでいます。

あなたの周りを注意深く見てみましょう。終わりのない娯楽にハマっている人がいませんか?
十中八九、彼らは自分自身が終わっているはずです。










おわり


著者:小野ほりでい

小野ほりでい

がんばってイラストも描くライター。人気ポータルサイト「オモコロ」で活動休止中。TwitterIDは@onoholiday